貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

初心者にもありがたいネットショップ

2021-10-22 20:45:36 | 漫筆

まだ新米です。まだまだ新米です。(なんかえらく謙虚だね)
で、もっと新米でまだ籾の中に実が入っていない頃(ほとんど何も買ってない頃ということかい)、石の世界を知るのにえらく助かったネットショップがあります。
千葉は四街道の石屋さん「セルフクリエーション」さんのサイトです。この間創業30周年を迎えた老舗。
何度もここを見て、「はあ、こんな石があるんだ」と勉強させてもらいました。あ、ただ見ていただけではないですよ。

まずは、種類が多い。「こんな石があるんかい」と驚く。
まあ他にも種類の多いネットショップはありますけど、こちらは、見やすい。
左側に一覧があって、その文字を見ているだけでも楽しい。
デザインに凝って、どうやったら目的地にたどり着けるか戸惑うサイトも間々ある中、このシンプルさはありがたい。
よく知らない石があったらそこをぽちっとすれば、簡単な説明と一覧が出る。少し写真は独特だけれど。
この簡単な説明もありがたいですね。コアなお店だと「○○の結晶です」とかでおしまいとかよくある。まあそれはそうだけど、あまりに「まんま」だし、知ってるだろ、知らなきゃググりなさい、みたいな感じで、新米には冷たい。(まあ石屋さんも忙しいし)

そして、手頃な価格のものがある。立派な標本ばかり並べて「うちは○○円以下のものは扱っておりません」というような商売ではない。
普通はかなり値が張る石も、ミニサイズとかでお安く手に入れられる。美品追求よりもまずは広くいろいろな石を手元で楽しみたいと思うビギナーにはうってつけ。
これなんかは、透明性のあるサファイア。オーストラリア産。何と1000円。小さいけど美しい。

もちろん、高くて素晴らしい、あちきなんかが腰を抜かすようなものもたくさんあります。オパールなんかは腰を抜かしすぎて腰がなくなって福岡のうどんのようになってしまう(何だよそれ)ようなものがごろごろ。

あんまり商売っ気があるお店ではない感じ。SNSで発信はしていないし、ポイントとかはないし、クレジット決済はないし、送料サービスも三万円から。それだけ利薄な商いをしているということでしょう。実店舗の紹介文にも「ひっそりと」と書いてある。
石好きの方なんでしょう、商売人というよりは。石の紹介文にも時々、石への深い愛情がにじみ出ているようなものがあります。

あちきは高級品は買えないので上客ではありませんけど、このお店で買ったアイオライトは、あちきの「お宝中のお宝」になっています。こちら
ありがたいお店なので、紹介させていただきました。


バイキングの羅針盤 アイオライトかカルサイトか

2021-10-21 20:41:04 | 漫筆

よくアイオライトの説明のところに
「太陽に向けてまわすと色が変わる特質を利用して、北欧のバイキングはこの石を羅針盤として身に付けていた」
といった伝説が引かれます。
「んなわけねえだろ」と最初は思っていました。「商品を神秘めかして売ろうとしてるんじゃね?」「太陽の位置なんて人間の目でわかるだろうに。それに太陽がどこにあるかわかったって、どうやって方角を導き出すのさ」(お前性格悪いと言われるだろ)
ところが、どうも違う。
バイキングが活動するような地域では、厚い雲や霧のせいで、太陽がどこにあるかわからないことがあるらしい。そこで、石を使って「光の来る方向」を探り出す。

アイオライトの場合、ある種の石は、ある面を光の来る方向に向けるとほぼ完全に透明になってしまうことがあります。
あちきの持っているアイオライトの一つもそうで、横の面を自分に向けて、反対の面を光に向けると、ほとんど透明になります。
ところがそうやって持ったまま、光の大元ではない方向に体を回転させると、青い色が出てくる。
これ、結晶の「光学的異方性」による「方向変色」の現象で、光源-ある角度に固定した石-観察者が直線になった時に、石が透明に見えるわけです。
あくまで概念的に図示すれば、こういうことかな。

だから、特別なアイオライトを選んで、特別な角度がわかるようにカットして、それを目の前にかざして空を探れば、「光源」の位置がわかる。
本当かい、と思ってやってみました。曇り空で、アイオライトをかざして、ぐるぐると体を回してみる。
すると、確かに「太陽の位置」で最も明るく透明になるんです。
まあ日本ですから、普通の目でもぼんやりと太陽の位置はわかるわけですけど、もっと厚い雲や霧に覆われている時、石の透明さを微細に見分ける視力さえあれば、太陽の位置はわかるだろうと思われます。

太陽の方角と高度がわかったら、方位が分かるか。
正確な太陽高度情報入りの暦を持っていれば、方角も時刻もわかる。たとえば10月1日で高度が28度だったら、午前10時か午後2時(昼飯食ったかどうかくらいは誰でもわかるでしょう)、そして南の方向は○度左(右)とか。
ただしこれは緯度が一定だったらということ。大洋を航海していて緯度が変わった場合は、どうなるのか。正確な時計があればどうにかなるか。星の位置で緯度を割り出して修正するか。
……ちょっと文系のあちきにはわかりません。誰かおせーて。

そのあたりはよくわからないけれど、「石を羅針盤代わりにする」というのは、あながち神話ではない。アイオライトがバイキングにとって聖なる石だった可能性はある。

ところが、バイキングの羅針盤は「カルサイト」だという研究が、近年出ていました。AFP記事より抜粋。

《古代スカンジナビアの海洋民、すなわちバイキングたちは、太陽や星が[注:星は無理じゃね?]雲に隠れると謎の石「サンストーン(太陽の石)」を使って航海を続けたという言い伝えがあるが、これは単なる伝説ではないと主張する研究が発表された。
今から1000年以上前、羅針盤などまだ発明されていなかった頃、バイキングたちは故郷のスカンジナビア地方からアイスランドやグリーンランドへ向かって進み、さらに何千キロをも航海し、クリストファー・コロンブスに数世紀先駆けて北米にも到達していた可能性が高い。
恐れを知らないこの船乗りたちが、陸の目印や、潮流や波に関する深い知識を駆使し、太陽や星の位置を読み取りながら航海していた証拠はある。しかし、彼らがどのようにして、霧や雲に覆われやすい高緯度の北半球で長距離を旅することができたのかはこれまで謎のままだった。そこで語られてきたのが、「サンストーン」だ。
今回、仏レンヌ大学のギー・ロパール(Guy Ropars)氏率いる国際研究チームが、実験的証拠と理論的証拠を集め、その答えを見つけたと発表した。
バイキングたちはカルサイト(方解石)、別名アイスランドスパーと呼ばれる透明な結晶を使い、太陽の方角を誤差1度以内という正確さで把握していたと、研究チームは主張している。
その仕組みはこうだ。カルサイトの上部に点印をつけ、下からカルサイトを通してその印を眺めると、印はふたつあるように見える。次に、ふたつの印の濃さや暗さがまったく同じに見えるところまで、結晶を回転させる。それらが同じになった角度の時、上を向いている面が太陽の方向を指している。》
AFP/Laurent Banguet、2011年11月4日
(カルサイトの塊が沈没船から発見されたとかも書いてあります。)

アイスランドスパー。あるいはオプティカル・カルサイト。ミニ標本です。この写真、石が寝そべっているのかきりっと立っているのか、両方に見えて面白い。

ここで書かれている仕組みの説明はちょっとわかりにくい。
透明なカルサイトは「複屈折」を起こす、つまり向こうのものが二重に見える。その二重の像を比較する。たぶんこういうことだと思うのですが、

aとbは長さが違うが、cは同じ。距離が長いと像は霞む。霞みの度合いを正確に見分けられれば、cになる石の角度は決定できる、ということでしょう。
けれど、これちょっと「?」。直進してきた光は屈折しないのではないか。


よくわかりません。

ちょっとやってみようかと思ったけど、あちきの持っているアイスランドスパーは薄すぎて、とても無理そうなのでやめた。

アイオライトだったのかオプティカル・カルサイトだったのか。両方だったか。
本当に実利的なものだったのか、神話的象徴だったのか、それとも今の人間にはわからない神秘的現象があるのか。
そのあたりはわかりません。

石が起こす光学現象は面白いものですね。


アイオライトをめぐる迷走 ⑤「捉えどころのなさ」が魅力

2021-10-20 20:54:45 | 単品

一つ、不思議なことが。
最初に買った「あんこ色」のブレスレットなのですが、いつの間にか、少し明るさが増して、深い灰紫色に変わっているんです。断然美しくなっている。
最初は「安物ゆえの着色が褪せた」のかと思いましたが、着色の石だったら、透かして透明になったりはしないでしょう。
紫外線で退色したのかとも思いましたが、何度かつけて外を歩いていたとはいえ、それほど長時間日光に晒したわけでもない。
まったくわけのわからない話だけれど、まあきれいになったんだからいいや、とそれ以上の詮索はやめました。

かくして、アイオライトはあちきの最もお気に入りの石となりました。カット石は買わないという禁制を破って初めてのカットルースを買ったり、お手頃な原石があると買い込んだり。

アイオライトの魅力は、「捉えどころのなさ」かもしれません。
冴えない石だと思ったら、透過光で青く輝いたり、透明になったり。
七色の光点を輝かせてみたり、ひょっとした具合で妖しい赤を光らせてみたり。
「菫青色」や「方向変色」だったらタンザナイトも同じでしょうけれども、それとはちょっと違う。タンザナイトは安定して美しいですけど、アイオライトは美しいんだか美しくないんだか、なんともわけのわからないところがある。
その「わけのわからなさ」「捉えどころのなさ」が、魅力なのですねえ。

700円のブレスレットから始まったアイオライトとのお付き合いは、「お宝中のお宝」に辿り着いて、ひとまず終了。
お宝中のお宝をうっとりと眺めながら、変な考えが浮かびました。
石集めを始めたのも、冴えないブレスレットを買って首をひねったのも、カラーチェンジのことをあれこれ勉強したのも、「下から照明」を手に入れたのも、全部、この「丸玉」に辿り着くためだったのかもしれない。これ以上はもうない。

などと言いつつ、またあれがほしい、これがみたいと足掻くのでしょう。アイオライトにしても、もっととんでもない石がどこかに隠れているかもしれない。
さあ、どうかな。


アイオライトをめぐる迷走 ④究極の「カラーチェンジ」

2021-10-19 19:14:54 | 単品

四街道の「セルフクリエーション」さんのサイトは、いろんな種類のものがあるので、勉強がてらしょっちゅう見ているのですが、ある日、アイオライトの「丸玉」というのがあるのを発見。いや前からあったけれど見過ごしていたらしい。
説明では「夕焼けの空のような色が見える」とあって、ぽちっと。それほど高いものではなかった。直径13ミリ。

これを「下から照明の台座」に乗せてみると、愕然。

あちきのような新米がこういう言葉を使うのは不遜ですけど、これ、「究極のカラーチェンジ」ではないでしょうか。真っ黒に近い石が、青、緑、黄金、オレンジ、赤に染まる。

動画はこちら

しかもこのカラーチェンジ、バリエーションが理論的に言えば無数にある。球体のどの点が上に来るかで変わるわけですが、ちょっとでもずれれば景色は変わる。
仮に一つの円周を考えても、角度で一度ずれる点は360個。その円周がぐるりと球体を開店すると考えて、それも一度刻みで360個ある。一度ずつ変えていくだけで360×360=12万9600の「景色」が見えることになる。さらにそれを違う角度から見ると……切りがない。

もう何と言ったらいいのか。これはお宝中のお宝となりました。
いいコレクションはないのですけど、これだけは多くの人に見せたいなあなどと思うのです。


アイオライトをめぐる迷走 ③ブラッドショット・アイオライト

2021-10-17 17:47:43 | 単品

アイオライトへの興味が俄然盛り上がってきたので、以前から気になっていた「ブラッドショット・アイオライト」というものを購入。

これもまあ、不思議な石です。そのまま反射光で見ると、印象としては「なんか汚ねえ石だな」と感じる。
ところが、しげしげと見ると、表面の一部と少し奥に、サンストーンと同じきらきらしたかけらが光る。

そして、光に透かすと、ある方向で、ある部分が、赤く染まるのです。これが「ブラッドショット」とのこと。
それほどドラマチックに赤が輝くのではないですけど、実に不思議で美しい。

 

お店の説明だと、レピドクロサイト(鱗鉄鉱、FeO(OH))の微小粒子が含まれているとのこと。石が透明に見える角度になると、それが赤く光る。ただ、青か濃くて透明性があまりないところでは見えない。ということだと思われます。

磨き石で、表面のところどころにはレピドクロサイトらしき虹色鱗片が固まって輝いています。ちょっと姿は悪いけれど、なかなか見所の多い石です。



(「ブラッドショット・アイオライト」を「内部に含まれたヘマタイトの細片が赤く輝いて見えるもの」と説明しているお店もあります。それだと「アイオライト・サンストーン」の一変種ということになりますかね。まあ、石の商品名は厳密でないところもあるので、そういうのもあるのかもしれません。)

(ツイッターに動画を上げました。こちら。)