貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ブレスレット讃⑤ フォスフォシデライト

2021-09-21 19:51:59 | ややレア

厄介な名前で、なかなか覚えられないし発音できない。
フォスフォフォス……でなくて、フォフォスシデライト(ちがう)。
似たような名前でフォスフォフィライトというのもありますね。どっちがややこしいか。(どうでもいい)あちゃ、フォばっか見ていたらゲシュタルト崩壊起きてきた。フォッフォツフォッ(やめい)

このブレスレットをネットで見た時、衝撃でした。
何だこの色は?
しばらく唖然として、ぽちっ。
わりとお安うございました。2000円越えたけど。

ブツが来て手に取ってみても、
何だこの色は?!
見たこともない色だったのです。
藤色というか紫というか。
この色は不透明の石でしか出ないですね。

Phosphosiderite 斜燐鉄鉱。Fe3PO42H2O。鉄の燐酸塩ということになりますか。
ストレンガイト(Strengite、ストレング石)の同質異形(成分が同じで結晶形が違う)だそうです。ってその石も知らない。
ストレンガイトについてウィキには「比較的稀少な鉄リン酸塩鉱物。別名をBarranditeとも。ラベンダー色、ピンク色あるいは紫色を呈し、バリサイトに似ている」とありますが、ちょっと待てあちきの持ってるバリサイトは緑だぜ。
「ごく稀にガラスのような結晶で産出される」という説もあります(ガラスのような結晶というのはおかしいけど)し、「いや、単体では存在しない。石英との混合物だ」という説もあります。
でも、ある老舗ネットショップでは塊を売っていますから(チリ産)、石英混合説は間違いのような気がします。

わりと最近出回るようになったらしく、どうも情報が少ない。
稀少石がブレスレットになっている? しかもそれほど高くない。どうも一抹の不安がよぎったのでありました。まあ、他の石屋さんでも売っていたので、偽物(人工物)ということはないと思うのですが。
石もそれなりにムラがあって天然ぽいし。
まだ広く知られていないから安いのか。この色は装飾品には少し強すぎるのか。

しかし、美しいです。
こんな色があるものか、と。
ふと、妙な想像が湧き上がりました。
もし、昔々にこれがあったら。
古代日本だったら、国宝扱いで、これを舎利代わりに大寺院が建っただろう。
戦国時代の日本だったら、信長とか秀吉とかに献上して一国くらいもらえただろう。

そんな妄想が浮かぶくらい、珍しい、美しい色だったのです。
こんな色のものは昔の人は見たことがなかっただろう。
それを現代の日本では、あちきのような貧乏老人が手にできる。ありがたい。
そう、今は世界中の美しく珍しい石が、簡単に手に入るのですね。改めてそう考えると感無量。

磨き石とかは見たことがありません。まだ日本では知名度も需要もないのかな。
いろいろと謎だけれども、とにかく美しい。(しつこい)
まあ、紫のブレスレットはジジイが外にしていくには少しばかり勇気が必要だけれど。(まあ誰も見ないから気にすんな)


ブレスレット讃④ 氷の王女ラピスラズリ

2021-09-20 19:40:56 | 単品

ラピスラズリは「不動の石」というイメージ。なんとなく。
青く美しい。古来から珍重されてきた(歴史は面倒だから略)。
顔料にも使われた。高くて貧乏画家は使えなかった。フェルメール何たらかんたら。まあいいです。
人気は今も不動。

美しいは美しいんだよ。でも、何か頑として人を撥ね付けるところがある。
こちらが愛でようとしても冷たく嘲笑う。
そんな不動さもある。
氷の王女?

頑なに青。薄かったり白い模様が入ったりするものもあるけれど、それは「低級品」。
そして(非常にレアな結晶を除いては)透明度がない。光が石に入り込んで遊ぶということがない。
だから冷たい感じがするのでしょう。
たまにパイライト(黄鉄鉱)の微小鱗片が入って、ちょっとした「アベンチュレッセンス」(キラキラ)を披露するけれど、それは軽いお愛想笑いみたいなもの。
かくも一色で不透明という石はほかにあるでしょうか。(まあ黒いのがあるな)

あちこちで言われているように、ラピスラズリは一つの鉱物ではありません。
ソーダライト(方ソーダ石)グループのいくつかの鉱物からなっている。
・ラズライト(Lazurite 青金石)(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2
・ソーダライト(Sodalite 方曹達石)Na4Al3(SiO4)3Cl(こちらはグループ名でなく単独の鉱物名。ややこしい)
・アウイン(Hauyne 藍方石)(Na,Ca)4-8Al6Si6(O,S)24(SO4,Cl)1-2(え? アウイン入ってるの?)
・ノゼアン(Nosean 黝方石)Na8Al6Si6O24(SO4)(知らないw)
これらが「固溶体」をなしている、という見解と、そうではなく混合物だという見解があるようです。
「固溶体ですよ。結晶がちゃんと存在する」
「いや、それラズライトの結晶じゃね?」
アフガンあたりではラズライトのこともラピスラズリと言うらしい。こちら参照。
確かに、固溶体だったらもう少し結晶ものが多くてもいいような気がするけど、さて。

高いので高品質のものは買えない。コレクションケースの中に入っていると暗くて何だかわからない。そこで安ブレスレットで楽しむ。2000円をちょっと超えたくらいだったかな。
白い混じりものが入っているけれど、それが味わいがある。
屋内の光だと暗く沈む。けれど外で陽の光に照らされると驚くほどの鮮やかさを見せる。
氷の王女のめったにない微笑みかな。(ううう、かっこつけw)


ブレスレット讃③ 「わざとばらばら」

2021-09-19 20:02:17 | 漫筆


これはルビーインゾイサイト。1280円。
よく見かける緑のゾイサイトにルビーの斑点が入った石。
ゾイサイト(Zoisite 灰簾石 ソロケイ酸塩鉱物)は、おおむね緑の石で、青く澄んだものがタンザナイト、赤いものがチューライト(最初はこれが信じられなかったですねえ。全然違うじゃん、と)。緑のものはアニョライトとも。
ルビーインゾイサイト自体が、ルビーが大きく入っていたり、ほとんどなかったり、色が濃かったり薄かったり、とばらつきの多い石です。
で、それがブレスレットになると、いろいろな姿が楽しめる。わざとばらばら、ということでしょう。
中にはクリームソーダのような淡い緑の石もあって、それは特別な美しさがあります。

こちらはフローライト。1900円。
フローライト(蛍石 CaF)はものすごく多様な姿を取る石。
その様々な姿の一端を、こうやって「ばらばらブレス」にする。楽しくてきれいです。
フローライトは美しいものはとんでもなく高いですが、こういう安ブレスでその千変万化の一端が楽しめる。夏なんかは涼しげでいいです。

身を飾る高級ブレスレットは純粋で均質なビーズを揃えるものというイメージがありますけど、石を愛でる天然石ブレスレットはもっと自由。混じりものがあったり、ばらばらだったり、その多様さを楽しむというのは、とてもいいと思うのです。


ブレスレット讃② 安ブレスのばらばらの魅力

2021-09-18 19:58:26 | 漫筆

これも誠安さんで買ったもの。
アクアマリンですけど、なんと1400円。アクアマリンでこの値段は普通ないだろ。
要するにA級品でないものということでしょう。
ばらばらで、透き通るものでは色が濃かったり薄かったり。不透明なものでは白っぽかったり。
でも、それが面白いのですね。見比べてそれぞれの美を愉しむ。
不透明でも素晴らしい青を見せているものもある。透き通ったもので光にかざすと澄んで絶妙な色になるものもある。どれも本当に美しくて、このブレスレットはお気に入りなのです。
高級品になると品質はどんどん一様になるので、こういう芸当はできない。
安いものならではの楽しさではないでしょうか。

こちらはファントムアメジスト。なんと(それはもういい)1200円。
いや、ファントムというのは違うだろ、と思うけど、それは置いておいて。
内包物があったり色むらが激しかったりで、ばらばら。
これもそのばらばらが美しい。二つある透明なのは、昼の光で見ると、惚れ惚れする色です。これもまたお気に入り。

コレクションをするのなら、ケースの中にそれなりのものを並べたくなるでしょう。
でも、気軽に、いつも、石を楽しむ。それなら安いブレスレットもいいと思うのです。
ゴムが切れて四散するとか、ぶつけて割るとか、日光で退色するとか、ブレスレットというのは危険もありますけど、どこかで誰かが言っていましたが、「ブレスレットは消耗品。そう思って楽しむのがいい」のではないかな。


ブレスレット讃① ブレスレットは安い

2021-09-17 20:36:04 | 漫筆

ブレスレット。
安いです。もちろん高いものもたくさんあるけど。
原石とかタンブルとかより全然安い。

石を掘り出して、洗って、割って、丸く削って、磨いて、穴を開けて。それを二十個だか集めてゴムを通す。
それで、はい千数百円。へたをすれば500円なんてものもある。
何でそんなことが可能なのか。小さい石だから? 需要が多いから? よくわかりません。あまりわかりたくはない。

ビギナーにはありがたいです。
お手頃値段であるし、送料も安くて済むことが多いし(厚みがないからね)。
ああ、こういう石なのね、と親しむことができる。
磨き石とか原石とかを買うとけっこうな値段がするものが、手軽に楽しめる。

まあ、通の人にしてみれば、ブレスレットなんて外道かもしれません。
「樹脂加工ものだぜ」とか。(加工するんだから多少はしょうがないよね)
でも、石の美しさはそこにもある。

ブレスレットの最大の長所は、「しじゅう眺められる」ということ。
電車の中でも、物思いに耽るような姿勢をしながら、じっと石を見る。
ペンダントだとそうは行かない。胸元を見ようとすると首が折れる。(折れません)
コレクションケースに入れて、家に帰ってからごそごそ取り出して眺めるより、ずっと石に近くなれる。
混んで不愉快な電車の中でも、石を見つめていると静かな気持ちになれる。

男がブレスレットなんかするかよ、という非難もあるかも。
でも、今、けっこうしている人いますよ。
若い男がチャラチャラとひけらかすのはともかく、ジジイがひっそりとしていれば、ジジイなんか見る人はいないから、問題ない。いやそもそも何か思われようと、害悪を撒き散らしているわけではないから問題ない。(力むな)

誠安天然石というネットショップがあります。卸兼の大量販売安入り店。まあものすごく入荷が多い。よくこんなに売れるものだと感心する。
安いブレスレットがたくさんあります。しかも送料198円。
まあ、産地表記がどうたらとか、商品名がどうたらとか、セールストークがどうたらとか、少し「うむむ」というところはあるかもしれませんけど、偽物を売っているわけではない(鑑定能力などないので断言はできませんけど)。
気楽に買って、気楽に楽しむ。いいと思いますよ。

これはそこで買った「フェニックスストーン」という名前のブレスレット。1500円。
フェニックスストーンというのはどうもアメリカ流の商品名みたいで、正式な鉱物・岩石名ではない。クリソコラを中心にしたアゲートですね。クリソコラに石英が浸潤した「ジェムシリカ」という新種の高級品(むちゃ高い)がありますけど、その残り石じゃないかと邪推したりして。(邪推すな)
まあ名前がどうとか産地や組成がどうとかの硬いことは抜きにして、これはこれで美しい。いろいろな色の取り合わせと模様があるので、眺めていて飽きない。

こちらはティファニーストーンのブレスレット。セールでなんと1000円。
ティファニーストーンというのも鉱物名ではなく、アメリカのユタ州で採れる「オパライズド・フローライト」のこと。どういう経緯でかフローライトが崩れ、そこにオパール(非晶質石英)が浸潤したもの。他にカルセドニー、ロードナイト(赤)、ドロマイト、ベリル、カルサイトなどが含まれるとのこと。短波紫外線で蛍光する(こともある)。
だいたいはけっこう高い石です。いいブレスレットだと、白に紫の模様がたおやかに入っていて、数万円する。
これはまあB級品でしょうか。2つ3つ白と紫のA級品に似たものがあるけど。
でも、いろいろな色のいろいろな模様があって、とてもきれいです。男がしても案外問題ない。(さっき何と思われようととか言ってなかったか?)

安くても美しいと思えれば、それでいいのです(キリッ