何となく検査器械紹介シリーズになったので続けます。
このブログでもしばしば触れている、超音波検査です。と言っても、私は副鼻腔炎は専門でやってきましたが、超音波検査自体が専門ではありませんので、頸部の検査(甲状腺など)を行うこともときにはありますが、副鼻腔の超音波検査が主体です。
副鼻腔炎の診断や治癒の判定に、画像診断が必要なことは、しばしばあります。治療、とくに抗生物質は、できるだけ使いたくないし、使うべきときに使わず病気をこじらせるのもいやですが、症状と鼻内所見だけでは、正確に判定できないことが多いのです。だからと言って、とくに小児に、レントゲンを撮るのもいやです。開業したてのころの悩みでした。
悩んでいるときに、友人の上出先生から「小児科の先生から聞かれたのだけど、副鼻腔炎の超音波検査ってどうなの」という質問を受けました。上出先生は大学の同期であり、耳鼻咽喉科教室では、上出先生が中耳、私が副鼻腔の担当で、ずっといっしょにやってきました。同期ですが、開業医としても人間としても、上出先生の方がずっと先輩なので、いろいろ教えてもらっています。
20年以上前、副鼻腔専用のAモード超音波検査装置が発売されたことがありました。しかし、通常使われているBモード超音波検査が2次元画像として観察できるのに対し、Aモードは言ってみれば一次元です。とてもレントゲンのかわりになるようなものではなく、ほとんど普及せず、すぐに発売中止になってしまいました。私にはその悪い印象があり、大学病院にいると小児の副鼻腔炎を診る機会もあまりなかったので、超音波検査に興味を持たなかったのです。だからそのときには、上出先生の質問にも、きちんと答えることができませんでした。
しかし上出先生の質問で、もしかしたらBモードはいいかも知れないと気がつきました。小児副鼻腔炎の超音波検査については、20年以上前の基礎的なことについての文献と、長い空白があって、最近になって小児科の先生が書かれた報告数編があるだけで、詳しいことは全くわかりませんでした。そこで、超音波検査装置の会社の人にデモ機を持ってきてもらいました。
骨に囲まれ中に空気が入っている副鼻腔の超音波検査は、甲状腺を見るのとは異なる検査になります。正常の副鼻腔は全く見えないのです。副鼻腔炎になってはじめて副鼻腔を観察することができます。したがって、デモをしてもらっても、何も見ることができないはずでした。ところが、こんなことってあるのでしょうか、デモ機を持ってきてくれた会社の人が、その時たまたま急性副鼻腔炎になっていたのです!上顎洞のかたちが、くっきりと2次元で画像化されているのを見たときは、感動しました。
そして即、購入を決めました。使ってみた結果は、予想以上に良いものでした。現在では、超音波検査は、小児の副鼻腔炎の診察の一部となり、なくてはならないものになっています。
もちろん法人にした当初は節税のためという考えがあったのですが、よく考えると、最終的にはそれほど差がないようだというのは、以前書いたとおりです。