県民健康調査 事故後10年目報告
5月17日(月)に第41回「県民健康調査」検討委員会が開催され300ページを超える資料が提出された。その中の「基本調査」は事故直後から4ヶ月間の県民の動向を調査し、被災県民がどれほど被ばくしたかを明らかにし健康管理における基礎資料とするものであったのだが・・・
[資料1] 専門家がなぜ誤った判断を広める?
福島県民を愚弄するな! 朝日新聞5/22
基本調査の報告はわずか1ページ半のスペースで外部被ばく線量のみの推計であると断ったうえで、回答率は200万県民の27.7%、被ばく量は2mSv未満が全体の93.8%、5mSv未満が99.8%、最大値は25mSv、平均値は0.8mSv、中央値は0.6mSvというものであった。
これを「健康管理における基礎資料」とするというのであるから仰天する。 何故なら被ばくで最も心配されたのは「甲状腺被ばく問題」であり甲状腺被ばくは飲食や呼吸などにより甲状腺に放射性ヨウ素がどれだけ取り込まれたかが重要で、県の「緊急被ばく医療活動マニュアル」にも記載され、スクリーニング検査の重要な目的の一つでもある。この内部被ばくを除外した線量推計にどれだけの意味があるというのか。全くの欺瞞と言わざるを得ない。
3月17、18日いずれかに郡山市の避難所のスクリーニング検査で11歳児が100mSv程度の被ばくしていたことが報告され、後に新聞報道された。(既報229号)しかもこれはレアケースではなく県内各地の避難所で実施されたスクリーニングでも「1歳児甲状腺等価線量100mSv= 13,000 cpm」(注1)を超える者が多数のため除染対象基準値を3月13日以降はGMサーベイメータ振り切れの値である10万cpmに引き上げたのである。(既報231号)そのため13,000 cpm以上10万cpm未満の除染対象であった多数の避難民は体表面の拭き取りもされず「大丈夫です」ということにされたのである。3月13日~14日は基準値超えの全員、15日~17日には約半数の方のデータは記録されなかった。それでも10万cpm越えの人は102人、13,000cpm~10万cpm未満の人は901人という数字が残っている。
調査委員会が調査すべきはこの内部被ばくであり、少なからぬ避難民が「有意に健康被害が懸念される」レベルの被ばくを受けた可能性があり、一人ひとりの県民の行動記録から放射性粉塵の吸収量を推計し、外部被ばくと併せて健康被害の程度を推測することが本来の任務であったはずである。もし、基本調査で内部被ばくを考慮した推計となっておれば少なからぬ避難民が100mSvを超える被ばくをした可能性があり、特に児童の被ばくは、これまで発表されているような誤った見解「被ばく線量は低く、甲状腺への影響は考えにくい」とはならなかったに違いない。委員会の中でも「基本調査」が誤解されないか懸念する声があった。その誤解が県民の健康を守る中核の医療機関、県立医大から発せられようとは・・・県民を愚弄するものと言わざるを得ない。(文責 斉藤章一)
(注1)事故前、福島県は避難者のスクリーニング基準として「緊急被ばく医療体制」のなかで40ベクレル/㎠センチを設定しており、これはGMサーベイメータではかると機種によって違いがあるが10,000~13,000cpmになる。この値は「1歳児甲状腺等価線量100mSv」に当たる。 初期被ばくについては「集英社新書 福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく 榊原崇仁著」に詳しい。
P2~3 ドキュメンタリー 「まぼろしのひかり 原発と故郷の山」
侵略戦争の惨禍と原発事故の現状
P4 原子炉格納容器の水位低下と
高線量シールドプラグ問題を考える
P5 第1原発敷地全体が放射性廃棄物の山・山・山
P6 滋賀県に自主避難
青田恵子さん自作の布絵と詩に込めた思いを・・・!