今日のビッグニュースは、もちろん山中先生のノーベル生理学医学賞受賞決定です。
感謝そして責任という言葉が、受賞のインタビューの中で聞かれました。
昨年、山中先生のご講演をお聞きする機会がありました。ユーモアも交えながら、本当に誠実なお人柄の伝わるお話でした。その中で印象的だったのは、山中先生が、もともと整形外科の臨床医であったことです。そのときのごお話には出ませんでしたが、研究者を志したのは、そのとき重症のリウマチの患者さんに接して、難病の患者さんを救う手立てを研究したいと考えたのが理由だと伝えられています。
しかしはじめから研究者として、恵まれた環境が得られたわけではありませんでした。その当時は絶望して、うつ病になったと、ご自分でおっしゃっていました。奈良先端科学技術大学の助教綬の公募に応募して採用され、3人の大学院生(それも教授もいない弱小研究室を必死にアピールしてようやく入ってくれたとのこと)との小さなグループではありましたが、初めて自分のやりたい研究ができるようになり、iPS細胞(induced pluripotent stem cell)を開発しました。なお、iPSのiを小文字にするアイディアは、AppleのiMacやiPodからだということです。受精卵から作成するES細胞が、危険性や倫理に大きな問題があるのに比べ、皮膚の細胞からつくるiPS細胞は、大きな前進です。
その時のご講演で、もうひとつ印象的だったのは、一緒に研究した当時の大学院生を、現在も山中先生と一緒に研究を続けられている方から、結婚して研究者の道は選ばなかった方まで、ひとりひとり名前と顔写真を示しながら、自分だけの手柄ではない、むしろ彼らの努力こそiPS細胞を造ったのだと話されたことでした。手柄を独り占めしたがる人が多い中で、これは新鮮なお話でした。
また、ニュースでは、今年iPS細胞の作成技術の特許を、米国でも欧州でも京大が取ったとのことも伝えられています。これは、少数の企業がこの技術を独占して、患者さんのもとにこの技術の成果が届くのが遅れるようなことがないようにするのが、目的だそうです。山中先生は京大iPS細胞研究所長としての、ご自分の現在のお仕事は、研究者たちにビジョンを示すこと、そしてそのビジョンとは終始一貫して変わることなく、この技術を一刻でも早く、実際の患者さんの役に立つものにすることであると、今日のインタビューでも、話されていました。