今日は病棟看護師さんたちとの勉強会がありました。お題は「せん妄と認知症」なのですが、せん妄でレクチャーした要点についてのせたいと思います。以下の概要を事例やQ&Aを交えながら行いました。
★せん妄とは?
急性に発症し(通常数時間から数日)、意識・注意・知覚の障害が出現し、日内変動を示す精神症候群。
★どれくらいの患者に起こるのか?
内科患者の10~30%
末期がん患者の30~50%
(最後の数日は80%以上)
★せん妄の分類(過活動性せん妄と低活動性せん妄についての説明を表で行った)
★せん妄の対処法(くすりは有効か?)
眠剤はせん妄をむしろ悪化させる。
抗精神病薬(セレネース・リスパダール・セロクエルなど)も、むしろ予後を悪化させる。
(過活動性せん妄を低活動性せん妄にすることはできるが・・・)
身体抑制により、せん妄のリスクはむしろ増す。
薬・抑制とも、当然、実務上必要なことはあるが・・・害も大きい以上、慎重に行うことが必要
非薬物療法が基本!
★せん妄の予防にあたって(素因と誘因)
①素因
認知症(2.3~4.7倍) 機能障害(4.0倍) 視力障害(2.1~3.5倍) アルコール多飲(5.7倍) 75歳以上(4.0倍)
②誘因
眠剤(4.5倍) 抑制(3.2~4.4倍) 膀胱留置カテ(2.4倍)
★せん妄に対する予防的介入
①素因からリスクを評価し、誘因をできるだけなくす。
(不必要な管・薬は使わない)
②そのうえでリスクが高い人には予防的介入。
③予防的介入(病院でせん妄を予防するコツ)
1.眼鏡・補聴器・義歯を病院に持ってきてもらう。
2.患者さんのお気に入りを病院に持ってきてもらう。(写真・毛布・本など)
3.患者さんに指示を出す際は1つにする。(過剰刺激しないように)
4.患者によってはマッサージは落ち着かせるのに有効。
★せん妄におけるピットフォール:身体不調によるせん妄を見逃さない!
せん妄を起こす身体状況
低血糖 低酸素血症 CO2ナルコーシス 感染症(特に敗血症) 脱水 便秘
基礎疾患や経過・バイタルサインが重要
★まとめ
せん妄には低活動性せん妄もある。
薬剤・身体抑制が、せん妄の誘因となったり、悪化につながることもある。
非薬物的な介入が第1選択である。
身体不調によるせん妄を見逃さないように、気を付ける必要がある。
このお題は看護師さんたちからのリクエストなのですが、高齢者が多く入院する病棟ですのでその中で困ったり、大変な部分なんだろうなあと感じながら資料も作りました。資料作りながら・・・難しいなと思いました。というのも、どうしても一般論になってしまうからです。非薬物療法が前提であり、抑制なんてもってのほかというのは看護師さんたちも頭ではわかっていても、実際に病棟でせん妄が起こった際の対処というのはすごく大変なのだろうなと思います。そのようななかででは実際にどうやるか・・・というのが重要だよなと思いました。今回のレクチャー内容は、前提の確認という意味ではよいのかもしれませんが、「実際にどうするか」という意味では実践に生きる内容ではまったくなかったと思います。内容についても反省ですね・・・。30分という時間でしたので今回は難しいですが、「実際にどうするか」というのをシナリオベースでグループワークしたりするほうが、実践に少しは生きるのかなと思いました。