よしーの世界

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2円で刑務所、5億で執行猶予   浜井浩一

2023-02-25 07:57:47 | 
日本のテレビのニュースは日常的に事件を取り上げ、危機感を煽るので、犯罪件数自体が増えている

気になるし、犯罪が凶悪化している印象を受けてしまう。そして更なる厳罰化を求める空気になって

しまう。しかし、殺人の認知件数を見ても1950年代後半をピークに一貫して減少傾向にあるのが

現実だ。これは他のメディアを見てもデータで証明されている。


小泉政権以降、日本の政治家は敵を造り、自分が抵抗する相手に戦いを挑んでいる様に見せる手法を

取ることが多い。国民は常に不安を抱くようになり、疑心暗鬼になり、思考停止を余儀なくされる。

誰かを叩くことに躊躇なく、権力の中枢に批判が向かうことはない。著者が指摘する「自己責任」と

いう言葉を頻繁に目にするようになったのも最近だ。「自己責任」と言ってしまえば、犯罪も貧困も

すべて政治や行政が悪いのではなく、個人のモラルや努力の問題に置き換えられてしまう。


日本では警察に検挙され、検察庁に送られる犯罪者は年間約200万人で、実刑になるのは3万人程

度、全体の2%に満たないという。そして受刑者の多くは無職、高齢、離婚していて社会基盤が脆弱

に人だと本書にある。現実には受刑者の4割弱が窃盗、詐欺で被害額が1000以下の万引きや無銭

飲食もかなり含まれているそうだ。


著者は「切り捨て型コンプライアンス社会」を脱却し、犯罪者を「悪」のイメージで遠ざけるだけで

はなく、立ち直るために、社会に適応した、非行少年や犯罪者ではない友人や家族が必要だと訴える。

そして背景にある貧困を社会全体で無くす方向に向かうべきだと。やはり寛容さが必要なのだと改め

て感じた。


   2円で刑務所、5億で執行猶予   浜井浩一           光文社新書
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