今回は、朝の勉強会で調べた認知症のスクリーニングについてです。外来などで、どのような患者さんにスクリーニングをかければよいのか、どのスクリーニング検査を用いるのがよいのかなどについて調べてみました。高齢者の方、全例にスクリーニングをかけるのが有用とも思わないし、現実的には難しいですよね・・・。
<認知症のスクリーニングについて>
★Tsoi KKらのメタ分析(JAMA Intern Med 2015)
MMSE:感度81%・特異度89%
Mini-Cog:感度91%・特異度86%
ACE-R:感度92%・特異度89%
MMSEが最も根拠あり。 Mini-CogやACE-Rが代替となりえる。
★HDS-Rはどうなのか?
(日本特有ではあり、あまりエビデンスなし)
Kim KWらの報告(Dement Geriatr Cogn Disord 2005)
AD患者においてMMSEより有意にAUC高い(軽症AD患者でも)
Mini-Cogは短時間でやれるので、外来でもやりやすいですよね。メタ分析でも感度・特異度とも高いのである程度有用かなあと感じました。あと、慣れもあってなんやかんやHDS-Rをやることも多いのですが、日本特有のためエビデンスは少ないようでした。でも、あくまでスクリーニングということを考えれば、そこまで気にせず使用してもよいのかなと個人的には思いました。
★Screening for cognitive impairment in older adult: A Systematic Review for the USPSTF(Annals of Internal Med 2013)
①プライマリケアにおける認知機能障害のスクリーニングが意思決定や患者・介護者のアウトカムにどう影響するかを直接的に検証した研究なし
②スクリーニングによる心理的な副作用や偽陽性・偽陰性による副作用を直接的に検証した研究なし
③早期の認知機能障害(MCIや軽度~中等度)の治療の利益は、薬剤治療及び介護者への介入は、わずかにあるが、その臨床的意義は不明である。
⇒一般高齢者への認知症のスクリーニングは推奨しない
(2014年USPSTFのステートメント)
★Hendry KらのSystematic Review(Age Ageing 2015)
single screening question(「記憶力の低下があるか」、「思考能力の変化があるか」など)の有用性を検証
⇒感度26~96%、特異度45~100%
現在のところは不十分なエビデンスしかないと結論
★Chong MSらの報告(Int J Geriatr Psychiatry 2006)
「物忘れが進んだか」の質問の有用性を検証
2566例の一般高齢者を対象(Phase1):認知症診断への感度95.7%、特異度45.1%。
128例を対象(Phase2):質問noで、Abbreviated Mental Test(スクリーニングテストの1つ)をパスしない例はほぼゼロ。
⇒除外する質問としてはよいのか?
少なくとも高齢者全例にスクリーニングをかけるというのはエビデンス的にも推奨されていないのだなと実感しました(認知症のスクリーニングをかけることの害、早期に診断することの意義などは重要ですよね。早く見つければいいというものでは・・・)。では、どういう人にスクリーニング検査を行うのか? それに対する明確な答えは今回はなかなか見つかりませんでした。single screening questionはとっかかりとしてはよいのかもしれませんが・・・。スクリーニング検査を行う前段階として、どのようなときにスクリーニングを行うのか? 家族から認知機能低下の報告があればわかりやすいのですが、薬剤アドヒアランスの悪さに気がついたときや、予約日忘れが続くときなどは個人的には疑うようにはしています。事務の人などが気がつく場合もクリニック勤務のときにはありました。そのような観点からの研究などがあるのかは今回調べられていませんが、今後調べてみたいなと思いました。