源氏物語と共に

源氏物語関連

うつき(空木)とホトトギス

2009-07-02 15:12:57 | 

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文月の7月となりました。


文月とは七夕の和歌を書く月のことだそうです。
八月は葉月。旧暦なので葉が落ちる月とも。


6月の水無月とは水が無いのでななく、
「無し」は「の」をあらわし、
水の月というそうです。


長月の9月は文字通り月(夜)が長くなる。と、ちょっと勉強しました^^


井口樹男「古典の中の植物誌」によると、


うつき(空木)とは、
茎の中が空洞であり、卯月に咲くので、卯の花ともいうそうです。


卯月のいわれは、卯つきとはまさしく卯の杖で地面を突く。
そうすると、田植えの前の土地の精霊をうち叩くという呪術から来ており、
邪気を払って田植えをする月ということだそうだ。


行事として卯槌、卯杖が小正月に見える。
小正月にも土地の土を叩き、精霊を追い払い、
いよいよ卯月・田植えの前にも叩いて土地の邪気を払う。


五月の霖雨を<卯の花くた(腐)し>という。
卯の花の腐ってしまう・今でいう梅雨の頃をさす。


そしてホトトギスは憂鬱という歌もあるぐらい、
この頃鳴くホトトギスは長雨の忌み中でもあり、憂しな気分。


春はホトトギスは夏の知らせ、田植えの時期を知らせる、嬉しい鳥なのに。


「いくばくの 田を作ればか ほととぎす
しでの田長を 朝な朝な呼ぶ」 (古今集 俳諧歌)


ホトトギスの鳴く声を「シデノタヲサ」と聞いていた時代があった。
朝な朝な鳴いて一体いくらの田を作っているというのか。
しでの田長と毎回催促している。「田長」とは田植えの時の監督をさすそうです。


私この卯の花がわかりません。低木で良い香りがするのがそうなのかもしれません。
以前思っていたのはどうも「ネズミモチ」だったようです。
http://www.mitomori.co.jp/hanazukan/hanazukan2.7.107nezumi.html


<卯の花腐(くた)し>の頃、
長雨と同時に忌みに入り、男女関係も忌みになります。


平安時代の男女には眺めの季節・憂しの季節だそうです。


そういう時期だからこそ、眺めの文学が生まれたのだとか。


後の定家にしても兼好の徒然草にしても、
政治的中心にいなかったからこそ
愚痴をこぼすような様々な文学が生まれたと、どこかで聞いたように思います。


それならば、枕草子も紫式部日記も紫式部集他一連の日記集も、
昔を懐かしむ時代に書かれた作品なのかもしれません。
(紫式部日記は道長に彰子のお産の様子を描くように任命されたというけれど・・)


画像は小雨にけむる千鳥が淵公園あたりと半蔵門。



紫陽花

2009-06-03 11:22:38 | 

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6月となりました。
紫陽花が色づきはじめ、雨にぬれて風情があります。


源氏物語にはこの紫陽花は出てきません。
山がつの花として、宇治十帖あたりに出てきても良さそうなのに~


調べてみました。以下、「古典文学誌知っ得」より。



夏 ユキノシタ科アジサイ属 (←日陰の植物ですね)

白氏文集
「紫陽花」
  何年植向壇上。早晩移栽到梵家。
  雖在人間人不識。与君名作紫陽花。

と、紫陽花の命名の由来が載っている。
(ちょっと私には意味がわかりません^^;)

日本でも「和名抄」に
紫陽花 白氏文集律詩云、紫陽花(小文字で表記→)阿豆佐為


万葉集では2首
大伴家持
「言とはぬ 木すらあぢさゐ 諸弟(もろと)らが
        練りのむらとに あざむかえけり」

(もの言わぬ木でさえ紫陽花のように移りやすいものがある、
または色がわりする)

橘諸兄
 「あぢさゐの 八重咲くごとく やつ代にを
        いませ我が背子見つつ思はむ 」

平安時代
「古今六帖」 草・あぢさゐ
「あかねさす昼はうちたし あぢさゐの花のよひらに 逢ひ見てしかな」





昔から紫陽花はあるという事ですが、万葉集の時代は
山アジサイでしょうか。


紫式部の都ではあまり見かけなかったのかもしれません。
いよいよ五月雨も近く、雨の夜の品さだめの季節となりそうです。


ちなみに、ちょうど今頃に白い花が咲く卯の花の頃も長雨とあります。
「いとどしく賎の庵のいぶせきに卯の花くたし五月雨ぞ降る」千載集







のいばら(野薔薇)

2009-05-04 09:43:00 | 

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薔薇の季節となりました。


庭でずっと薔薇らしき葉が伸びていた枝に
やっと花が咲いているのに気づきました。


これはノイバラの花ではないかと思いますが、どうでしょう。
白い花が咲いて嬉しくてたまりません♪
たまたま、朝日新聞日曜版にも、このノイバラの記事が載っていました。


ノイバラは文字通り万葉集で詠まれた「うまら」といわれる薔薇。
棘(いばら)があります。
薔薇の音読みは「そうび」、訓読みでは「うまら」「うばら」といわれます。


この枝はずっと花が咲かず、大きくなりすぎ。
枝を切ろうかと迷っていたのに、今年になってやっと咲いてくれました♪



きざはし(階)のもとのさうび(薔薇)、けしきばかり咲きて、
春秋の花盛りよりもしめやかにをかしきほどなるに・・・(賢木) 




賢木にあるこの薔薇は何だろうと思っていたのですが、
私は以前にこの薔薇をコウシンバラと決めました。
拙文薔薇1~5参照http://blogs.yahoo.co.jp/hana0101/10004596.html


もちろん万葉集でも詠まれる「うまら」というこの白い薔薇も候補です。
しかし、枝が非常によく伸びます。
「階(きざはし)のもとに」というには、少し大きすぎる咲き方のように思います。


この薔薇達は結実します。
その赤い実(営実)を漢方に使用したところから、
薔薇の木は日本に入ってきたのでしょう。


薔薇は夏の部類。ちょうどカワラ撫子の葉も出てきました。
スズランも葉の影から花が咲いているのに気づきました(ピンボケ)
夏の季節になってきたと感じます。


さて、我が家のパパメイヤンという薔薇が咲きました。
この色を見ると紫の上が着た赤みがかった蘇芳より濃い色と思います。


紫式部はどんな色の薔薇を見ていたのでしょうか?



上溝桜(うわみず桜)

2009-04-23 08:57:33 | 
去年石山寺に行った時に、源氏物語の植物の写真展示がありました。
樺桜(かばさくら)の所に見たこともない花の画像。
ずっと不思議に思っていました。


春になって桜図鑑が書店に並び出し、やっとその写真と同じものを見つけました。


上溝桜(うわみずさくら)です。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/BotanicalGarden-F.html
(植物園へようこそ)
http://shinrin.cool.ne.jp/sub132.html
(六甲山系の樹木図鑑)



紫の上が例えられた樺桜。樺は「かには」とも言われ、
一般には美しい樹木の表皮を使って細工される桜のことのようです。
今も茶筒やお皿、高級家具に桜の皮は使用されています。


平安時代の桜は山桜です。今の染井吉野ではありません。
時期的に開花も遅いです。


故蝶の巻に、
『盛りをすぎた桜も今盛りにほほゑみ、
廊をめぐれる藤の色もこまやかに開けゆきにけり』
とあります


現代では今まさに藤の花が咲きかけています。


樺桜を薄い紅色と称するものもありますが、
1000年昔の樺桜はどんな風だったのか気になっています。


国宝絵巻やその他の絵巻で表現される桜は八重ではないように感じます。
薄い桜色なのか白っぽい色なのか。単に普通の山桜なのか。


紅梅の着物を着ている紫の上。
その容貌に例えられた樺桜。きっと美しい桜だと思います。


後世の樺桜のかさね色は表蘇芳・裏紅色。赤みの強い桜になります。


この時期、紫式部はどんな桜を眺めていたのでしょうか。



見通しあらはなるひさしの御座(おまし)にゐたまへる人
気高くきよらに、さとにほふここちして、
春の霞の間より、おもしろき樺桜の咲きみだれたるを見るここちす (野分)





2009-04-08 10:20:50 | 
TVで偶然桜染めをしていたのをちらっと見ました。
桜のつぼみのついた枝を、何日もかけて煮出し液を作る。
そして布をひたすと桜色になります。


大分の秋月市のお店。
1番綺麗な桜色に出るつぼみの枝は今まで培った感覚で選ぶそうです。


私はスカーフが好きなので、1枚欲しいものです♪


さて、お花見に行ってきました。
日本中がこのシーズンは桜・さくら。
四季のある日本に生まれて良かったと思います。


平安時代の桜は今の種類ではありません。山桜と聞いています。
今よりも時期も遅く咲きます。


紫の上が例えられた樺桜はどんな花色なんでしょうか?


しだれ桜はあったのでしょうか。



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デジカメに残っていた京都風俗博物館の紅葉のかさね色目。表現がこまやかですね。
季節はずれで、少し見にくい画像ですm(__)m


紅(くれない)紅葉 紅葉の季節でも特に紅を印象深くしたかさね色目
櫨(はじ)紅葉   櫨(はぜ)はウルシ科の落葉樹で、その紅葉の美しさを表現した
楓(かえで)紅葉  楓(かえで)の新緑の葉が、序々に色づくさまの色目
戻り(もどり)紅葉紅葉する木々の色を表・裏違う色の組み合わせて表現したかさね色目
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ちなみに桜のかさね色目は長崎盛輝「かさねの色目」によると、
桜    表白・裏赤花 枕草子・紫式部日記・栄花物語・源氏物語に用例。
樺桜   表蘇芳・裏赤花 うつぼ物語・源氏物語に用例
薄花桜  表白・裏淡紅 ほんのり紅味を含んだ山桜色目。平安文学には無し。
桜萌黄  萌黄色の若葉越しに見た山桜であろうか。栄花物語・狭衣物語に用例
薄桜萌黄 表淡青・裏二藍 桜萌黄より淡い若葉越しの山桜を現した。
葉桜   表萌黄・裏 平安文学には用例なし。
他に紅桜・松(待つ)桜・花桜・薄桜・桜かさねの全部で11種があるが、
平安時代には無いものがある。


自然の移ろいを日本人独特の細やかな感覚であらわしています。
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