ソクラテスは「クリトン」において「いちばん大事にしなければならないのは生きることではなくて、よく
生きることである」と語っている。この「よく生きる」という言葉は「正義(ただ)しく生きる」と混同し
てはいけないと本書の訳者は説明している。「よく生きる」を日本語らしく言い直せば「よい生き方をする」
で「充実した生き方」もしくは「幸福に生きる」ということで、直接「正義(ただ)しく生きる」を意味し
ない。勿論「よい生き方」の解釈は個人個人によってそれぞれで、正義に従って生きる人もいれば、不正を
してもそれが自分にとって利益になると考える人もいる。このことを踏まえたうえでソクラテスはクリトン
との言論において、「よく(幸福に)」と「正義しく」は同義であるとクリトンと同意する。
さらにソクラテスは「不正を行うことは、すべての場合において、不正を行う者にとって害悪であり、恥辱
である」と語る。一般的に不正は「不正をされる人とって」害悪であると考えるが「不正を行う人にとって」
こそ害悪であると言うのだ。現代に生きる権力を持つ全ての人に改めて読んでほしい。
文庫本で236ページとそれ程厚みのない本ですが、ページをめくるたびに登場する言葉群に考えさせられ、訳
注に飛び、さらに文章に打たれた番号を元に読み戻すという作業で読破に時間がかかりました。それでも長年
古典として読み継がれた本書は、今でこそ読むに値するものと思わされます。
ソクラテスの弁明・クリトン プラトン 三嶋輝夫・田中享英 訳 講談社学術文庫
生きることである」と語っている。この「よく生きる」という言葉は「正義(ただ)しく生きる」と混同し
てはいけないと本書の訳者は説明している。「よく生きる」を日本語らしく言い直せば「よい生き方をする」
で「充実した生き方」もしくは「幸福に生きる」ということで、直接「正義(ただ)しく生きる」を意味し
ない。勿論「よい生き方」の解釈は個人個人によってそれぞれで、正義に従って生きる人もいれば、不正を
してもそれが自分にとって利益になると考える人もいる。このことを踏まえたうえでソクラテスはクリトン
との言論において、「よく(幸福に)」と「正義しく」は同義であるとクリトンと同意する。
さらにソクラテスは「不正を行うことは、すべての場合において、不正を行う者にとって害悪であり、恥辱
である」と語る。一般的に不正は「不正をされる人とって」害悪であると考えるが「不正を行う人にとって」
こそ害悪であると言うのだ。現代に生きる権力を持つ全ての人に改めて読んでほしい。
文庫本で236ページとそれ程厚みのない本ですが、ページをめくるたびに登場する言葉群に考えさせられ、訳
注に飛び、さらに文章に打たれた番号を元に読み戻すという作業で読破に時間がかかりました。それでも長年
古典として読み継がれた本書は、今でこそ読むに値するものと思わされます。
ソクラテスの弁明・クリトン プラトン 三嶋輝夫・田中享英 訳 講談社学術文庫