2017.7.19 05:30更新
産経
【武藤正敏氏講演】
日韓関係はがらりと変わる 「韓国人に生まれなくてよかった」の著者が全てを語る
「韓国人に生まれなくてよかった」という“挑発的”なタイトルの著書で話題の武藤正敏・元駐韓大使が7月初め、松江市内で講演した。
島根県日韓親善協会の創立50周年を記念した特別講演に招かれた武藤氏は、「文在寅政権誕生後の朝鮮半島情勢と日韓関係」と題し、文政権の危うさを指摘しつつも韓国民に温かいまなざしを注ぎ、さまざまな角度から両国の関係について語った。
講演の主な内容は次の通り。
これからの韓国が心配
韓国は1960年代、アジア最貧国の一つだった。
今や先進国入りし、これだけの国を作り上げたが、これからどうなるのか、非常に心配。
それは、文在寅(ムンジェイン)大統領の考え方、やろうとしていることと、私が「韓国はこうあるべきだ」と考えていることに、ずいぶん大きな違いがあるからだ。
韓国大統領選で、文氏を支持したのは、北朝鮮の問題についてあまり関心のない若い人たち。
だから、文氏は北朝鮮問題について、決して白紙委任されたわけではなかった。だが、当選後は今までの保守政党の政権とは全く違うことをやっている。
北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返している。
北朝鮮が「大陸間弾道弾だ」と主張したミサイルについては米国務省も同様の認識を示したようだ。
核弾頭を小型化してミサイルに搭載できるようになり、それを実戦配備すればもう後戻りはできなくなる。そうなると、韓国は北朝鮮からどのような言いがかりをつけられるか。
日本も難しい局面を迎えるかもしれない。そういう状況が、文政権時に起きるのではないかと、心配している。
力落ちると徹底的に叩かれる韓国大統領
文大統領は、選挙公約で格差の解消や雇用対策、政経癒着の改革を訴えたが、政権の支持率が高い間は、誰も反対しない。
財閥企業も協力するようなことを言う。
しかし、韓国の大統領は、力が落ちてきたら徹底的に叩かれる。朴槿恵(パククネ)氏も力のあるうちは、崔順実(チェスンシル)事件など表に出てこなかった。昨年の総選挙で負けると、こうしたあら探しをされる。
文政権を取り巻く国際環境も非常に難しい。米国は北朝鮮の問題で韓国の頭越しに中国と手を組もうとしている。
日本とは慰安婦の問題、中国とはTHAAD配備をめぐる問題でいろいろガタガタとしている。
慰安婦合意を振り出しに戻そうとする文政権
日韓関係について、文大統領は慰安婦問題と日韓関係全体を分け、「前向きの関係を作ろう」と言っている。
これは正しく、そうあるべきだと思うが、そういうふうにいくかどうかは疑問だ。
慰安婦問題について、日韓首脳が電話会談した際、文大統領は「韓国の大多数の人々は情緒的に受け入れられない」と言い、さらに訪米前の米報道機関とのインタビューでは「日本は法的な責任を認めて謝罪すべきだ」と言った。
これまで互いに折り合わなかったのを、“ふんわり”とした形で折り合ったのが(安倍首相と朴大統領による)「慰安婦合意」だったのに、これをまた振り出しに戻そうとしている。
今までは、韓国の国民感情が「日本はけしからん」と盛り上がると、日本側がなんとか抑えて日韓関係をうまく収めようと日本が譲る場面が多かった。
だが、今の日本は嫌韓感情が高まっており、日本から譲って日韓関係をまとめようと主張する人は、ほとんどいない。
ちなみに、過去の韓国大統領は慰安婦が騒ぐと「ごもっともです」と言っていたが、朴氏は先頭に立って慰安婦を説得した。
それで慰安婦関係者の約9割が納得していたのだが、文氏は「慰安婦の方々が合意を受け入れない」と言う。
竹島問題、日本がどうしようと「けしからん」
島根県に来て、竹島問題に触れないわけにはいかない。
これは、歴史問題にしてしまったところがいけない。
盧武鉉(ノムヒョン)大統領が「日本の朝鮮半島侵略の第一歩が竹島だ」という位置づけにしたことによって、日本がどうしようと、「けしからん」という感情になってしまった。
「歴史的にも法的にも日本固有の領土だ」という日本の主張には、地図などが存在し、きちっとした根拠がある。
戦後のサンフランシスコ講和条約締結交渉の際、韓国は「カイロ宣言によって竹島は日本の領土から離れた」と訴えたが、米国はこの主張を否定した。
安保の面でもそうだ。朝鮮半島有事の際は、在日米軍の主要基地を国連軍に使用させ、兵站(へいたん)調達の便宜を図るなど、朝鮮半島の平和と安全に日本が直接関わっている。
こうしたことを、韓国人は理解しようとしない。
「対話」重視の北朝鮮政策、大丈夫か
文政権の北朝鮮政策は、「対話重視」で、人事をみてもすべて「対話」にシフトしている。
秘書室長は、主体思想(北朝鮮の国家指針)に共感しているし、国家情報院長は「北朝鮮の金正日・元最高指導者が唯一、名前と顔を一致できていた韓国の行政官」といわれている。
経済の問題では、「漢江の奇跡」を果たした朴正煕(パク・チョンヒ)大統領に対し、文氏自身は「『大同江の奇跡』を」と言っている。
大同江は平壌(ピョンヤン)を流れる北朝鮮の河川。
南北の経済一体化で、世界に影響を及ぼす朝鮮半島全体の経済圏を作ろうということだが、(文氏の中心的な支持層である)若者たちは「統一問題」をどう考えているか。
建前上は、統一を支持するが、本音は「あの貧しい国を助けるために、自分たちがどれだけ負担しなければいけないのか」だ。
南北の経済を一体化させるという、理念は素晴らしいが、文氏が強く支持されている今、若者たちの本音は誰も言わない。それだけに、「本当に大丈夫か」と心配になる。
平昌五輪でも現実離れした提言する文政権
平昌五輪について。文大統領は「南北合同チーム」に言及した。
五輪担当大臣に当たる韓国の文化体育観光部長官も、北朝鮮でもスキー競技の一部種目を一部開催し、南北共催にしようと言っていた。
これによって、南北の和解も進むし、北朝鮮が世界に開かれる。理念としては素晴らしいが、現実的に可能か。
北朝鮮に、各国がトップアスリートを送り込めるか。IOCとして責任を持てるか。
選手だけでなく、各国の応援団や観光客も入ってくる。
北朝鮮にとっても、体制維持に大きな問題が生じるが、こういうことを平気で言うのが、文政権。現実離れしていて、心配だ。
意識の違い表面化した米韓首脳会談
文大統領は、北朝鮮の問題について「朝鮮半島の問題だから、自分たちが主導権を握って対話を通じて解決する」と強く主張している。
大統領直属の文正任(ムン・ジョンイン)・統一外交安保特別補佐官は、米国で「北朝鮮への挑発を止めれば、軍事演習や戦略兵器配備の縮減ができる」と発言し、米国で非常に強い反発が起こった。
補佐官は、北朝鮮の主張を言っているわけで、文大統領は慌てて「これは個人的な意見で、政府の公式見解ではない」と打ち消した。
だが、「軍事演習の縮小」などは文大統領自身が選挙中に主張していたことで、決して補佐官の個人的意見ではない。それだけに文政権は危なっかしい。
今回の米韓首脳会談で、こうした対立点は表に出なかったが、米国のマクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官は
「北朝鮮の脅威によって、韓国が人質に取られている」と言うなど、米側が北朝鮮に対する圧力を緩めるという意思はまったくなく、韓国との意識の違いがかなり表われている。
一般国民の間では、日韓関係は非常に良い。
一部には確信的な反日活動家がおり、大使館の前で毎日デモがある。
私は、この人たちのことを「それによって生計を立てている人たち」だと言ったことがあるが、メディア関係者から「大使がそんなことを言ってはいけない」とたしなめられた。
しかし、私はこれが一部に過ぎず、大多数の人たちはいい感情を持っていることを知ってもらいたくて、そう発言した。
しかし、マスコミや政治家はかなり異なる。
マスコミは、互いに横並びで見ていて、自分たちだけが突出して親日的な報道をして叩かれるのが嫌だから、日本を叩いている。
だから、日本に対して国民全体がいい感情を抱いている、となると、報道も変わってくる。
政治家は、政治が対立と抗争の歴史だから、大統領が日韓関係を進めようとすると、それに対する反対が必ず出てきて、日本を叩く。
だから政治家の反日はなかなか治らない。
日本人の嫌韓感情には、2つのタイプがある。
1つは「韓国人が反日だからけしからん」というタイプ。
もう1つは「自分たちは、日韓関係をよくしようとずいぶん一生懸命頑張ってきたのに、韓国人はいつまでたっても日本の歴史問題を批判する。いい加減にしろ」というもの。
日韓関係進むか否かは大統領次第
私は日韓関係について、「中長期的には改善している」と認識している。日韓関係は、良くなる時も悪くなる時も速く、浮き沈みも激しい。
悪くなる時は、常に「歴史」と「政治」の問題が原因。良くなるのは、人的、文化的な交流によって親近感が増す時。
昔は、日韓の関係が悪くなると、両国の議員連盟が間に入って仲介したこともずいぶんあったが、今はだんだんそれが難しくなり、首脳同士の関係が左右するようになっている。
一般的に、韓国の大統領が「日韓関係を前に進めよう」という信念を持っている時は、うまくいっている。
例えば、朴正煕大統領は国交正常化を実現し、全斗煥(チョンドファン)大統領は初めて国賓として来日した。
金大中(キム・デジュン)大統領は日本文化を開放した。彼は、日本について「血と涙を流しながら民主主義国家になった」と評価していた。
李明博(イ・ミョンバク)大統領の前半期はよかったが、竹島問題が日本の教科書でより強く扱われるようになることを知ったとたんにがらりと変わり、一気に日本に対して厳しくなった。
それから朴槿恵大統領。
最初はあちこちで“告げ口外交”を展開していたが、日韓関係はちゃんとしないといけないと思うようになり、慰安婦問題では合意に至った。
韓国の大統領が日本との歴史問題にこだわっている時には、日韓関係はなかなかうまくいかない。
だが、日韓関係をなんとかしなけえればいけないと考えたとたんに、がらりと変わる。
だから、日韓関係については、短期的によくなった、悪くなったと一喜一憂するのではなく、中長期的に見て、よくしていこうと考えるのが、より現実的だ。
産経
【武藤正敏氏講演】
日韓関係はがらりと変わる 「韓国人に生まれなくてよかった」の著者が全てを語る
「韓国人に生まれなくてよかった」という“挑発的”なタイトルの著書で話題の武藤正敏・元駐韓大使が7月初め、松江市内で講演した。
島根県日韓親善協会の創立50周年を記念した特別講演に招かれた武藤氏は、「文在寅政権誕生後の朝鮮半島情勢と日韓関係」と題し、文政権の危うさを指摘しつつも韓国民に温かいまなざしを注ぎ、さまざまな角度から両国の関係について語った。
講演の主な内容は次の通り。
これからの韓国が心配
韓国は1960年代、アジア最貧国の一つだった。
今や先進国入りし、これだけの国を作り上げたが、これからどうなるのか、非常に心配。
それは、文在寅(ムンジェイン)大統領の考え方、やろうとしていることと、私が「韓国はこうあるべきだ」と考えていることに、ずいぶん大きな違いがあるからだ。
韓国大統領選で、文氏を支持したのは、北朝鮮の問題についてあまり関心のない若い人たち。
だから、文氏は北朝鮮問題について、決して白紙委任されたわけではなかった。だが、当選後は今までの保守政党の政権とは全く違うことをやっている。
北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返している。
北朝鮮が「大陸間弾道弾だ」と主張したミサイルについては米国務省も同様の認識を示したようだ。
核弾頭を小型化してミサイルに搭載できるようになり、それを実戦配備すればもう後戻りはできなくなる。そうなると、韓国は北朝鮮からどのような言いがかりをつけられるか。
日本も難しい局面を迎えるかもしれない。そういう状況が、文政権時に起きるのではないかと、心配している。
力落ちると徹底的に叩かれる韓国大統領
文大統領は、選挙公約で格差の解消や雇用対策、政経癒着の改革を訴えたが、政権の支持率が高い間は、誰も反対しない。
財閥企業も協力するようなことを言う。
しかし、韓国の大統領は、力が落ちてきたら徹底的に叩かれる。朴槿恵(パククネ)氏も力のあるうちは、崔順実(チェスンシル)事件など表に出てこなかった。昨年の総選挙で負けると、こうしたあら探しをされる。
文政権を取り巻く国際環境も非常に難しい。米国は北朝鮮の問題で韓国の頭越しに中国と手を組もうとしている。
日本とは慰安婦の問題、中国とはTHAAD配備をめぐる問題でいろいろガタガタとしている。
慰安婦合意を振り出しに戻そうとする文政権
日韓関係について、文大統領は慰安婦問題と日韓関係全体を分け、「前向きの関係を作ろう」と言っている。
これは正しく、そうあるべきだと思うが、そういうふうにいくかどうかは疑問だ。
慰安婦問題について、日韓首脳が電話会談した際、文大統領は「韓国の大多数の人々は情緒的に受け入れられない」と言い、さらに訪米前の米報道機関とのインタビューでは「日本は法的な責任を認めて謝罪すべきだ」と言った。
これまで互いに折り合わなかったのを、“ふんわり”とした形で折り合ったのが(安倍首相と朴大統領による)「慰安婦合意」だったのに、これをまた振り出しに戻そうとしている。
今までは、韓国の国民感情が「日本はけしからん」と盛り上がると、日本側がなんとか抑えて日韓関係をうまく収めようと日本が譲る場面が多かった。
だが、今の日本は嫌韓感情が高まっており、日本から譲って日韓関係をまとめようと主張する人は、ほとんどいない。
ちなみに、過去の韓国大統領は慰安婦が騒ぐと「ごもっともです」と言っていたが、朴氏は先頭に立って慰安婦を説得した。
それで慰安婦関係者の約9割が納得していたのだが、文氏は「慰安婦の方々が合意を受け入れない」と言う。
竹島問題、日本がどうしようと「けしからん」
島根県に来て、竹島問題に触れないわけにはいかない。
これは、歴史問題にしてしまったところがいけない。
盧武鉉(ノムヒョン)大統領が「日本の朝鮮半島侵略の第一歩が竹島だ」という位置づけにしたことによって、日本がどうしようと、「けしからん」という感情になってしまった。
「歴史的にも法的にも日本固有の領土だ」という日本の主張には、地図などが存在し、きちっとした根拠がある。
戦後のサンフランシスコ講和条約締結交渉の際、韓国は「カイロ宣言によって竹島は日本の領土から離れた」と訴えたが、米国はこの主張を否定した。
安保の面でもそうだ。朝鮮半島有事の際は、在日米軍の主要基地を国連軍に使用させ、兵站(へいたん)調達の便宜を図るなど、朝鮮半島の平和と安全に日本が直接関わっている。
こうしたことを、韓国人は理解しようとしない。
「対話」重視の北朝鮮政策、大丈夫か
文政権の北朝鮮政策は、「対話重視」で、人事をみてもすべて「対話」にシフトしている。
秘書室長は、主体思想(北朝鮮の国家指針)に共感しているし、国家情報院長は「北朝鮮の金正日・元最高指導者が唯一、名前と顔を一致できていた韓国の行政官」といわれている。
経済の問題では、「漢江の奇跡」を果たした朴正煕(パク・チョンヒ)大統領に対し、文氏自身は「『大同江の奇跡』を」と言っている。
大同江は平壌(ピョンヤン)を流れる北朝鮮の河川。
南北の経済一体化で、世界に影響を及ぼす朝鮮半島全体の経済圏を作ろうということだが、(文氏の中心的な支持層である)若者たちは「統一問題」をどう考えているか。
建前上は、統一を支持するが、本音は「あの貧しい国を助けるために、自分たちがどれだけ負担しなければいけないのか」だ。
南北の経済を一体化させるという、理念は素晴らしいが、文氏が強く支持されている今、若者たちの本音は誰も言わない。それだけに、「本当に大丈夫か」と心配になる。
平昌五輪でも現実離れした提言する文政権
平昌五輪について。文大統領は「南北合同チーム」に言及した。
五輪担当大臣に当たる韓国の文化体育観光部長官も、北朝鮮でもスキー競技の一部種目を一部開催し、南北共催にしようと言っていた。
これによって、南北の和解も進むし、北朝鮮が世界に開かれる。理念としては素晴らしいが、現実的に可能か。
北朝鮮に、各国がトップアスリートを送り込めるか。IOCとして責任を持てるか。
選手だけでなく、各国の応援団や観光客も入ってくる。
北朝鮮にとっても、体制維持に大きな問題が生じるが、こういうことを平気で言うのが、文政権。現実離れしていて、心配だ。
意識の違い表面化した米韓首脳会談
文大統領は、北朝鮮の問題について「朝鮮半島の問題だから、自分たちが主導権を握って対話を通じて解決する」と強く主張している。
大統領直属の文正任(ムン・ジョンイン)・統一外交安保特別補佐官は、米国で「北朝鮮への挑発を止めれば、軍事演習や戦略兵器配備の縮減ができる」と発言し、米国で非常に強い反発が起こった。
補佐官は、北朝鮮の主張を言っているわけで、文大統領は慌てて「これは個人的な意見で、政府の公式見解ではない」と打ち消した。
だが、「軍事演習の縮小」などは文大統領自身が選挙中に主張していたことで、決して補佐官の個人的意見ではない。それだけに文政権は危なっかしい。
今回の米韓首脳会談で、こうした対立点は表に出なかったが、米国のマクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官は
「北朝鮮の脅威によって、韓国が人質に取られている」と言うなど、米側が北朝鮮に対する圧力を緩めるという意思はまったくなく、韓国との意識の違いがかなり表われている。
一般国民の間では、日韓関係は非常に良い。
一部には確信的な反日活動家がおり、大使館の前で毎日デモがある。
私は、この人たちのことを「それによって生計を立てている人たち」だと言ったことがあるが、メディア関係者から「大使がそんなことを言ってはいけない」とたしなめられた。
しかし、私はこれが一部に過ぎず、大多数の人たちはいい感情を持っていることを知ってもらいたくて、そう発言した。
しかし、マスコミや政治家はかなり異なる。
マスコミは、互いに横並びで見ていて、自分たちだけが突出して親日的な報道をして叩かれるのが嫌だから、日本を叩いている。
だから、日本に対して国民全体がいい感情を抱いている、となると、報道も変わってくる。
政治家は、政治が対立と抗争の歴史だから、大統領が日韓関係を進めようとすると、それに対する反対が必ず出てきて、日本を叩く。
だから政治家の反日はなかなか治らない。
日本人の嫌韓感情には、2つのタイプがある。
1つは「韓国人が反日だからけしからん」というタイプ。
もう1つは「自分たちは、日韓関係をよくしようとずいぶん一生懸命頑張ってきたのに、韓国人はいつまでたっても日本の歴史問題を批判する。いい加減にしろ」というもの。
日韓関係進むか否かは大統領次第
私は日韓関係について、「中長期的には改善している」と認識している。日韓関係は、良くなる時も悪くなる時も速く、浮き沈みも激しい。
悪くなる時は、常に「歴史」と「政治」の問題が原因。良くなるのは、人的、文化的な交流によって親近感が増す時。
昔は、日韓の関係が悪くなると、両国の議員連盟が間に入って仲介したこともずいぶんあったが、今はだんだんそれが難しくなり、首脳同士の関係が左右するようになっている。
一般的に、韓国の大統領が「日韓関係を前に進めよう」という信念を持っている時は、うまくいっている。
例えば、朴正煕大統領は国交正常化を実現し、全斗煥(チョンドファン)大統領は初めて国賓として来日した。
金大中(キム・デジュン)大統領は日本文化を開放した。彼は、日本について「血と涙を流しながら民主主義国家になった」と評価していた。
李明博(イ・ミョンバク)大統領の前半期はよかったが、竹島問題が日本の教科書でより強く扱われるようになることを知ったとたんにがらりと変わり、一気に日本に対して厳しくなった。
それから朴槿恵大統領。
最初はあちこちで“告げ口外交”を展開していたが、日韓関係はちゃんとしないといけないと思うようになり、慰安婦問題では合意に至った。
韓国の大統領が日本との歴史問題にこだわっている時には、日韓関係はなかなかうまくいかない。
だが、日韓関係をなんとかしなけえればいけないと考えたとたんに、がらりと変わる。
だから、日韓関係については、短期的によくなった、悪くなったと一喜一憂するのではなく、中長期的に見て、よくしていこうと考えるのが、より現実的だ。