今日は先日、外山先生が勉強会でやってくれた内容を載せたいと思います。以前、ある先生の褥瘡治療の講演を聞いたときに、critical colonizationという概念を知りました。要は「感染」とまではいってないが、細菌が創傷治癒を妨げている状況のことをいうようです。今回、そのことについて調べてくれました。
<褥瘡critical colonizationの治療について>
•Kingsleyによる分類(Ostomy Wound Manage.2003)
①bacterial contamination ②colonization ③critical colonization ④infection
(つまり、「感染」と「定着」の間)
•日本褥瘡学会による定義(褥瘡会誌2010):
–「bacterial balance」創部の有菌状態を連続的にとらえ、その菌の創部への負担(bacterial burden)と生体側の抵抗力のバランスにより感染が生じるとする考え方
–「臨界的定着」は定着と感染の間に位置し、定着よりも細菌数が多くなり感染へと移行しかけた状態
•細菌量が治癒速度に影響:組織1gあたりの細菌数が105CFUを超えると褥瘡治癒が遷延(Bendy,1964)
•NPUAP/EPUAP/PPPIAによる褥瘡治療ガイドライン(2014)
–critical colonizationには局所消毒薬使用を考慮(弱い推奨)
–抗菌薬(antibiotics)の局所使用は推奨されない(副作用と耐性菌のため)。局所消毒薬(antiseptics)で細菌数を減らすことが重要視されている。ただし期間を区切って。
–ここで挙げられている消毒薬:ヨード化合物(ポビドンヨードなど)、銀化合物(スルファジジン銀など)、ポリヘキサニド、クロルヘキシジン、次亜塩素酸、酢酸。
•期間を区切って?・・・ AHCPRによる褥瘡ガイドライン(1994):2-4週間の治療で改善しない場合に1-2週間の消毒薬使用を試しても良い
•expert opinion:「臨床的に、膿汁排泄が続く過剰肉芽でなかなか上皮化が進まず治癒しにくい創。細菌の増殖が継続し、炎症が続いているような場合、創傷遅延をきたしたり、創感染を引き起こしたりする。このような創にステロイド軟膏や抗菌剤軟膏が著効する(クロマイP軟膏)。」
•慢性褥瘡に対するoxandrolone外用RCT→ ステロイドの効果なし(Bauman et al, Ann Intern Med2013)
ということで、正直よくわからないねということになりました。菌数を普段はかれるわけではなく、臨床的にどういうときにcritical colonizationを疑うかが重要なのかとは思いますが、そのあたりの詳細な記述は少ないようです。ある程度よくなってきたのに、なかなかある部分から治りが悪いときなどにcritical colonizationの関与を疑うという感じなのでしょうか。そのようなときに短期間ユーパスタやゲーベンを使うというのもありみたいですね。ただ、ゲーベンとか嫌う先生は嫌っていたりするし、抗菌薬含有の外用(クロマイPなど)を使うという意見もあったりしますし・・・。いつも思うのですが、褥瘡治療はなんでもありかなって思っちゃいます。自分たちなりのよい褥瘡治療のスタイルみたいなものをつくっていくのが大切なのかもしれないですね。そもそも褥瘡は処置方法以外(栄養やポジショニングなど)の部分が非常に重要だったりしますもんね。