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ダンゴムシ

2017-06-08 14:13:37 | お話
12🐛ダンゴムシ🐛


長い人生の中では、誰しも壁にぶつかる。

夢と現実、仕事と恋愛、環境と報酬。

ある人はその壁に絶望し、

ある人は引くに引けなくなり、時間を消費してしまう。


🐛ダンゴムシ🐛


植木鉢や石の下といった暗い場所を好み、

つつくと丸いボール状になって身を守る。

この小さな甲殻類は、壁に当たったときのヒントをくれる。

ダンゴムシをボール紙などで作った迷路に入れてみると、

ある一定の法則で動いていることがわかる。


ダンゴムシは進行中に壁に当たった場合、

左右どちらかに曲がる。

曲がった先で、また違う壁に当たった場合、

前回曲がったのとは反対の方向に曲がるのである。

この性質を

「交替性転向(こうたいせいてんこう)反応」といい、

ダンゴムシのほかに、ワラジムシや精子などに見ることができる。

同じ方向に曲がり続けていると、

元の場所に戻ってしまう可能性が高いのに対し、

「右に回ったあとは左、

左に曲がった後は右」

と繰り返して進んでいくと、元いた場所から、より確実に遠くにたどり着くことができる。

この交替性転向反応は、

天敵から逃げるための本能だと考えられている。

壁にバカ正直にぶつかるのも人生。

しかし、そこで立ち止まり続けてしまうのであれば、

別の場所に向かうことも、また人生である。

別の道に進んだとき、

また同じ過ちを繰り返さなければよいのである。


🌸ウィルスに乗っ取られたダンゴムシ🐛🌸

ダンゴムシはムシと呼ばれるものの、昆虫の仲間ではない。

むしろ、エビやカニに近い甲殻類だ。

無秩序に生えてるように見えるたくさんの脚は、基本的には7対14本だ。

(しかし、生まれたときは6対12本しか脚がなく、脱皮の過程で増えていく)

よくワラジムシとの見分け方が話題にのばるが、ワラジムシの中で丸くなるものをダンゴムシと呼ぶ。

エビやカニの仲間だが、水中で暮らすことはできない。

身近で1番見かけるオカダンゴムシはオスが完全な黒から灰褐色をして、メスは背中に黄色い斑点が見られる。

さらに確実の見分け方として、オスの腹部には2本の突起が見えるが、メスにはない。

これは生殖器ではなく、脚が変化したものだが、

交尾のときには、この複肢と呼ばれる突起を伝って精子を送り込む。

ダンゴムシの仲間の交尾はすべてメスが脱皮したタイミングで行われる。

身体を大きくするための成長脱皮に対して「生殖脱皮」と呼ばれている。

ダンゴムシは卵や子供を保育嚢と呼ばれるお腹の袋で育っているため、

身体を生殖モードに切り替える必要があるのだ。

ところで、ダンゴムシの中には、たまに青い身体を持った個体が見つかる。

新種や突然変異などではない。

原因はウィルスである。

「イリドウイルス」というウイルスに感染したダンゴムシは体色がメタリックブルーに変わるのだ。

なぜ青い色になるかというと、体内に蓄積したウイルスの結晶が青い光のみを反射するからだと言われている。

通常のダンゴムシは暗い場所を好むが、イリドウイルスに感染すると明るいところに出てくる。

青いダンゴムシは遠くからでもよく目立ち、鳥などの天敵に捕食されやすくなる。

ウイルスはダンゴムシごと鳥に食べられて、鳥の糞を通して拡散していく。

このように、寄生虫やウイルスなどが宿主の身体を動かしたり、姿を変えたりして、食べられやすくする例は他にもある。

有名なのがロイコクロリディウムだ。

この寄生虫は、カタツムリの目に寄生し、

カタツムリの目を太った緑色のイモムシのような形に変え、捕食されやすくする。

当然、人間だって無関係ではない。

人間の体内に必ず生息する腸内細菌も、人間の行動を変える力を持つと言われている。

体内の腸内細菌の種類や数が変化することによって、

怒りっぽい人が急にやさしく社交的な性格に変わったりする。

マウスの実験では腸内細菌の移植によって、性格を変えることに成功し、

うつ病や気分障害の治療に期待が持たれている。

人間にとってはありがたい話だか、細菌の立場としては、

単純に宿主である人を関わらせることによって感染の機会を増やして、

生息地を広げようとしているだけだ。

それもまた、自然の摂理である。


🌸ダンゴムシの豆知識🌸

・エビやカニの仲間(甲殻類)なので毒のないものは非常食になる。
(ただし、美味しいとは言いがたい)

・漢方薬として用いられることもあり、生きたダンゴムシを潰したものはイボの薬に、

乾燥させたものは利用促進の薬として用いられた。


・食べ物が口から摂取するが、水分はお尻から摂取する。

・明治時代に外国からきた貨物に紛れて日本にやってきて爆発的に広まった。

・交替性転換反応は左右の足への負荷を均等にする目的もあると考えられている。


(「LIFE 人間が知らない生き方」麻生羽呂、篠原かをりさんより)

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