造形のこだわり Part.4
敵に向かって吠えている姿勢
■川北監督に教えていただいた事
今回「ファイナルゴジラ」の造形で最もこだわったのは、姿勢です。
しっかり足を広げて、対象(敵怪獣や轟天号等)に向かって轟くように力強く吠える様子を表現したいと思いました。
スリムに見えがちのこのゴジラを、少しでも力強く見せたいと言う意図もありますが、劇中での特に印象深い代表的なシーンでもあるからです。
今までも口をあけて吠えているイメージの造形のゴジラをいくつか作りましたが、今回このポーズのゴジラを作るにあたって、これまで作ってきたゴジラ達に比べて若干作り方を変えてみた所があります。
例えば足の開き。今まで作ってきたゴジラ達に比べれば、足の幅を広めの位置に作りました。劇中でもスーツの軽量化だったり、アクターさんの芝居だったりの影響かと思いますが、足を広く構えている印象があり、広く開いた方がやはり力強さは出ます。
背中のラインの角度にしても、吠えている感じにするため、吠えていない状態よりは少しだけ後ろに重心がかかるのを意識して作りました。若干、尻尾にも重心がかかっている雰囲気も出したかったのです。
同様に首のから背中にかけての角度等も、吠えている時と、吠えていないやや前屈みの時の状態の時の差も何度も映像を見て確認して作っています。
4~5頭身のディフォルメですから限界はありますが、可能な限りこれらの姿勢についてはこだわってみました。
この相手(敵)に向かって吠えるゴジラの姿勢については、以前川北紘一特技監督と2人で話をさせていただいた時にいくつか教えていただいた事があるのです。ですから今回の姿勢のこだわりについてはその影響が大きくあります。
監督が手掛けられた「平成VSシリーズ」のゴジラ6体は外見上はかなり近いゴジラ達ですが、動くための作りやその動き方は作品ごとに全く違うものとして作られたそうです。
例えば対ビオランテ戦。ゴジラは基本的にビオランテの真正面に立って吠えたり熱線を放射します。当然そのための動きができるようにスーツのギミックも仕掛けられて内蔵、コントロールされます。表面の皮に当たる部分も口を閉じている時と開けた時もそれぞれ自然に見えるように考えられているのです。
が、次の対キングギドラ戦ではゴジラスーツ自体はほぼ流用であるにもかかわらず、口の開き方が大きく変えられたそうです。キングギドラは空からの攻撃もあり、首等の動きも多く、ゴジラとの格闘戦もあります。ビオランテ戦のようなゴジラの口の動きでは無理が出るため、口の開く角度を広くし上をより見上げられるようにし、さらに首から上の全体の動きも前とは違うように起動させていたそうです。
さらに次のモスラ戦、バトラ戦では基本的に相手が常に空中ですので、さらに見上げられるようにまた変えられたのだそうです。
つまり作品ごとに、相手(敵怪獣等)、目的によってゴジラの動き方も変えられているのです。カメラワークや演出、撮影スタジオの広さ等も計算に入れての事です。全作違うのだそうです。当然それによってゴジラスーツの首から上の皮に当たる部分の流れ、凹凸具合にも変化があるわけです。口の開き方でゴジラの顔自体の見え方が変わると言う事です。
そういう所にも徹底してこだわって映画が作られている事が良くわかります。
ゴジラファンにとってはとても深い話で、とても貴重なお話をしていただいたのですが(幸せです)、それ以降はゴジラ作品の映像を見てもその動きや口や首が動くたびにその外見の変化も意識して見るようになりました。
今回の「ファイナルゴジラ」は、そのお話をしていただいた事がとても参考になりました。感謝してもしきれません。
(2011.1.8更新)
「ファイナルゴジラ ブラックバージョン」は完売致しました。ありがとうございました。