源氏物語と共に

源氏物語関連

すみれ ・壷すみれ

2010-03-15 16:29:05 | 

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最近、道端で小さなすみれを見かける。
その色が我が家と違っていて、思わず持ち帰りたいと思うほど。


我が家のすみれは匂いすみれで、葉が丸い。
しかし、園芸店でこの時期に見かける日本すみれは、葉が細長い。
色々な名前があって、色も白や濃い紫など色々。
何度か購入したが、いつのまにか消えてしまっった。


源氏物語には、すみれは無いように思って調べてみた。


壷すみれという名は聞いたことがあるように思った。


長崎盛輝氏によると、
和泉式部の歌や、「枕草子」の「草の花は・・」に壷すみれは
出てくるそうだ。定家の歌にもあるらしい。
壷は桐壺の壷と一緒で、庭という意味。
庭に植えるすみれという意味や、
墨入れ・墨壷の形から来たという説もあり不明。


その色や重ね色は院政の時代から出てくるそうだ。
一般に言うすみれ色は
バイオレットよりもむしろモーブ色という氏の説に何となく納得。


しかし、古くは万葉集には、ある。
『春の野にすみれ摘みにと来し吾ぞ
    野をなつかしみ一夜寝にける    』山部赤人


万葉の昔から愛されたすみれ。
きっと万葉漢字で表記されたと思うと、
苦手なのでちょっと興ざめしてしまうが、
清少納言や和泉式部も目にとめたすみれを
何故紫式部は気にならなかったのだろう?


もっとも、なでしこ(撫でし子)と違って
歌の掛詞にしにくかったという説も納得できるけれど。


春の雑草の中にも、
今と同じ草や花もあっただろうにと思うのも楽しい♪





うつろひたる菊

2009-11-07 13:57:54 | 

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11月近くになると、我が家の小菊も咲いてきます。


菊は平安時代、重陽の節句(9月9日)に特に用いられたものですが、
その節句の習慣は中国から来たようです。
菊合という和歌の遊びもあったとか。


紫式部日記にも道長の妻倫子が重陽の日に紫式部に
菊の着せ綿を送ってきたという場面があります。


前日に菊に着せ綿をして露をふくませ、
それで顔の皺をぬぐって老いを払うという習慣。


一介の女房に倫子から直接送ってくるなんて、実に恐れ多いことです。


ここを、紫式部と道長との間に何かあったことを感じた倫子が
紫式部をけん制してきたいう説もあるようです。


平安時代は白い菊が好まれ、
その色が晩秋に霜などで色が変わり、
少し紫がかった色になる「うつろひたる菊」が好まれました。


うつろひたる菊は、男女関係のうつろう気持ちもあらわし、
歌にもよまれています。


A新聞の「高橋睦朗花をひろう」では
旧暦の重陽以後の菊はすべて残菊とありました。
重陽を1ヶ月ちょっと遅れたとしても
今は11月ですから、まさしく残菊になります。


また契沖は、
中国は黄色の菊を賞するが、日本は白い菊を愛するといったそうです。


今でも、色が色々な可愛い小菊が咲いているのを見かけると、
いよいよ秋もたけなわになり、紅葉の季節がやってくると感じます。


画像は、我が家の小菊と、去年の宇治植物園展示「着せ綿」の様子
https://book.blogmura.com/classics/img/classics88_31.gif
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朝顔(2)追記あり

2009-09-09 08:59:13 | 
今朝は涼しさに目が覚めました。


今年はまた蒸し暑さがぶり返していましたが、
やっと秋の気配がするようになりました。


月も美しく、普段なら夏の夜から虫の音が聞こえるのが、
今年は今頃やっと鳴くようになりました。


今年の中秋の名月は10月3日あたりのようです。


さて先日の朝顔は肝心な事を忘れていました。


朝起きの顔だけでなく、
花がすぐにしおれることから、
朝顔の露と結びつき、露とあらそうはかなさや
無常を表象しています。



(新古今集・秋)
おきてみむと思ひしほどに枯れにけり 
  露よりけなる朝顔の花    

(紫式部集)
消えぬまの身をも知る知る朝顔の
  露とあらそふ世を嘆くかな    




また、枯れるという言葉と結びつけたり、
秘めたる恋と結びつくイメージもあるようです。
(万葉集)
人しれずこひはしぬともいちしろく 
  いろにはいでじ朝顔の花 




このイメージの延長で枯れる関係というか、
宇治十帖で薫が大君追懐に朝顔が刻まれると、
古典文学植物誌知っ得の原岡文子氏は言われています。
光源氏と朝顔の君との関係も、何となく納得するイメージですね。


朝顔種子は漢方では下剤などだったようです。


朝開いて夕方にしぼむ花の風情がありますが、
近代では有名な「朝顔に釣瓶取られてもらひ水」のように、
単に花の美しさをたたえたものもあるとのこと。


最近では秋になってもずっとたくましく咲く
朝顔系の花も見かけるようになりました。


余談ながら、朝鮮朝顔はダチュラ。
一時流行ったエンゼルストランペットのことです。


花も木も大きくて驚きます。
http://kitola.hp.infoseek.co.jp/dokusou/c-asagao.html
深山毒草園」サイトより


(追記)
朝顔の色を知りたかったので、調べました。
長崎盛輝「かさねの色目」では表・縹裏・縹とあり、
当時は白と青の花だったが、
青色の方を重ね色目としたのだろうとありました
しかし、衣類の色としては平安時代にはまだ出てこないとも。


城南宮の「源氏物語の庭」でも同様に縹(はなだ)色になっています。
当時は白色かな?とも思いましたが、同じ白色の夕顔とかぶりますね。
露草同様に青色の朝顔も綺麗だと思います。



朝顔

2009-08-25 10:35:02 | 

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朝晩涼しくなってきました。
夕べと今朝はかなり寒かったです。


以前から不思議に思っていた「あさがほ」の花。


A新聞高橋睦朗「花をひろう」の記事で納得しました。


万葉集の「あさがほ」は桔梗のこと。
その後に槿(むくげ)が輸入され桔梗より美しいので朝顔の名をあてた。
後に現代のつる性朝顔(牽牛子)が入ってきて木槿(むくげ)より美しいので
朝顔の名前になった。比喩的な名の移動とありました。
万葉集では色々だった朝顔は、
平安時代に今の朝顔が輸入され、その名前が確立されたようです。
ちょっとややこしい朝顔ですね。


藤原公任撰 和漢朗詠集(1012年)秋
槿(あさがお)の名の2首は、
白居易・中書王にあわせてあるから、木槿(むくげ)のことだそうです。


今の朝顔の種子は牽牛子(けんごし=けにこし)といいます。
七夕の牽牛・織姫と同じ漢字。
朝に咲いて夕方にしぼむので、朝の寝起き顔という比喩の意味もあります。
夕顔は夕方から咲く花。こちらは朝顔よりかなり大きい白い花です。
実はかんぴょうになります。


万葉集「萩の花尾花葛花なでしこの花女郎花また藤袴朝顔の花」 山上億良
   (はぎ)(おばな)(くず) (おみなえし)
現代では朝顔は夏の季節ですが、昔は秋の季語。
秋の七草の一つです。


古今和歌集 けんごし
「うちつけにこしとや花の色をみん おく白露のそむるもとを 」
   (けにこし)


朝顔は源氏物語では巻名にあり、女君の一人を指します。
光源氏の求愛を断った人。


源氏「見し折の露忘れぬ朝顔の 花の盛りは過ぎやしぬらん」(朝顔)


この「みし」が男女関係を表すのかということで、
以前に1度そういう関係にあったのかという説もあるようです。


紫式部日記では道長と紫式部とのやりとりに
朝顔=朝の顔という意味の言葉があります。


道長が朝早く庭を歩いて遣水のゴミを家来にのぞかせ
女郎花の花を折って式部に早く歌を読めという場面。
「わが朝顔の思ひ知らるれば・・」とあります。


ここはちょっと不思議。
朝早く、化粧もしていない女房の部屋にずかずかとふみこむ道長。
道長のいたずら心?女郎花という花の意味あいも男女関係を表すようですが、
お産に帰ってきた彰子のために遣水のゴミさえ気をつかう道長です。





2009-08-17 09:43:35 | 

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少し湿気が少なくなってきました。
お盆も過ぎ、秋の風の気配がします。


昨夜にフランスのモネの庭をBSTVでしていました。


何年か前にお花が好きな友人がここへ行ったと
写真を見せてもらったことを思い出しました。
庭もさることながら、部屋の内装もカラフルでした。
モンサンミッシェルの名前も、その時にはじめて教えてもらいました。


比較的、印象派の絵は好きなので、見ていたら、
あの睡蓮の絵や池もTVで紹介していました。


ちょっと泥沼でしたね。


しかし、蓮はやはり日本では仏教のイメージです。


先日に器のお店「madu」へ行った時、
http://madujp.shop3.makeshop.jp/html/newpage.html?code=22
てっきり蓮の箸置きと思って、買うのを躊躇して見ていたら
桔梗といわれて戸惑った事があります~


たしか源氏物語にも蓮は出ていたと思い、調べてみました。
以下「古典文学知っ得」より。


蓮は「古事記」にもすでに見られるとのこと。
花蓮を女性の姿に例えています。
食用として「常陸風土記」にも載っていることから
古くから日本にあったようです。
鹿島神宮の北の沼地の蓮根(はちす)が香り
味わい深いとか。
万葉集にも蓮葉の上に食物がのっていたようです。
その上の露を詠んだ歌があります。
「ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉に似たるみむ」 巻16


源氏物語では蓮は仏教に関連する言葉で登場。


日本では仏様の台座として、蓮は有名ですね。


(鈴虫)
源氏「へだてなく蓮の宿をちぎりても 君が心やすまじとすらむ」


(手習)
「君にも蓮の実などやうのもの・・」
これは、食用として蓮の実を
妹尼が婿の中将に接待の肴に出しています


京都のお寺へ以前行った時に蓮の鉢が置いてあって、
色々名前がつけてあったのには驚きました。
桜同様に品種があるのでしょうか。
葉や花の感じもモネの庭の沼のようでなく、
いわゆる日本的な蓮のイメージでした。


蓮の花は私の実家近くの池や、山のお寺近くにも咲いています。
蓮の花は人があまりいない朝早く咲く花のイメージで、
実際にそこではあまり見た記憶がありません。
今ならしっかり朝早くでも見られそうです。


新幹線に乗った時にも、名古屋あたりでしょうか、
蓮根畑ような葉が沢山繁っている所が気になっています。


ちなみに、私は食べる方の蓮根も大好きです(笑)


写真は
万葉の花と緑サイトより
http://manyo.web.infoseek.co.jp/index.html