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詩画集「すてきな時間」自作詩を語る

 自作詩について、いろいろ説明するのは、苦手だなと感じます。
詩は読み手によって、感じるように読んでもらえば良いわけで、
わざわざこういう意味ですという、説明を加える必要はないし、
なにより、作者自身が、自分の詩の良し悪しについてよく分かっていない、
というのがいちばんの理由です。

 新刊「すてきな時間」に収められている10編の詩の中で、
どの詩があなた(作者bell)はいちばん気に入ってますか?と聞かれたら、
どれも読み返したくないくらい、出来れば触れたくないくらいの気持ちなのですが、
しいていえば次の詩を掲げます。
この詩はいちばん巻末に、やや地味目に掲載してあります。

「気象予報士」

「雨が降り、海に流れて蒸発して、
また雨や雪になる。
これが水の循環なんですけど、
地球全体の水の量っていうのは、
ずっと変わらないんですよね。
だからいま降ってる雨は、
恐竜時代に降った雨とおんなじなんですよ」

頭の禿げかかった中年風の気象予報士は
抑揚をつけるでもなく
淡々とした口調でそう語った

ぼくはとたんに
古代へタイムスリップする
今日の雨は
ステゴサウルスの背びれの匂いか

 一連は、テレビから流れる中年風の気象予報士が発した言葉の引用から始まります。
ぼくがこの言葉を聞いたとき、「あ、そういうことか!」と、
なにかを発見したような感動を持ちました。
雨が蒸発してまた雨になって降ってくる、
というのは当たり前といえば当たり前なのですが、
これが恐竜時代から、増えもせず減りもせず、
同じ分量が、繰り返し行ったり来たりしながら、
循環だけを繰り返して続いてきた、ということが驚きだったのです。

 おそらくそれはもっと以前、地球創世記から、続いていたはずです。
地球に生きる生物、人間は、絶えず変化し、
生と死を怖れ、迷ったりして生きているのに、
自然は地球の中だけで、何億年も循環を繰り返してきた。
もしかしてこれは輪廻転生にも通じているのではないかと、
ふと思ったのです。

 二連目は、そういうことを学問的に当然のように話す気象予報士です。

 そして三連目で、
そういう自然の営みのスケールの大きさに気が付いたぼくの驚きを、
「今日の雨は
ステゴサウルスの背びれの匂いか」
という2行に表してみました。 

 ちなみにこの詩は、始めは「タイムスリップ」という題名だったのですが、
カタカナでは映画タイトルみたいで、叙情が損なわれていると感じたので、
ふつうに「気象予報士」に変更しました。

 それから「ステゴサウルス」とは恐竜の名前ですが、
サウルスなのか、ザウルスなのか、よく分からなかったので、
英語では「Stegosaurus」になっていたので、濁点なしのサウルスにしました。

すてきな時間―詩画集より。 アマゾンで発売中。
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