「不機嫌」 ・３枚目の絵・

やわらかく赤みを帯びた乳房 女は両足をひろげぼくを迎え入れる いいのよ とつぜんに朝がやってきて 天井をみつめた 目の前には見慣れたいつもの風景 こんな日は往々にして不機嫌なものだ 朝から電話のセールスがしつこく 自動販売機では釣り銭を忘れ 小石につまずき膝をすりむくオマケまで付いている 現実とはこういうもので 考えてみれば ぼくの日常が今さら飛躍するわけもない 　　春うららかに　　　　　　 　　　夢から醒めて　　　　 　　　　小石つまずく 下手な一句まで口から出てしまい おもわず苦笑した

「母とあじさい」・２枚目の絵・

ある日 母が足が痛いと言いはじめた もうじき齢８０歳 多少のガタは仕方がないさ 東洋はりに通いだして落ち着いたと思ったら 今度は腹がおかしいと言いはじめた 今まで風邪ひとつもひかないほどの頑丈さ この歳になれば病気のひとつやふたつは ハンドバックのような必需品さ いちおうすぐに病院に連れていき 検査をしたら異常なし あら　よかったね 気が晴れたのもつかの間 次の日にはまた足が痛いという どう痛いのかと聞くと腹がおかしいと言う どのあたりがおかしいのかと聞くと 足が痛くてもう動けないと言う 救急車を呼ぶかと聞くと みっともないから止めろと言う やっと治まったかと思ったら また腹がおかしい やれ飲み薬のせいだイライラする 眠れない足が痛いの繰り返し ふだんは気の強い母がこんなにうろうろして でも声だけは元気 息子のぼくもあきれるというかちょっとお手上げ とりあえず玄関にあじさいの花一輪飾る もうすぐ母の日だからね

「領分」・１枚目の絵・

おとなになりたいと子供がいう 子供のときが楽しかったとおとなが振り返る おとなはズルイと子供が家出をする 今どきのこどもは理解出来ずとおとなが酒をのむ それぞれの立場で言いあって パネルディスカッションなんかもして たかだか１０年２０年早いか遅いかだけなのに いつか子供はおとなに おとなは子供に近づいて 結局おとなか子供かどうでもいいような時代がやって来る それでもやっぱり 自分がおとなか子供かが気になって 引っ張ったり押し合ったりしている

制作に向かう

１０時起床。
ヨーグルトと牛乳を飲み、１１時に机に向かう。
こうやって絵を描くのは久しぶりのことだ。
パレットの絵の具はすっかり固まっている。
散らかり放題だ。
日頃の怠けぶりが分かる。

天気もいい。
今日はいつもよりもいい気分だ。
なんだかワクワクしてきた。