日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
韓国、「米韓首脳会談」わずか26分短時間の裏に「米の不信感」
2017年11月13日
韓国は獅子身中の虫
薄氷の米韓関係へ
11月7日、米韓首脳会談はわずか26分で終わった。
安倍首相とは、初日のゴルフだけで2時間半以上の濃密な時間を共有した。
これに比べ、米韓は「超短時間」の挨拶程度のものであった。トランプ米大統領が、文韓国大統領への不信の念を露わにしたのだ。
「身から出たサビ」と言うが、文大統領はTHAAD(超高高度ミサイル網)問題で中国と話合った「3不問題」が、米国側の不興を買ったもの。
米韓同盟の基本から外れた「取引」を中国と行なったからだ。この点は、私もすでにこのブログで批判した通りである。
「3不問題」とは、次のような内容である。
韓国が、中国によるTHAADに関わる「経済報復」中止を求めて提案した「3提案」である。
① 韓国は米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しない
② THAAD追加配備を検討しない
③ 韓日米安保協力は軍事同盟に発展しない
以上の3点はこれまで、韓国政府が中国政府との関係を意識し、内々で維持してきた立場だが、表明することはなかった。
特に、日米韓軍事同盟に言及したのは異例。
本来、韓国が中国政府に表明することではない。韓国の安保政策の根幹に関わった問題であるからだ。
韓国政府が、韓中関係の正常化を狙った発言と解釈されている。米国が、韓国に対する不信感は当然で、次の米紙記事にそれが現れている。
韓国は獅子身中の虫
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月8日付)は、「中国の圧力にひざまずく韓国」と題する社説で、次のように論評している。
韓国大統領府は、「86世代」が陣取っており文大統領に相当な影響を与えている。
「86世代」とは毎度、説明するように「反米・親中朝派」である。
政治体制を問わず、ともかく南北統一を目指す集団である。北が核武装することを内心で歓迎するような集団だ。
この集団が大統領府を取り仕切っており、文氏は身動きができない状態だ。
今回、中国寄りの安保体制として、「3不問題」が登場した理由である。
(1)「ドナルド・トランプ米大統領は7日、北朝鮮の脅威を抑えるのに『多大な協力』を得たとして韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を称賛し、状況は『かなり前進した』と述べた。
またソウルで行われた首脳会談の後、文氏は米韓両国の絆を強調して見せた。
だが最近の一連の行動をみると、文氏が信頼できる友人だとは思えない。
先週はミサイル防衛で中国の圧力に屈した。中国政府の嫌がらせや金正恩(キム・ジョンウン)体制への支援に対し、韓国が見返りを与える形となった」
このパラグラフでも明確に指摘しているが、「文氏が信頼できる友人だとは思えない」のだ。
その時々で、発言する内容が異なるからである。私は、すでに文氏が政治家失格と見ている。
自らの信念がなく、中国が「経済報復」して苦境に立つと、にわかに「日本接近」を演じてみせる。
だが、THAAD問題が解決すると、途端に「中国寄り」姿勢に転じて、日本批判をするという「コウモリ型」政治家である。自分の言動に責任を持たない「風見鶏」である。
11月7日のトランプ大統領歓迎晩餐会では、日本への嫌がらせを行なった。
元慰安婦の女性を招待したほか、「独島(竹島)エビ」を食材に使って「日本けん制」をやって見せたのだ。
日米韓三カ国が、北朝鮮の核やミサイルに対して共同戦線を張っている現在、この結束を乱す「日本けん制」は納得できない振る舞いだ。
「86世代」が、日本への嫌がらせでやっているに違いな。
(2)「今年、北朝鮮のミサイルの脅威が高まったのを受け、韓国は米国製の地上配備型ミサイル迎撃システム『THAAD(サード)』を配備した。
200キロメートル以上の射程でミサイルを撃墜することができる。
中国はこれに猛反発し、中国の核ミサイル基地がTHAADの強力なレーダーに監視される可能性があると主張した。
中国が抱くより大きな懸念は、韓国が他の米同盟国との緊密な関係に取り込まれることだ。
アジア歴訪中のトランプ氏にとって主要なテーマは、韓国や日本との間でこれまで築いた絆を一段と深化させ、『自由で開かれたインド・太平洋地域』を守るためにアジアの民主主義諸国との協力体制を作ることだ。
仮に韓国が日本との協力に消極的な態度をやめるならば、アジアの覇権国家を目指す中国にとって深刻な打撃となるだろう」
中国が、THAAD問題で韓国へ難癖をつけた本当の理由は、「韓国が他の米同盟国との緊密な関係に取り込まれること」であるとしている。
文氏は、日本が北の核武装を利用して軍備の増強を図っていると非難し始めた。
しかも、ASEAN(東南アジア諸国連合)から日本が警戒されているという、事実に反したことまで言っているのだ。
中国政府から吹き込まれ、オーム返しに言っているのだろう。
米国が、期待する「日米韓三カ国協調」を損ねる発言だ。
裏には、中国が控えており「日本批判」を促しているのだろう。
このように、韓国は「信頼できる友人ではない」。単なる口舌の徒である。
(3)「先週、文氏はついに降伏した。康京和(カン・ギョンファ)外相は中国の示す条件に従ってTHAAD論争に決着をつけることを発表した。
韓国は同システムのレーダーや発射台を追加配備しないことを約束した。
これで韓国は北朝鮮の将来の攻撃に対して脆弱となる。
すでに配備済みの6基だけでは、首都ソウルを含めた韓国北部をカバーできないからだ。
追加配備しない限り、北朝鮮のミサイルがTHAADの迎撃能力を圧倒することになりかねない」
文大統領は、中国へ「降伏」してTHAAD追加配備をしないと表明した。
北のミサイルの脅威がますます高まっている現在、6門だけのTHAADではとてもミサイル防衛の責めを果たせない。
韓国に駐留する米軍の防衛だけで済むはずがなく、首都ソウルを含めた韓国北部をカバーできないのだ。
米軍と話合わずに、勝手に中国へ「提案」するべき事柄ではない。
(4)「韓国は、米国がアジア地域で構築するミサイル防衛システムに参加しないことに同意した。
これでは韓国や日本における防衛能力がそがれることになる。さらに韓国は今後、日米との軍事同盟に加わらないことも約束した。
こうして中国は、欧州における北大西洋条約機構(NATO)と同様にアジアで集団防衛体制を構築する米国の方針に対し、それを妨げる目標を達成した。
韓国は、米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しないと表明している。
これでは、韓国や日本の防衛能力がそがれることになると懸念される。
このMDは、アジアで集団防衛体制を構築する米国の方針を打ち砕く結果になるという。
ここまで来ると、韓国は自由主義国の一員か、中国の同盟国かという根本的な疑問に突き当たる。
これこそ「86世代」による、反米・親中朝への動きの一環と言わざるを得ない。韓国は、日米にとっては「獅子身中の虫」と化してきた。
(5)「文氏は米中両国との『バランス外交』を目指すとしている。
しかし中国の圧力に直面し、自国や同盟国の安全保障に関して譲歩もいとわない姿勢は、バランス外交とは程遠いものだ。
米韓の大統領が7日に共同戦線を誇示したのは当然だと思われる。だが文氏が取った一連の行動は、金正恩氏を包囲するための同盟関係を損なうものとなった」
文氏は、先のアジア・メディアとの会見では、米中の「バランス外交」を行なうと言明した。
7日の米韓首脳会談後の記者会見では、「バランス外交」を否定した。
文氏のような「風見鶏」、「コウモリ型」で定見を持たない人間には、外交の任が重すぎる。韓国は、日米韓三カ国の中で行動すべきである。独自行動は結束を乱し、北を利するだけである。
薄氷の米韓関係へ
『朝鮮日報』(11月8日付)社説は、「トランプ 大統領初来韓、韓米同盟の新たな契機に」と題して、次のように論じた。
韓国最大紙の『朝鮮日報』が、日米首脳会談と米韓首脳会談を比較して、その中味が全く異なったことに、沈痛なトーンの社説を掲げた。
米韓首脳会談の時間の短さを言外に嘆いたのだ。そして今後、米韓同盟が維持できるかどうかに深い憂慮の念を滲ませている。
(6)「きのうの会談で残念に思われた部分がなかったわけではない。両首脳の会談は単独会談と拡大会談を合わせて合計55分で終わった。
通訳の時間を除けば30分足らずだ。
トランプ大統領は韓国を『単なる長年の同盟国以上だ』と言った。
同大統領は東京に滞在した際、日本を『宝のようなパートナーであり、中核となる同盟国だ』と言ったのと対照的なのは事実だ。
トランプ氏が、文氏との会談時間を短時間で終わらせたのは、「話しても無駄」という雰囲気が伝わってくるのだ。
はるばる米国から韓国まで来て、正味の会談時間が30分足らずで終わらせたのは信じがたいことである。
トランプ氏は名うての不動産業者だ。
打てば響く相手でなければ、話さないというビジネス感覚が身についている。
気が合う安倍首相とは、何時間話しても苦にならないが、波長の合わない文氏では30分が限度だろうか。
トランプ氏は、日本を評して「宝のようなパートナー」と発言した。韓国については、「単なる長年の同盟国以上だ」と言っている。
この両方の発言を比べれば、トランプ氏における日韓評価の程度が一目瞭然である。
この評価における日米の軽重差から、次のパラグラフのように、韓国側の警戒感が滲み出ている。
(7)「同盟国は必要な時に常にそばにいると速断してはならない。いつでも壊れる可能性があるのが同盟関係だ。
韓米同盟は1953年に締結されたて以来、韓半島にとどまらず北東アジアの平和を守り、韓国の奇跡的な発展を支えた。
この同盟を管理するには、毎日の庭の手入れをするように細心の配慮と誠意が必要だ」
韓国が、にわかに米韓関係に危機感を持ち始めている。
従来は、日米関係よりも米韓関係の方が濃密であると自慢してきた。
それが、ついに逆転しており、強固な日米関係に比べて米韓関係は形骸化した。
その原因は、韓国側にあるという認識が全面に出ている。
文政権が「3不問題」という先走った行動に出た結果だ。米国とは、何の相談もしない「ひとり芝居」を演じた結果が米韓の溝を掘ったのだ。
韓国外交の最大の欠陥は、「反日」意識が強すぎることである。
「反日」の余り中国へ接近して、中国に足下を見られて「3不」という屈辱の「誓い」をさせられたのであろう。
中国は、骨までしゃぶる国であると、つい一ヶ月前まで韓国メディが書き連ねてきたことだ。
韓国政府は、その中国の魔手にまんまと乗せられてしまった。
こうして、米韓首脳会談は30分に満たない超短時間で打ち切られた。
日米の晩餐会は和気藹々として、「結婚式」のようだったという。
『産経新聞』(11月7日付)は、次のように報じた。
「安倍晋三首相が6日夜に迎賓館でトランプ米大統領を招いて開いた晩餐会は一風変わった盛り上がりとなった。
首脳出席の晩餐会は同じテーブルを囲む列席者同士で会話を楽しむのが通例だが、トランプ氏へのあいさつに行列ができ、
首相が一人一人を紹介する展開となり、『結婚式』の披露宴のような雰囲気だったという」
「きっかけは、『ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)』の動画で有名な歌手のピコ太郎さん。
トランプ氏の孫娘がPPAPの物まねをした動画が話題を呼び、招かれた。
出席者によると、ピコ太郎さんがトランプ氏に突撃し、記念撮影に成功した。
これを目撃した出席者が写真を撮ろうとトランプ氏の元に殺到。
次第に自席を移動する人が増え、あちこちで酒盛りが始まった。
外務省幹部が『あんな晩餐会、今まで見たことがない』と語るほどで、首脳間の信頼が強固な現在の日米関係を反映した和やかな会となった」
米国では、安倍首相がトランプ大統領の外交特別補佐官であるとの冗句が流れているという。
アジア外交について、トランプ氏は米国務長官の意見よりも安倍首相の意見を求めるほど。
この事実を知っている韓国は、例によって日本へのジェラシーをたぎらせているに違いな。
米韓晩餐会で、日本への嫌がらせに元慰安婦を招待したり、「独島エビ」を食材に使う等は、「86世代」が考えつきそうなことである。
こうした感情論では、韓国の国益を守れないのだ。