よしーの世界

好きな神社仏閣巡り、音楽、本、アートイベント情報を中心にアップします。

ボーン・コレクター   ジェフリー・ディーヴァー

2022-06-10 07:09:11 | 
ジェフリー・ディーヴァーを初めて読んだのが「ウォッチメーカー」でした。ジェットコースターのよう

な展開ながら、ち密な構成にハラハラドキドキ、長編を苦も無く読み切ってしまった。そして本作品が四

肢麻痺の天才犯罪学者リンカーン・ライムと美しい元モデルの巡査アメリア・サックスがコンビを組んで

活躍する最初のものだ。映画化もされている。


居丈高なライムに「嫌な奴」と反発を覚え、反抗しながらも次第に鑑識としてライムの手足となり、重要

な遺留品捜査に才能を発揮するサックスの現場での動きはスリル満点。さらに現場に残された僅かな繊維、

極小の鉱物などから犯人の手がかりを読み解くライムの頭脳には本当に驚かされる。その頭の中には歴史、

地理、地質、心理学とあらゆる分野の知識が詰め込まれていて、必要に応じて引き出しから取り出さられ

る。それらを総動員して犯人に迫る工程が非常に説得力がある。


四肢麻痺の障碍者として思い通りに動くことが出来ずに悩み、絶望し自殺願望を持つライムと、傍からは

完璧に見られながら自傷行為に走るアメリア・サックスの心の葛藤が中心に描かれているが、元ジャーナ

リストの作者はリアルな現実感をもって描き切る。実際ニューヨークの今そこで起きていても不思議では

ないと思ってしまう。姓、もしくは名の呼び方で登場人物の微妙な心理を浮き立たせる手法が見事。


障碍者特有の我儘を発揮するライム、美貌をコンプレックスに感じながら冷静に鑑識に勤しむサックス、

いつも皺くちゃなシャツの敏腕刑事ロン・セリットー、髭剃りが苦手なジェリー・バンクス、ライムの

細かな指示に適応できる鑑識のメル・クーパー、ライムと丁々発止のやり取りで支える介護士のトムと

事件を解決に導くチームが素晴らしい。


完璧な「ウォッチメーカー」の犯人に対して、本作品の犯人の設定は少しだけ不満だ。それでもストー

リーの破綻はなく、どんでん返しの連続につい夜更かしをしてしまう程面白い。シリーズの他の作品も

読みたい。


  ボーン・コレクター(上・下)   ジェフリー・ディーヴァー    文春文庫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする