源氏物語と共に

源氏物語関連

野分(追記あり)

2009-10-10 13:03:15 | 自然
台風が過ぎ去り、急に寒く感じるようになりました。
皆様は、大丈夫だったでしょうか。


こちらは雨よりも風がすさまじく、夜中に古家をガタガタといわせながら、
朝にかけて通りぬけていきました。
久しぶりに怖かったです。


さて、源氏物語にも台風は出てきます。
1000年前も気象は同じという事でしょうか。


石井和子「平安の気象予報士紫式部」講談社α文庫


野分についても詳しくありました。


「野分たちて、にはかに肌寒き夕暮れ・・略・・(桐壺)」


桐壺帝が亡くなった更衣の母のところへ、命婦を遣わし文を送る場面。


この野分は台風ではないかということでした。
台風後、急に肌寒くなり秋がやってくると。


夏の高気圧を台風が東へ押しやり、
冷たい秋の空気を引き込む時のパターンだそうで、
まさしく中秋の名月あたりの頃にも台風はあるとの事。
ちょうど先日がそんな感じでしたね。


ちなみに、月がしみじみ綺麗だと桐壺巻ではその後にあるので
ここは、9月10日前後頃かと推定されています。


勿論、当時は台風は風速何十メートル以上という定義もなく
おそらくこの野分はこの様子から小型のものだっただろうともいわれていました。


本格的台風といえる野分については、
夕霧が紫の上を見てしまう野分の巻が有名です。


「野分、例の年よりもおどろおどろしく空の色変わりて吹きいづ・・(野分)」


その前の文に8月は秋好中宮の父の忌み月であり、
陰暦は今と1ヶ月ちょっとぐらい季節がずれますから
9月~9月の中頃でしょうか。


夕霧は風で御簾が飛び散り、
障害物が無くなった部屋の奥にいる紫の上を見てしまいます。
樺桜のような美しい人であると。


その後夕霧は祖母である大宮(葵の母)の所に行きます。
大宮は大変喜び、
「この年になってこんな怖い野分は、はじめて」とわななき震えながら、
夕霧を頼もしく思うのでした。


夕霧は一晩中そこで過ごします。


「夜もすがら荒き風の音にも、すずろにものあはれなり。
心にかけて恋しと思ふ人のことはさしおかれて、ありつる御面影の忘れられぬを・・(野分)」


台風の風の中、恋しい雲井の雁よりも、
先ほど見た紫の上の面影を忘れられなくなっています。


暁方に風が衰え、村雨(むらさめ)のように雨がざっと降る頃、
六条院の離れた屋が倒れたという情報が入ってきます。
夕霧は養母である花散里を心配して再び六条院へ向かいます。


横なぐりの雨、空のけしきもすごきにと、
このあたりも今と全く変わりありません。


紫式部の描く細やかな台風描写を、
今と重ねあわせながら、大変面白く思いました。
(追記)
ちなみに、野分とは野を分けるほど強い風がふくという意味だそうです。
何となくその様子が想像できますね。
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