日本と世界

世界の中の日本

徴用工問題、韓国政府が解決策を発表 最大野党代表のブレーン「世論の反発は相当」

2023-03-20 17:49:53 | 日記
更新日:2023.03.06 公開日:2023.03.06 

徴用工問題、韓国政府が解決策を発表 最大野党代表のブレーン「世論の反発は相当」

日本と韓国の間で最大の懸案になっていた徴用工問題について、韓国政府が3月6日、解決策を発表した。

日本企業に元徴用工らへの損害賠償を命じた2018年秋の韓国大法院(最高裁判所)判決以降、冷却していた日韓関係は改善に向かうことになる。

前回大統領選で現職の尹錫悦氏と争った李在明(「共に民主党」代表)陣営でブレーンを務めた魏聖洛元駐ロシア大使は、合意を評価する一方、韓国内でさらに政治対立が深まると懸念する。(牧野愛博) 

――徴用工問題を巡る韓国政府の発表をどう評価しますか。

長い間、日韓関係の障害になっていた問題が解決の方向に向かうことは、歓迎すべき話だ。

ただ、結論に至る過程で韓国と日本双方にいくつか、物足りない点があった。

まず、韓国側だが、これは歴史を巡る相当政治的な問題であり、国民世論と密接に関係していた。

国民の理解を得るための政治的な努力が不足していた。

野党や反対陣営との意思疎通の努力を怠り、政府だけで独自に解決策を作った。

政府は、「民官協議会」を作ったほか、原告とも接触していたが、政府が出した結論を一方的に説明したに過ぎない。

それでは、政治的なプロセスを経たとは言えず、国民世論の反発は相当なものになるだろう。

また、今回の政府解決策で、日本企業が自主的に寄付した金は、原告に対する救済ではなく、別の教育や医療などに使われるとも聞いている。

請求権協定を厳格に解釈すれば、日本側はそのように主張したのかもしれない。

しかし、韓国市民が「日本企業の出した金は、原告には1円も行かないそうだ」と聞けば、世論が快く受け取らないかもしれない。

次に、日本について、私が不満を言う立場にはないが、(日韓請求権協定が破壊されるため、判決は受け入れられないという)法律的な主張に終始し、未来志向の政治的な配慮が不足していた。

今回は、韓国の大法院判決が問題の発端だったから、韓国が柔軟な姿勢を示すしかなかったのは間違いない。

当然、柔軟な姿勢には(韓国で)反対が多い。

起こらざるを得ない反対世論を説得するプロセスが不足していたことが残念だ。

徴用工問題とは

戦時中、日本の統治下にあった朝鮮半島から日本の工場や炭鉱などに労働力として動員された「徴用工」だった人たちが、自身を雇用していた日本の企業などに賠償を求める訴えを韓国で起こした。

韓国の大法院(最高裁)は2018年、新日鉄住金(現在の日本製鉄)と三菱重工業に対し、元徴用工に賠償するよう命じる判決を相次いで出した。

これに対し、2社は支払いを拒否し、日本政府も、元徴用工への補償問題は韓国と国交正常化した際に結んだ「日韓請求権協定」(1965年)で「解決済み」として、判決は無効だと主張した。

日韓とも譲らず、両国関係は「戦後最悪」と言われるまでに悪化していた。

――なぜ、韓国では政治的な努力が不足したのでしょうか。

文在寅政権では「判決の通りに進めれば良い」と考え、その枠内で解決策を考える人が多かった。

それに比べ、尹錫悦政権は現実を受け止め、よくやったと評価できる。

しかし、国内世論に反発がある以上、市民を説得して国内の共感を得る基礎を作ることが最初に必要だった。

日本との交渉はその次の問題だ。

私は昨年5月に尹政権が発足した直後から、「超党派で賢人会議をつくって意見を収斂すべきだ」と提案し続けてきたが、実現しなかった。

「合理的な解決策を目指せば、何の問題もない」と考え、反対陣営との政治的な意思疎通を望まない雰囲気があった。

韓国では今、保守と進歩(革新)との対立が、非常に深刻な状況に陥っている。

検察当局による文在寅政権当時の人々に対する取り調べも進んでいる。

このため、政府・与党は野党との意思疎通を図らなかった。

でも、野党議員ではなくても、韓国内に進歩陣営を代表する人物は大勢いる。

こうした人々に声をかけるべきだったが、それすらしなかった。

尹錫悦政権は、この解決策を推進する途中で、反対派の抵抗が強いことに気づき、日本政府に「もう少し誠意を見せて欲しい」と言い出した。

それが、日本による謝罪や、被告企業による寄付などの要求につながった。

しかし、韓国の国内で政治合意を得ていれば、日本にそのような要求をしないで済んだはずだ。

日本に要請しても構わないが、日本が受けないなら、韓国は独自の道を進むことができたはずだ。

現在の交渉結果を見るにつけ、私がもし交渉の担当者だったら、「プランB」を考えていただろう。

むしろ、日韓請求権協定に基づく第三国を含めた仲裁委員会での決着を考慮しただろう。

そうすれば、韓国が最初に人気のない譲歩をし、強硬な日本に譲歩を請うことをしなくても済んだはずだ。

――尹政権を李在明氏は「売国奴外交」と非難しています。

李氏の姿勢には問題がありませんか。

私が李在明陣営にいたから弁護するわけではないが、順序をみてほしい。李在明氏がこうした非難を始めたのは、今年1月に韓国政府の解決策を巡る公開討論会が行われた時期からだ。李在明氏は昨年7月に党代表に選ばれてから、しばらくは日韓関係について沈黙していた。もし、韓国政府が先に李氏に歩み寄って対話していれば、別の結果になったと思う。私も民間の財団に所属し、与野党に賢人会議を作ることを提案したが、力が足りなかった。
――日韓関係の改善に問題が生まれますか?

2015年の日韓慰安婦合意と比べれば、次の政権になったからといって、今回の解決策をひっくり返す状況になる可能性は低いだろう。慰安婦問題と異なり、徴用工問題は日韓請求権協定で扱っているし、その後も何度か補償を受けているからだ。

ただ、政府の解決策に対して法的措置が取られる可能性がある。原告団の一部が政府の解決策を受け入れず、代位弁済に異議を唱え、大法院判決通りに日本企業資産の現金化と賠償を求める訴訟を起こすかもしれない。

尹錫悦政権は、国内の議論を収斂せず、解決策を発表した。車のドアを閉めず、安全ベルトもつけずに出発したようなものだ。

韓国内でも「日韓関係を改善すべきだ」という意見が強いが、今回の韓国政府が発表した解決策には反対が相当数ある。

尹錫悦大統領は3月に訪日し、5月の広島サミットでも訪日しようと考えているようだが、世論の支持が不足するなかで、姿勢が前のめりになりすぎると、政治的な逆風を招きかねない。

その政治的な負担は、尹政権に向かうことになる。尹政権が望んでいる日韓関係の改善や日米韓協力にも足かせになるだろう。非常に残念だ。

牧野愛博朝日新聞記者、広島大学客員教授

メールがないテレックスの時代、外航海運の会社で働いていました。記者になってからも、世界をのぞく仕事ができて幸せです。

「世界は週4日なのに韓国は逆行」…外信も驚いた週69時間勤務制

2023-03-20 17:29:59 | 日記
「世界は週4日なのに韓国は逆行」…外信も驚いた週69時間勤務制

3/16(木) 7:58配信

2021年OECD平均労働時間 「韓国は世界的傾向と反対に進んでいる』(イタリア/La Repubblica) 韓国政府が推進中の「週69時間勤務制」に対して主要外信が14日(現地時間)、一斉に報道した。

メディアは「韓国人はすでに世界の他の国々よりもはるかに長く働いている」としながら、労働時間改編案を巡り労働界と労働者の反発が高まっている国内状況に対して紹介した。

 この日、オーストラリアABCは「韓国政府は労働者が週に69時間働けるようにする労働制度改編案を通過させるために努力している」としながら「労働時間改編案は韓国で少子化問題が深刻化する状況から出たもの」と説明した。 

続いて「多くの韓国女性たちが仕事と育児のうち一つを選択しなければならない状況に置かれ、政府は(これを解決するために)労働柔軟性を確保してライフワークバランスを改善しなければならないため週69時間制の導入を推進した」と伝えた。

 これに先立ち今月6日、雇用労働部は労働者が週に52時間まで勤務できるようにした現行の制度を変更して、忙しい時は最大69時間働けるように許容する内容の労働法改正案を立法予告した。

「週単位」の延長労働時間管理単位を、「月または年単位」に拡大して弾力的な勤務を可能にする内容が骨子だ。

 外信各社は「韓国人はすでにどの国よりも長時間労働している」点を指摘した。

オーストラリアABCは「韓国には長時間労働文化によって『Kwarosa(過労死)』という単語がある」としながら「これは深刻な労働にともなう心臓麻痺(まひ)や脳卒中などで突然死することを称する単語」と説明した。

 これに対してオーストラリアの労働時間は週最大38時間で、相対的に勤労時間が短いと言及した。

豪サウスオーストラリア大学のコニー・ジョン副教授は「西欧社会はさらに個人主義的で非階層的な傾向だが、アジアの国々は集団主義的で位階的なため労働時間が長くなる」と説明した。

 実際に15日の韓国行政研究院の報告書「韓国と主要先進国の労働時間規制現況比較」によると、

韓国全体就業者の年間実労働時間は2021年基準で経済協力開発機構(OECD)の平均1716時間より199時間長かった。

ドイツ(1349時間)はもちろん、日本(1607時間)よりもはるかに長時間働いていることが明らかになった。

 韓国の「週69時間制」議論が労働時間を短縮しようとする世界的傾向と逆行するという指摘もある。

イタリアメディア「 ラ・レプッブリカ(La Repubblica)」は「世界の他の国々が週4日勤務を議論する中で韓国政府は反対方向に進んでいる」と強調した。 

また「現在与党が国会の過半を占めることができていない状況で、保守的な尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は今回の改正案で世論の叱責を受けている」としながら「野党である共に民主党は今回の改正案が失業率を高めると批判している」と伝えた。

 ブルームバーグ通信は大統領室が「週69時間制」に対する補完検討を指示したという内容に重点的に扱って「これは親企業政策を支持してきた尹大統領には政策後退として映りかねない」と伝えた。

引き続き「(検討指示は)来年の総選挙を控えて、過半議席確保を望む執権与党が若い有権者の支持を得るための動きかもしれない」と分析した。

 ワシントン・ポスト(WP)は「(週)69時間制改編案は)すでに『仕事中毒(workaholism)』として有名な韓国でワークライフバランスを亡ぼすと懸念する野党と労働者の反発を呼んだ」と報じた。

続いて韓国の世界最低水準の出生率と高い自殺率に言及して「世界保健機関(WHO)は週当たり55時間以上の勤務が健康に深刻な危険を招くと警告した」と伝えた。

韓国政府が打ち出した週69時間労働、上限引き上げに若者反発

2023-03-20 17:12:41 | 日記
韓国政府が打ち出した週69時間労働、上限引き上げに若者反発

2023.03.20 Mon posted at 15:00 JST


1週間の労働時間の上限を69時間に引き上げる計画をめぐり、若者世代から反発が出て再考を迫られた/

韓国・ソウル(CNN) 韓国政府が1週間の労働時間の上限を現在の52時間から69時間に引き上げる計画をめぐり、若者世代の反発が強まったことを受けて再考を迫られた。

韓国人の労働時間は世界の中でも筆頭級で、経済協力開発機構(OECD)の2021年の統計によれば、メキシコ、コスタリカ、チリに次いで4番目に長い。過労死する人も毎年後を絶たない。

それでも政府は生産性の向上を目指す経済団体の圧力を受けて上限の引き上げを打ち出したが、これに対して若者や組合が反発した。

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の秘書官は15日、政府は国民の意見に耳を傾けて新たな方向に踏み出すと発表。若者や組合に加入していない労働者の権利を守ることに尽力すると強調した。

労働時間の上限引き上げは、出生率の低下や人口の高齢化に伴う労働人口の減少を見越した対策とされていた。

これに対し、労働者に対する締め付けを強めれば、事態の一層の悪化を招くとして批判の声が広がった。

韓国では18年に、1週間の労働時間の上限が当時の68時間から現在の52時間に引き下げられたばかりだった。

現行法は週40時間の労働に加え、12時間の超過勤務を認めている。

しかし現実には、労働者の多くがそれ以上の長時間労働を求めるプレッシャーにさらされていると専門家は指摘する。

OECDの統計によると、韓国人の平均労働時間は21年の平均で1915時間。OECD平均の1716時間、米国の1767時間を大幅に上回る。


輸出不振に直面し、政府が打開策を模索(韓国)

2023-03-20 14:57:27 | 日記
輸出不振に直面し、政府が打開策を模索(韓国)

2023年2月20日

韓国の輸出が不振に陥っている。

確かに、2022年通年の輸出でこそ、前年を上回る実績だった。

具体的には、前年比6.1%増の6,837億ドルを記録した。

しかし、月を追うごとに勢いが衰えているのだ。

月別に輸出の前年同月比を追うと、2021年5月をピークに伸び率は低下傾向だ。

2022年10月以降は、4カ月連続してマイナスを記録している

2022年の輸出を半期別にみると、上半期(1~6月)は前年同期比15.6%増の3,505億ドルだったのに対し、下半期(7~12月)は同2.4%減の3,332億ドル。

減少に転じたかたちだ。さらに、2023年1月は前年同月比16.6%減と、大幅に減少している。輸出不振がさらに鮮明になったことがわかる。

なお、貿易収支は、2022年通年で赤字だった。

これは輸入が、同18.9%の7,312億ドルと大幅に増加したことを受けた結果だ。

貿易赤字を計上したのは、リーマン・ショック時の2008年以来だ。


半導体価格下落から、輸出が不調に

韓国の総人口は5,163万人(2022年中位推計、出所:統計庁)。

内需規模が必ずしも大きいとは言えない。

そのため、経済成長には輸出の役割が重要だ。

統計庁のデータベースによると、韓国の輸出依存度(名目GDPに対する通関ベースの輸出額の比率)は、2021年時点で35.6%。

主要国の中ではドイツ(38.6%)と並び、高めの水準になっている。

ちなみに、同データベースなどによると、輸出依存度(同年)は、中国19.0%、日本15.0%、米国7.6%だ。

いずれも、韓国よりも大幅に低い。

輸出依存度が比較的高いというのは、輸出の好不調が経済に大きく影響する構造と言い換えることもできる(注1)。

足元の輸出が不振な最大の原因は、主力品目の半導体の輸出減少だ(注2)。

前年同期比106億ドル減(15.0%減)と、輸出総額の減少幅(80億ドル)を上回るほどだった。

半導体輸出がここまで減少したのは、半導体価格の下落によるところが大きい。

半導体メモリー(HS 854232)の輸出単価は、2022年半ばから下落が鮮明になっている。

2022年で最も高かったのは、5月。その当時のキログラム当たり2万1,700ドルが、12月には同1万400ドルと半分以下に下がった。

市況回復には時間が掛かる見通しだ。

かと言って、半導体に代わって輸出が好調な品目も見当たらない。

そのため、当面は輸出不振が続きそうだ。

ちなみに、韓国銀行(中央銀行)が2022年11月24日に発表した経済予測では、2023年の実質GDP成長率は1.7%にとどまる。

韓国では2%を切る経済成長率は低成長とみられがちだ〔実際、2010年以降で2%未満だったのは、新型コロナウイルス禍に見舞われた2020年(マイナス0.7%)1年だけだった〕。

2023年の経済成長率が低水準になるとした大きな理由は、輸出の不振が続くとみたことにある。

同行では、同年の財貨・サービス輸出(実質GDPベース)が0.7%増(上半期は前年同期比3.7%減、下半期は同4.9%増)にとどまるとみている。

輸出先の多角化、新しい輸出品目の創出に注力

昨今の輸出不振に対して、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は強い危機感を抱いている。

尹大統領は2023年1月1日、国民向けに「新年の辞」を発表した。

主に言及されたのが経済分野だ。その中でも、幾度となく輸出の重要性を強調したのが特に印象的だった。

まず、世界経済や韓国経済が直面する課題に言及した後、
「複合危機は輸出で突破しなければならない。輸出は韓国経済の根幹で、雇用の源泉」と述べ、輸出の重要性を強調した。

さらに、

「韓国の輸出戦略は過去とは変えなければならない」

「全ての外交の中心を経済に置き、輸出戦略を直接構築する」

と決意表明している。

では、政府として具体的にどのような輸出政策を取ろうとしているのだろうか。

産業通商資源部(「部」は日本の「省」に相当)は2022年12月27日、「2023年 産業通商資源部業務報告」を発表した。

この報告には、2023年に実施予定の政策がまとめられている。

報告に付されたタイトルには、当年中に「輸出6,800億ドル以上」「設備投資100兆ウォン(注3)」「対内直接投資300億ドル以上の誘致」を目標にするとの文言が躍る。

ここでもまず「輸出」に言及していることから、特に輸出の回復に注力する方針を宣言したものといえる。

報告の内容は、4つの柱で構成されている。

その第1の柱もやはり、「政府を挙げて輸出増を実現」だ。輸出回復を最優先する姿勢を、さらにここでも示している。そのための方策として挙げたのが、次の項目だ。
  • 貿易金融、認証、マーケティングという「輸出に伴う3大隘路」を集中的に解消する。
  • 貿易に携わる若年層育成とデジタル貿易拡大により、輸出の裾野を拡大する。
  • ASEAN・中南米・アフリカなどの新興国、中東などの資源国に対して、輸出を支援。これにより輸出先の多角化を進める。
  • 原発、防衛産業、プラントの「3大有望分野」で、輸出拡大を推進する。
  • 大統領主催の「輸出戦略会議」を通じ、政府を挙げて輸出支援戦略を推進する。
以上の項目には、さまざまな次元の対策が含まれている。(1)輸出先、(2)輸出品目の2つの視点で整理すると、次のようになろう。
  1. 輸出先の多角化
    まず輸出先については、中国に対する輸出依存度を低める狙いが込められていると読み取れる。ちなみに、対中輸出が輸出総額に占める割合(2022年)は22.8%。
  2. これに香港を加えると26.8%と、4分の1を超過する。 
  3. 中国に代わる輸出先として、韓国政府が特に注目しているのが、ASEANと中東だ。 
  4. ASEANについては、文在寅(ムン・ジェイン)前政権も、「新南方政策(注4)」を展開してきた。尹政権になってからは、「新南方政策」という用語は使用していない。
  5. しかし、2022年12月28日に「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」を発表。前政権同様に、ASEAN諸国との関係強化を図る考えを示した。実際、輸出総額に占めるASEAN向け輸出の割合も上昇傾向にある(注5)。ASEANは中国依存度を低める上で、切り札になり得る地域といえよう。 中東については、尹大統領は2023年1月に早速、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問。経済のさまざまな分野で、両国が協力していくことで合意している(2023年1月18日付ビジネス短信参照)。ただし、中東向け輸出が輸出総額に占める割合は2.6%(2022年)にすぎない。その存在感が急速に高まることは期待しづらいだろう。

  6. 有力輸出品目の育成
    産業通商資源部は2022年8月31日、「輸出競争力強化戦略」を発表した。この戦略で、前述の原発、防衛産業、プラントの3業種について「大規模輸出プロジェクトの成果を上げる」と、決意を示している。同時に、「主力産業で他国との技術格差を維持する」「バイオ医薬品、車載電池、消費財などの輸出有望産業の成長を支援する」と記載。原発、防衛産業、プラントとともに、これらの業種の輸出を強化する考えだ。
    とはいえ、新しい輸出品目を育成していこうというのは、尹政権になって初めて打ち出された政策ではない。例えば、産業通商資源部が毎年、年初に発表する前年の輸出入実績(速報値)をみると、2020年以降は主力の15品目(注6)の輸出入実績とともに、「新規有望3品目(有機EL、ソリッド・ステート・ドライブ、マルチチップパッケージ)」「5大有望消費財(農水産食品、化粧品、ファッション・衣類、生活・乳児用品、医薬品)」の輸出入実績が別途、掲載されている。それ以前にも、品目に若干の違いがあるものの、輸出有望品目が別掲されていた。こうしたことからも、新規品目の輸出拡大を目指した歴代政権の姿勢を垣間見ることができる。
    にもかかわらず、近年、主要輸出品目には変化があまりみられない。実際、韓国の主力輸出品目(韓国独自の分類体系のMTI3桁ベース)の変遷をみると、2000年以降はほぼ同じ顔ぶれだ(表参照)。意気込みがあっても、実際に有力品目に成長させるのは難しいということだろう。
    尹政権も、このことに危機感を持っている。そこで打ち出されたキーワードが「産業大転換」だ。産業通商資源部は2023年1月26日、「産業システムの根本的改善のための産業大転換を本格推進」と題したプレスリリースを発表した。これは、「産業大転換フォーラム座長会議」の第1回会議の結果をまとめたものだ。この会議は、2023年上半期に発表予定の「産業大転換戦略」策定に当たって設けられた。会議では政府や専門家、経済団体の関係者が参加・議論した。
プレスリリースによると、「産業大転換」の必要性について、参加者から次のような見解が示された。
  • 2000年代以降、韓国の産業は「失われた20年」に陥っている。主要輸出品目に変わりなく、新しい主力輸出産業が育たなかった。
  • 半導体などを除いて、主力産業が中国企業の追い上げに直面している。特に中国市場では、半導体メモリーなどの限られた品目だけが、かろうじて競争力を保っているにすぎない。
  • 10年後の主力産業の姿が見えない。このままでは、韓国経済は現在の水準で停滞する。産業立国の地位を失いかねない。
韓国政府の思惑どおり、産業構造は転換されるのか、また新たな有力な輸出品目が生まれるのか。今後の政策が注目される。










韓国の輸出不振、他の国々より深刻だった

2023-03-20 14:54:36 | 日記
韓国の輸出不振、他の国々より深刻だった

2/16(木) 7:49配信

貿易協会「輸出不振の原因診断と対応方向」 輸出減少幅、中国、日本、ドイツより大きく 半導体業況、下半期以降に改善の見通し



 輸出実績不振の流れが続いている。

1月の輸出が昨年同月に比べて16.6%減少したのに続き、
2月に入っても10日までの1日平均輸出額が昨年同期より14.5%も減少した。

輸出の低迷は貿易赤字の累積につながり、韓国経済の最大懸案に浮上している。

韓国政府は「最近の輸出不振は主要輸出国で現れている共通の現象」だと説明するが、韓国の輸出不振は他国よりもさらに深刻であることが分かった。

  韓国貿易協会は15日、ソウル江南区(カンナムグ)のCOEXで開催した「最近の輸出不振の原因の診断と対応方向」説明会で、「輸出減少幅を考慮すると、韓国の輸出不振が相対的に大きい状況」だと明らかにした。

輸出上位6カ国のうち、韓国、中国、ドイツの輸出が昨年第4四半期から減少傾向に転じており、そのうち韓国の輸出減少幅が最も大きい。

昨年第4四半期の韓国の輸出は、対前年同期比9.9%減少したのに比べ、米国は8.2%、イタリアは3.3%増加したことが明らかになった。

中国(-6.9%)も減少傾向を示したが、韓国よりは幅が小さかった。

日本とドイツはそれぞれ-4.6%、-1.9%を記録した。
今年1月の輸出実績においても韓国は日本(-15.8%、1~20日基準)を下回った。

  韓国貿易協会のチョン・マンギ副会長は、同日の説明会で「韓国の輸出産業が景気変動に敏感な中間財中心の品目群で構成されているのが主な原因」だと説明した。

貿易協会の分析の結果、昨年第4四半期の総輸出減少額175億ドルのうち、150億ドル(85.7%)が中間財の輸出減少から始まった。地域別には、生産基地である中国(-17.8%)とベトナム(-10.7%)への輸出が大幅に減少した。品目別には、半導体-44.5%、ディスプレイ-36.0%、鉄鋼-25.9%、石油化学-25.0%などだ。

半導体1品目の輸出減少が総輸出減少額の半分以上(52.4%)を占めた。

半導体輸出の不振は、景気萎縮の見通しに伴う投資需要の減少に非対面需要の減少が重なったためと分析された。 

 昨年10月以降、輸出量と単価が同時に減少したことも輸出実績を引き下げた要因に挙げられた。

輸出量が前年同期に比べて3カ月以上連続で減少したのは、コロナ禍の2020年4~8月以来初めてであるほど異例のことだ。

貿易協会は、昨年第4四半期の輸出減少(-9.9%)を物量要因と単価要因に分解すると、物量要因が55%、単価要因が45%を占めると明らかにした。

半導体の場合は、第4四半期の輸出額が25.8%減少した一方で輸出量は4.8%増えており、輸出減少額のかなりの部分が単価下落(約30%)によるものと分析された。

  貿易協会は半導体輸出の回復時期を今年下半期以降と見込んでいる。 ガートナーなど主な市場調査機関で、メモリー半導体の業況改善の時期を今年第4四半期(DRAM)や来年初め(NAND型フラッシュメモリー)と予想していることに基づいている。

貿易協会は「モバイルなど前方産業における需要の減少と在庫累積などを考慮すると、単価回復には相当な時間がかかるだろう」と見通した。

ただし、「半導体輸出量の増加と中国のリオープン(経済活動再開)の効果で単価が回復した場合、半導体輸出に弾みがつくだろう」と明らかにした。 

 貿易協会は輸出不振が上半期中を通して続くと予想した。

上半期中に世界景気の下落傾向が続き、交易量の回復が限られるという見通しに基づいている。

貿易協会は「中間財中心の韓国の輸出は、経済危機のたびに世界交易の流れに伴って大幅に騰落してきただけに、今年も中国経済の回復力、ロシアとウクライナ戦争事態の沈静化など対外環境の変化で弾力的な回復傾向を示すだろう」と明らかにした。

 長期的には「輸出産業基盤の維持のための出生率の向上」が重要だと付け加えた。