荻巣樹徳「幻の植物を追って」による説(抜粋)
『欧州では昔から、自生の<ロサ・ガリカ>のバラを愛好して育種や
香料利用を行ってきたが、あくまでも一季咲きである。
18世紀~19世紀に中国にやってきた欧州人が中国のバラを持ち帰り、
初めて現代バラに四季咲きを導入した。
現代バラの誕生にかかわった中国のバラは4種類
○スレータズ・クリムソン・チャイナ(紅色)
○ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・センテッド・チャイナ(薄紅色)
○パーソンズ・ピンク・チャイナ(ピンク色)
○パークス・イエロー・ティー・センテッド・チャイナ(黄色)
いずれも、<ロサ・シネンサス>と<ロサ・ギガンテア>の雑種といわれている。
複数の植物図鑑を見ると、
コウシンバラの学説には<ロサ・シネンサス>があてられている。
ロサ・シネンサスについては長い間論議されたがよくわからない。
最近ではロサ・シネンサス・センパー・フローレンスという種類がそのものか、
それに近いのではないかといわれている。
中国で<ロサ・シネンサス>の漢名を引くと<月季花>
<長春花>もそう書いてある場合がある。
長春花は一説オールド・ブラッシュとも。
いずれも、四季咲きで、中国でも総称として使われていたことも考えられる。
コウシンバラとは、中国原産の四季咲きバラの総称とするのが妥当ではないか。
しかし、このロサ・シネンサスとロサ・ギガンテアの雑種起源に長い間
疑問を持っていた。房咲きが出現するからである。
両方とも房咲きの性質はない。ノイバラの形質によるものではないか。
最近では、シネンサスそのものがノイバラと自然交配して生まれたものと考える。
実際、DNA分析によると、多くのチャイナローズにノイバラの血が入っている。
<ロサ・ギガンテア>は芳香が素晴らしい。花も大きく白色で半つる性。
中国名<巨大薔薇>
19世紀に中国で栽培されていた<香水月季>がヨーロッパに導入されて、
これを<ロサ・オドラタ>と命名された。
茶の若葉の香りがするので、ティーローズともいう。
オドラタは芳香のあるロサ・ギガンテアとロサシネンサスの雑種とされる。』
かなり所々の抜粋になりましたが、非常に専門的な解説を載せました。
以前紹介した大場秀章<バラの誕生>にもロサシネンサスをコウシンバラとし、
その数種ある標本の事などが詳しく載っています。
専門家ではないので、よくわかりませんが、
とにかく源氏物語の薔薇は中国産のコウシンバラであるという事がわかりました。
断定するには早いかもしれませんが、
特に重ね色目から考えると、クリムソン・チャイナの紅色が
表紅裏紫の色に近いのではないかと思うので、ピンク色ではなく
源氏物語の薔薇はこのコウシンバラの色ではないかという事にしておきます。
源氏物語の薔薇は、うまらといわれる日本古来からあるノイバラの白色ではなく、
中国原産のコウシンバラといわれる薔薇。その色は赤系という事にします。
文献も少ないので、今後も色々な説が出てくるのが待たれます。
実際、私が行った植物園の係の方は、
野村和子小学館「オールドローズ花事典」にある<ロサ・キネンシス・スポンタネア>の写真をさして花弁5種の一重咲きで紫紅色、紅色、白色がある。これではないかと言われ
ました。
その説明には半つる性、2,5mとあり、1983年に荻巣樹徳が四川省で発見。
一季咲きと。そしてこれ以外のキネンシスは四季咲きで、どうしてキネンサスは四季咲きがそうなったか明快な答えが出ていないとありました。
やはり自然変異なんでしょうか?
とにかく1000年以上も昔の薔薇。実物は見られません。
たぶん紅色だろうという事で、私は先日見かけたクリムソンチャイナのバラ苗を買いました。しかし、つけてもらった名札を見ると<ロサ・キネンサス・センパーフローレンス>
この学名は荻巣樹徳さんのいう通りの名前です。わ~!
蕾があるので、咲くのが楽しみです。赤色で買ったのですが、ピンクだったりして・・(笑)
そして、鉢に植え替えたので、実は枯れないかと心配しています(笑)
ピンク色のオールドブラッシュも興味があります。
機会があれば、調べてみようと思います。
また、表記で荻巣さんは・・シネンサスとされていますが他は・・キネンサスとなっているので、読みの違いか?同じものと考えました。
ちなみにバラという名前は、万葉集のうまら→うばら→ばらになったという見解をどこかで見ました。
こちらのサイトはバラの歴史と日本文学の例が載っていて面白かったです。
飛騨みの花紀行
http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11334/hanakiko2004/gifubara/01.html
写真はロサ・ギガンテア(幻の植物を追って)
ロサ・キネンサス・スポンタネア(オールドローズ花図鑑)、現代のオールドブラッシュ