あるメーカーの着圧ソックスを履いての身体の変化です。
いきなり今回のブログから読まれる方もいらっしゃると思うので、どうしてこのような変化が起こったのかを簡単に説明させていただきます。
足首の状態で腹圧(≒腹筋力)が変化するという身体の仕組みがあり、固定力のある着圧ソックスを履くことで、足首が安定し、腹筋が正しく使えるように。腹筋が機能することで腹筋力がつき、胴の部分(ハラ)が安定。ハラが安定することで肩に余分な力が入らなくなり、肩こりがとれるというものです。
このお客様はその変化が顕著に現れています。
まず横向きの重心の変化を観察してみて下さい。
次に肩の位置の変化です。
肩が下がり、骨盤の位置が変わり、だんだんと腹筋が上手に使えてきているのがお分かりでしょうか。
正面からの写真を見ると肩の左右の高さが均等になり、イカリ肩が自然にスッと下りたような感じになっていて、首もすっきりしてきています。
そして何より、胴が細くなっています
この結果からわかることは、肩コリがあって、一生懸命肩だけをほぐしてもあまり意味がない、ということです。
血流をよくしたければ話しは別ですが、根本から肩コリの原因を取り除くためにはハラの安定性が重要であり、ハラを安定させるためには足首を正しく機能させる必要があるということがわかります。
また、ぷよぷよのお腹をどうにかしたければ、筋トレをやるのではなく、まず足首の状態を見直すことが原因解決につながります。
サッカーの長友選手の動きを見るとハラがとても安定していることがわかります。
他にも高校野球や長距離マラソンなどをテレビで観察していると、ハラの安定している選手はフォームがとてもキレイで最後まで崩れない…、そしてブレない…、足の運びもきれい◎
安定感がある、美しい、ということはただそれだけではなく、高機能の裏返しなのですね
きっと。
では足首が正しく機能している、していなって、どんな状態?
と思われる方も多いと思いますので、ひとつの目安として外股・内股があります。
あとは足首を回した時にゆるいか硬いか。これは自分でやるよりも第3者に確認してもらったほうが分かりやすいと思います。
だいたい外股の方は足首が硬くなっていて、内股の方はゆるゆるになっていることが多いです。
これはあくまで傾向で、例外もけっこうあります。
硬くなりすぎ、そしてゆるゆるとした足首は正しく機能していない可能性があります。
皆さんの足はどうですか?
捻挫の経験のある方や足指の形が崩れている方も正しく機能していない可能性大です。
足首はどうしても盲点になりやすいので、肩コリ・首コリのひどい方、腰痛持ちの方、お腹に贅肉がたっぷりの方、運動能力がなかなか上がらない方は今一度足首の状態をチェックしてみて下さい。
ここまででちょっと意味がわからない方、もう少し掘り下げたい方は過去の以下の記事を参考にしてみて下さいね。
●着圧ソックスのメカニズム 前編
●整いました!
●正しい歩き方 Part 2 「ロッカー機能」
●正しい歩き方 Part 2 「回内回外運動」
●正しい歩き方 Part 2 「アウェアネス」
この着圧ソックスを履くにあたり注意していただきたいのは、ただ履いて終わり、というものではなく、履いたらできるだけ歩いていただくこと、簡単なストレッチをやっていただかなければなりません。
ですが、歩くといっても日常生活の範囲内でも十分で、ストレッチも10分あれば多いくらいというレベルのものです。
上のお客様は通勤は車ですが、社内をちょこちょことよく歩き、物を運びます。ストレッチも毎日やっていたわけでなく、あくまで負担にならない範囲です。最初は出来るだけ続けていただきましたが
介護や子育て、主婦、お仕事を同時進行でされているような方には時間もお金も限られています。
独身者の多い都会とは違って地方にはこのような方が多いです。
本当に大変だな、と思います。
そのような方々のために私なりに考えてみた方法です。
理論をちょこっと理解していただいて、あとは実践。
では解剖学的に着圧ソックスのメカニズムをみていきますね。
正しい歩き方 Part 2 「ロッカー機能」のところで登場した「距骨(距骨)」。
この骨の働きを知ることが理解の第一歩につながります。
この「距骨」という骨は簡単に言ってしまえば、つま先を上げたり下げたり、左右にひねったり(回外・回内)と、足首の動きを自由にさせている骨です。
この骨の特徴は
唯一筋肉が付着していないということです。
筋肉が付着していないということは筋肉の影響を受けない、つまり、筋肉を動かしても動かない骨ということになります。
だからこそ筋肉の影響を受ける周囲にある骨達(脛骨・腓骨・踵骨・舟状骨)の間を転がりながらこれらの骨が円滑に動けるように働いています。
いろいろな方向から見た距骨 「アウェアネス介助論 上巻」澤口祐二著
上の図の下二つの図を見ていただくとわかるのですが、距骨は脛骨と腓骨で作られるソケットの中にあり、足先を下げる時(底屈)には前に滑って転がり、足先を上げる時(屈曲)には後ろに滑って転がるようになっています。
これを以前にも説明したロッカー機能といいます。
「アウェアネス介助論 上巻」澤口祐二著
そしてこの距骨の構造は下図のように上から見ると(脛骨との接する関節面)、前側が広く(太く)、後ろ側が狭く(細く)なっています。
「アウェアネス介助論 上巻」澤口祐二著
ということは…
前側の太い部分が脛骨と腓骨で作られるソケットの中に入った時は距骨はしっかりと固定され、後ろ側の細い部分がソケットの中に入った時はスペースができるので前後左右に動きやすくなります。
つまりソケットの中を滑って転がれるようになります。
これを足首の動きに当てはめると
足先を下げた時(底屈)= 距骨は前に滑って転がる = 距骨の後ろ側の狭い(細い)部分が脛骨と腓骨のソケットの中に入る = 上下左右に動きやすくなる
足先を上げた時(背屈)= 距骨は後ろに滑って転がる = 距骨の前側の広い(太い)部分が脛骨と腓骨のソケットの中に入る = 足首がしっかりと固定され、グラグラしない。
ということになります…
これは見方を変えると
上下左右に動きやすくなるということは… 固定されていない分、(足首が)ゆるい・グラグラ・不安定
しっかりと固定されてグラグラしないということは… (足首が)動きが悪い、固まっている
ということになります。
ヒール靴をイメージしてみて下さい。
ヒールはつま先立ちをしている状態ですよね。つまりずっと底屈位のまま。
ということはヒールを履いている時は距骨のはまりがゆるく、足首がグラグラした状態で足を使っていることになります。
そして、足元が不安定の状態で姿勢を保持しなければならないため、筋肉を酷使し、実は身体にとってはとても高度な技術を要するものなのです。高い身体能力が問われます。
筋力がある人ならまだしも、筋力があまりない方、筋力が衰えてきている方が履き続けたら身体に何が起こるか想像してみて下さい。
足首の不安定を肩首で補えばいずれひどい肩コリ、首コリ、頭痛に襲われるでしょう。
足首の不安定をふくらはぎで補えば、ふくらはぎの筋肉が異様に発達し、脚がつりやすくなったり、凝ってむくみやすくなったり、しまいにはこけて捻挫しちゃったり…
モデルさんがあれだけ高いヒールを履きこなすことができるのは、筋肉がちゃんとしているからです。
小さい頃から運動をしっかりやってきて身体づくりができているか、陰で見えない努力をしているかです。
とはいえ、足首がグラグラの状態で使い続けていれば、必ず足首自体にも代償がおきてきます。
たぶん靭帯がゆるゆるになります。
いずれ慢性捻挫のように。
これを過労学的損傷といいます。
特に骨折や捻挫等、ケガをしていないにも関わらず、突然疲労骨折を起こしたり、靭帯が損傷したり… 蓄積による骨格の過労により引き起こされるケガのことです。
前者が急性のケガであれば、後者は慢性のケガです。
建物に震動を与え続けるとヒビが入ったり、きしみ・ゆるみができますよね。
それと一緒です。
足首が捻挫状態に陥り、ある日突然ばっき~ん、ぷち~ん、ということが起こり得ます。
そこまでいかなくても、足元の不安定を身体が補おうとするので特に女性はそれを首で補いますから、女性に自律神経失調症が多いのもそのせいと考えられます。
自律神経失調症になった時にはたいがいの方は「自分て、鬱?」と思われるかもしれません。
そしてヒーリングの世界に走ってしまう方も。
いえいえ、まずヒールをやめて、ちゃんとした骨格をつくりましょう
というのが今の私の考えです。
ですが、この底屈位による足首グラグラの状態はもとは身体にとっては必要な条件なのです。
そこを勘違いしてはいけません。
歩行時、カカトから地面につき、最後に指先に重心が移った時、つま先立ちになりますよね。
グラグラということは別の見方をすれば柔軟に動けるという裏返しなのです。
5本の指に体重がのる時なので、指と連動して足首が絶妙な体勢のコントロールをしているのかもしれません。
ですから「底屈位がキープされることによる足首グラグラのまま」がよくないのです。
ヒールはまさにその状態。
ヒールを履くことを見直してみて下さい。
私もお客様にはギックリ腰やめまいのひどい方など、症状が強く出ている方には、その時だけでもヒールを履くのを止めて下さいとお伝えしています。
女性ならやはりヒールを履きたいので、ヒールを履くなら腹筋を鍛えて下さい、とも。
腹筋が安定すると頚への影響がかなり軽減されるからです。
では腹筋を安定させるためには… 足首を正しい状態にすること、つまりこの着圧ソックスの出番なのです。
そして、このヒールを履いた状態+重心が内側(回内足)で歩き続けたら…?
もっと最悪なことが起こります。
回内位だと足の骨の結束が弱くなり、腹筋に力が入らなくなる、と前回のブログでお伝えしました。
足の骨がゆるゆるの状態で足首の骨のはまりもグラグラ、ということは足首~足の靭帯のゆるみはさらに助長され、慢性捻挫の進行を早め、腹筋が機能しないぶん身体の負担が増え、いろいろな症状が誘発されるでしょう。
足首が異様にゆるい方や足全体が異様にやわらかい方は「そこまで来てしまった足」と考えられます。
つまり過回内足↓
X脚がその典型です。
腹筋に力が入らないので、X脚の方、太っている方が多いですよね。
中には太らない方もいらっしゃいますが、身体にかなりの不調を抱えていると思います。
両足なっている方もいれば、片足の方もいます。
靴のすり減り方でチェックできます。
この対処法として、一般的には中敷きのインソールを使い、足の内側を高くして重心を均等にしようとしますが、ゆるゆるになってしまった足首を補強する概念が抜けています。
靴の中敷きに敷くインソールは、靴をはかなければその間過回内足のままですし、過回内足の問題は足首を動かす筋肉にもアプローチしていかないとあまり効果は期待できないのではないかと思います。
私のサロンのお客様でも何万も払ってこのようなインソールを使われていた方が何人かいらっしゃいましたが「正直よくわからない… 高いし、いいようだから使っている。」と言うだけで、「劇的によくなった」という言葉は聞きません。
ゆるくなった足首にはただ足裏に土台をひいて重心を整えるだけで改善するとは考えにくく、ゆるくなった足首を「固定」しながら筋力アップを図る必要があると考えます。
これはガチガチの固定ではなく、ある程度の固定、筋肉が自由度を失わないくらいの固定です。
その状態で歩きながら筋力をつけていけば、いずれ足首のゆるみは改善されていくのではないかと思います。
だからこそこの着圧ソックスなのです。
履いてみるとわかるのですが、締めつけられているぶん固定感がありますが、制限なく歩けます。
そしてポイントはしっかりとふくらはぎ全体まで固定していることです。
足首の動きは距骨とそれを囲む脛骨・腓骨・踵の骨なので、足首だけを覆うタイプのサポーターでは長さが足りず、足首の関節の起点となるスネの骨(脛骨・腓骨)までしっかり覆うことが足首のブレを小さくするポイントなのではないかと考えます。
足首捻挫用のサポーターは足首だけしか覆わないものがほとんどなので、たぶんこれでは効果半減。
捻挫した人にもこの着圧ソックスは効くかもしれません(笑)
ここまでは足首がゆるむ原因をヒールのケースでみてきましたが他にもあると思うのです。
●かかと重心
重心がかかとに集中するとかかとを支点にして足を左右にねじって歩いてしまう(ねじり歩行)→ねじりの動きうけ続けた靭帯は過労状態となり、結果として足首がゆるくなってしまう。
重心がかかとにきてしまうのは、指先に体重がのっていないためです。
不安定なスリッパや靴を履き、脱げないようにと指先を上げて歩いてしまう(ロック歩行)ことや、先細の靴のため、指が固められていたり、靴そのものが硬いために指先に体重がなりきらないまま歩いてしまうことが原因として考えられます(
フォアフットロッカー足が機能していない)
そうなっている方は指のつけ根にタコができていたり、おさえるとそこにひりひりとした痛みを感じるのではないでしょうか(赤マルの部分)。
(C)Ashiura Balance Laboratory
●筋肉バランス
筋肉に硬いところとやわらかいところがあると、硬いところを支点にしてやわらかいところが過剰運動状態となり、動きが大きくなりすぎることでその部分の靭帯がゆるむ。
これは自分の施術における経験上の推測なのですが、図の部分が異様に硬い方がけっこう多いのです。
ですので黒マルを支点にして足首の可動域が大きくなり、過剰なねじれが発生して靭帯が過労状態となる。
その結果として足首がゆるくなってしまう。
「ボディ・ナビゲーション」Andrew Beil著
黒マルに入る筋肉は前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋、長腓骨筋です。
これらは足を反らす筋肉なのです。
ではなぜこの部分が硬くなっている方が多いかというと、上図の指上げ歩きが原因だと思います。
つまり習慣的なものです。
こう考えると足首がゆるくなってしまう原因は履物とその環境による影響が大きいということがわかります。
改善策は足指を下げて使うことを意識し、できるだけ家の中では素足や5本指ソックスで歩いて足指を鍛えていく必要があります。
あるいは笠原式足裏テーピングがおすすめです。
ここまでは解剖学的に足首がゆるんでしまう原因と、ゆるんだ足首に対してなぜ着圧ソックスが効いたのかということをみてきました。
では次に足首がガチガチに固まってしまった方のケースを考えていきます。
足首がガチガチの方はイコールふくらはぎやスネの筋肉がガチガチになっています。
これらの筋肉は膝あたりから足の甲や裏にのびているので、凝って伸縮性がなくなると、足首の関節をロックしてしまうのです。
これらの筋肉が硬くなる原因は様々ですが、単に使いすぎ、そして誤った足の使い方も十分に考えられます。
スネが硬くなっている方は指上げ足で重心が極端にかかとに集中していると思います。
スネ側・ふくらはぎ全体が硬い方は足指か腿の筋力が弱っていて、それをふくらはぎが補っている可能性があります。
だから異様に太くなる
では足首ガチガチの原因が骨にあった場合、今までの復習になりますが…
足首が外側重心、つまり回外足であった場合は骨の結束が強くなるので、外側重心のままで足を使い続けると足首が固まってきます。
さらにその代償として、外側重心から外股が強くなると腹筋に力が入りにくくなる…。
回外・回内足だけでなく、外股・内股もまた腹筋力(腹圧)に関与し、ヒトによって適切な足の角度というものがあるということが実験からわかってきました。
外股のおじさんって妊婦さんのようにお腹がでていますよね。
つまりハラに力が入らない→筋力低下、あるいは足首が正しく機能しないことで免震力が落ち、足元からの震動をハラでうけることにより脂肪が蓄積。そういうことです。
これはあくまで傾向ですが、回外足の方は外股に、回内足の方は内股になりやすいと思います(例外も多々あります)。
詳しくは次回に回します。
外側重心の方がなぜ外股をさらに外股にしてしまうのか… これは実際に外側重心で歩いてみるとわかります。
おしりの筋肉を極端に使っているのがわかりますか?
ちょうどお尻のえくぼの部分です。
この筋肉は
梨状筋(股関節外旋筋群の一つ)といって、股関節を外側に開くように働きます。
この筋肉が硬くなるとお尻側が縮まるので、ひっぱられた股関節が外側に開いてしまい、あまりにも硬くなりすぎると坐骨神経痛のような痛みがでます(梨状筋症候群)。
ですから坐骨神経痛のような症状がでた場合、梨状筋だけにとらわれず、梨状筋が硬くなる原因、つまり足の使い方を見直す必要があると思います。
つまり、いきすぎてしまった回外足=過回外足。
ですのでこの時にもおススメなのがこの着圧ソックス
外にかかりすぎる重心をスネの骨(脛骨・腓骨)から固定するので外側へのブレを軽減し、また硬くなった筋肉は圧迫するとゆるむ性質があるので、履いて歩けば筋肉のマッサージにもなりゆるんできます。
ただ過回外足や強い外またの方の場合、ストレッチを多めにやらないと過回内足の方よりは効果がでにくいと思います。
軽い回外・外股の方なら履いて少しのストレッチだけでも効果がありました。
写真のモデルの方がそうでした。
ということで着圧ソックスが身体に効いたメカニズムを理解していただけましたでしょうか?
簡単に整理すると ゆるんでしまった足首、ガチガチに固まってしまった足首には全て距骨が関係し、距骨・脛骨・腓骨が正しく機能できるようにサポートしてあげると、腹筋に力が入るようになり、やせる!ということです。
ちょっとはしょりすぎかな
でも足首がゆるんでしまう、ガチガチになってしまう原因がわかりましたよね。
それに対する対処法がこの着圧ソックスだったのです。
何度もお伝えしていますが、原因を明らかにしないと問題は解決しません。
そのうえでの次回の実践編です。
足元の環境を整えることが正しい身体づくりにつながります。
それを実感していただければうれしいです。
実践編、早めにアップしないといけませんね