ねこなんて大っ嫌い

ってずっと思ってたのに。
死にそうな子ねことの出会いが生きる力を与えてくれました。
バツ2でも結構幸せにやってます!

息子へ 第14話 (諦めないこと)

2020-02-23 05:55:55 | 「息子へ」
(画像お借りしました)

息子が結婚して家を出る時(今から12年前)に、私から息子へのはなむけの言葉として持たせた「息子へ」という一冊の小冊子。そこから抜粋した、今回は第14話(諦めないこと)をご紹介します。

少々長いので、どうかお時間のある時にご覧ください。


私は高校を卒業してすぐに就職した。
実は密かに
アナウンサーになりたいという夢があり 笑
(高校3年間放送部所属。高校野球甲子園の地区予選では
広島市民球場でウグイス嬢をやったりもした。
おまえは信じなかったけど本当だ。)
それで大学に進学したかったけど
その夢は叶わなかった。
だから
おまえが進んだ専門学校とやらのしくみが
どんなものなのか
私にとっては未知の世界だった。


数ヶ月に一度「コース変更」というのがあり、
おまえがいつも「税理士・会計士コース」を
選択していたことくらいは
私も知っていたよ。
だけど私にとっては、おまえが
楽しそうに勉強している姿を見るのが嬉しくて
それ以外のことは
余り深く考えていなかったというのが
本当のところだった。


周りのみんなが
そろそろ就職活動を始めようとした頃、
「オレ、税理士になりたい。
だから就活しない。
卒業したらバイトしながら
税理士免許とりたいと思ってる。」
おまえは鼻息荒くそう言ったよね。


・・・・・・・・・・・うぅ・・・うそ。
私が知らない間に
そんなことになってしまっていたのか。
生まれて初めての「本気の勉強」が
予想以上に旨くいって
いつの間にかおまえは
そんな大きな夢を持ってしまっていたのか。


おまえの決意に水を差したくはないが、
会計士や税理士免許は、
片手間に勉強して取れる資格ではないんだよ。
もちろん
専門学校を卒業して、
独学で資格をとる人も中にはいる。


しかし、
生活のためにアルバイトをしながら
片手間に勉強して
目指せるような簡単な資格じゃないんだよ、たぶん。


お世話になった若い税理士さんが言っていた。
「1日15時間以上勉強するんです。
それを丸2年やりました。
親の財力がなかったら、
僕なんか税理士免許は取れなかったですよ。
特別優秀な人は別として、
みんな殆どそんな感じでしたね。」



現実がそうだということを
私は人から見聞きして知っていた。
だけど
余りにも真剣で前向きなおまえに
その事を言ってやることが出来なかった。


自分に財力の無いことが
おまえの夢を阻んでいるという現実を
おまえに受け入れさせることが
嫌だったのかもしれない。


確かに勉強したからといって
誰もが取れる資格ではないだろう。


だけど
土俵に上がらせてやることさえできないことが
私はとても悔しかった。


15年前のあの時、
パパと別れていなければ
少なくとも今よりは
おまえを、おまえの望む道に
進ませてやれたかもしれない・・・。


いつもの私らしくも無く
そんな愚にもつかないことまで
考えてしまったよ。



何度も別れてくれと言ったパパが
どうしても首を縦に振らない私に
「わかった。オレは今も彼女のこと一番愛してるけど
おまえと夫婦、やってくよ。
世の中に愛情の無い夫婦なんてたくさんいるだろ。
子供にとってそんなに
実の両親が必要だって言うんなら
オレたちもそんな夫婦やればいいじゃないか。
そうしよう。それでいいだろ。」



パパとの別れを決意した、
あのパパの言葉を
また、思い出し
やっぱり愚にもつかないことじゃないかと
自分を笑った。



その内、仲の良い友達が
一人二人と就職を決めていったよね。

おまえが浮かない顔をし始めたのも
その頃だった。



「税理士免許、やっぱ、働きながら
取れる仕事に就けないかな・・・。
会計事務所や税理士事務所に
就職できたらいいんだけどな。
でもそういう所ってみんなが行きたがる割に
求人すごく少ないんだよね。
しかもオレ、就活かなり出遅れちゃったからさ。
こんなこと言ってももう遅いよね。
何でもっと早く、思いつかなかったんだろう・・・
何やってんだろうね、オレ。」



結局のところ
どうしておまえがあの時期になって
就職したいと言い出したのかは
未だにわからない。
生半可な勉強で取れる資格ではないと
おまえなりに理解したのか、
それとも単に
友達の進路が決まっていくのを見て
やはり
おまえなりに焦っただけだったのか。


「おまえ、本当に
税理士事務所か会計事務所に就職したいの?」


「うん、したいよ」


「そっか・・・。
なら、すればいいじゃん」
その日から私は都内近郊の
会計事務所・税理士事務所情報を
片っ端から調べ始めた。
インターネットという
この上ない便利なものを使わない手は無い。



「はい、これリストね。
明日から1件ずつ電話してみな」


「何で?だってこれって
求人広告出してる訳じゃないんだよね。
なのに何て電話すんの?」


「ばーか。だからおまえはバカなんだよ。
わざわざ求人広告出すほどではないけど、
まぁ、別に人を入れてもいいか・・・って
考えてる会社は
実は意外とたくさんあるんだよ。
一流企業は別として、
小さな会社なんて
現実はそういうものなんだ。
とにかく、騙されたと思って、電話してみな。
これぞ正に“ローラー作戦”よ」


「う・・・うん」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「今日は何件電話した?」


「えっと・・・、5件くらいかな。
でも、やっぱり全部ダメだったよ」


「はっ!?おまえ、何寝ぼけてんの?
締め切りの日、私が1日100件以上の電話
取ってるの知ってるだろ?
過呼吸で頭がぼーっとするくらいだよ。
明日はリストのここからここまで・・・50件くらいか?
何があっても必ず電話しろよ。
帰ったら結果報告聞くからな。全部メモしとけ。」


それからおまえは
毎日数十件の会計事務所に電話を掛け捲った。
そしてその内、
「履歴書を送ってください」という事務所を
いくつか拾い出した。


ところがこれが大難関。
小さい頃から
「字は綺麗に、丁寧に書くように。
大人になってから困るのはおまえなんだからね」と
口が酸っぱくなるほど言っていたのに
未だにおまえの字は
まるで頭の悪そ~な小学生並み。
果たして「履歴書」を見て
面接まで漕ぎ着けることが出来るのか・・・。
(正直言って私なら、間違いなく書類選考で落とします。
気の毒だとは思うけど。)



ローラー作戦を始めてから
どれくらい経った頃だろう。
珍しく仕事中に私の携帯電話が鳴った。



「あ、オレ。
面接、決まったよ。
ありがとう。あなたのお陰だよ。
絶対合格して見せるからね。
ホント、ホントにありがとう・・・」


「そっか。よかった。
面接決まればこっちのもんよ。
がんばれよ。」




面接当日。
流石の私も緊張したよ。



だけど結果は後日だよね。
気に入らなくったって
その場はニコニコ送り帰すもんだ。
おまえも体よく送り帰されてしまったのか。
面接から数時間後、
携帯電話が鳴った。




「就職、決まりました。
念願の会計事務所です。
オレ、頑張ります。
本当にありがとうございました。」



怒鳴られてばかりいたけど
よくがんばった。
中身はともかく
見た目は爽やか兄ちゃんで
ハキハキと元気のいいおまえのことだ。
うまくやったんだろう。



「・・・・・おめでとう。
ね?
なりたいと思ったら、なれただろ?
一番怖いのは、諦めること。ちゃんと覚えておけよ。
おまえなら絶対やれる。
頑張って働くんだよ。」
私からおまえへのお祝いは
TAKEO-KIKUCHIの
パリッとした
スーツだった。



ちょっと照れるけど、
あれはおまえに
とても似合っていたよ。




結局、会計事務所で10年間修行をさせて頂き、その後一般企業に転職した息子。夢だった税理士にはなれませんでしたが、その技能のお陰で、今は経理部の責任者として、毎日頑張っているようです。数字を追いかけて、帳尻を合わせる仕事は、やはり息子に合っていたようでした。


既投稿の記事を貼ってみました。宜しかったらご覧ください。
「息子へ」第1話 (偶然の幸運)
「息子へ」第2話 (ザルで水を汲む如し)
「息子へ」第3話 (たこ食った事件)
「息子へ」第4話 (目から鱗)
「息子へ」第5話 (父親みたいな人)
「息子へ」第6話 (忘れてはならないこと)
「息子へ」第7話 (思春期の困惑)
「息子へ」第9話 (高校生活)
「息子へ」第11話 (勉強の楽しさ)
「息子へ」第12話 (愚かな母)
「息子へ」第13話 (不思議なえにし)


第8話・第10話は割愛しております。
息子へ・・・残すところ、あと2話となりました。
2つのボタンをぽちっとして頂けると、と~っても嬉しゅうございます


  
ポチ、ありがとうございました~

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10 コメント

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Unknown (おかっぱ)
2020-02-23 07:23:19
おはようございます。
この章は、何度拝読しても、やっぱり泣ける。
私も、学びたい分野があっても大学に挑戦することさえ
許されなかったから、ほんと、熱くなります。
ままんの教えと援助は、財があるない関係なく、
もっとも有意義なものだと思うんです。
でも考えてみたら、そのアドバイスを実行できるか?
それは本人にかかってくるよね。
息子さんは、それをやってのけたんだもんね。
私だったらと考えると息子さんにも感服です。
そして、この期に及んで、私も何かに挑戦したいって
思えてくる。
何に挑戦するかは、まだ考えてないけども(そこ一番肝心やないかオレ)。
ままん、本当に素敵なお子さんを育てられましたね。
お姉ちゃんも息子君も、どこに出しても恥ずかしくない、
素晴らしい人だと思います。
あたしゃね、無責任な身勝手のあの野郎(無礼御免)にね、
ままんに成り代わって、自慢してやりたい!!
万が一それが叶っても、実態は人見知りが故、
俯いてもごもご言うだけだろうけども(あかんやろ)。
返信する
Unknown (まぐろ)
2020-02-23 13:26:28
10年 会計事務所にいても
税理士資格って 難しいんですね。
でも その10年で 学んだことは 多いはずだから。
今の職場で 活かせているんだから 無駄にはなってないですね。
返信する
Unknown (choco_d266)
2020-02-23 16:17:24
こんにちは~チロルママです♪

あの~息子さんの立場からの
感想みたいになっちゃうんですが
ポンままさんみたいなお母さん…
私が子供だったら絶対伸びる子供だと思います。
(↑自分で 伸びる子って 笑
それに歳かわらないのに親子設定って
失礼極まりない (>_<))

私の場合 「こう決めた!」って思い立った時に
同じ方向を向いていてくれる
大人が居ませんでした。
その時は何も思わなかったけど
子育てしてて感じてきた色々…

夫婦でも親子でも 同じ方向を向いて
考えてくれてたり・見守ってくれてたり・
時には声かけてくれたりと
そういうのって とても心強いと思うんです。

方法や考え方が違っても
遠い先の目標が同じ所を目指しているという
上手く言えないけど…
そういう気持ちに支えられたり
寄り添ってあげられる事ができなければ
家族・夫婦・親子も崩壊しちゃう気がします。

生まれ変わってポンままさんの子供になったら…
いや待って~私 喋りすぎて
しょっちゅう叱られてるかも(^o^;)
返信する
Unknown (ちゃしろん)
2020-02-23 16:49:57
息子さん、ご立派ですね。
それだけ頑張ったらその頑張りが絶対後で生きてきますよね。
そして頑張りが最大限に生かされるよう
導いてあげられるポンままさんのすごさ。
わたしもチロルママさんと同意見なんですけど。
同じような年なのにポンままさんみたいなお母さんだったらなぁ
と考えるのは失礼ですね(;´∀`)スミマセン。。。
そして息子には至らない母ですまぬと謝りたくなっちゃいました。
ご令息様、お母さんのありがたみをひしひし感じてること間違いないです。

それから、大変ありがとうございました。
<(_ _)><(_ _)><(_ _)>
先程メールをお送りさせていただきました。
返信する
Unknown (小春母)
2020-02-24 00:00:30
ポンままさんも息子さんも凄いな~。
本人のやる気がないと
お金があるからといって
何の意味もない事と思います。
何よりも息子さんの頑張りと
息子さんを信じる
ポンままさんの後押しがあってのこと。
「諦めないこと」
頭で解ってても心が折れそうになったり
実行することは難しかったり···
この「息子へ」を読むと
私も学ぶことが沢山あります(^.^)

返信する
おかっぱさん♪ (ポンまま)
2020-02-24 00:52:06
そうだったよねぇ。
おかっぱさんも、大学、諦めたんだよねぇ。
うちは九州だからさ、特に男尊女卑が酷くてね~。
女が高学歴なんて、以ての外、って感じで
話題にも上らなかった・・・っていうのが本当だった。
いや~でもね、色々考えちゃったよ。
離婚さえしなければ、もっともっと
やってあげられたのかなぁとかね。
でも今思えば、やっぱり貧乏だったからこそ
よかった、って思えることも沢山あった。
息子はね、素直なだけが取り柄、みたいな子だったから
私の言うことも、素直に聞いてくれたんだよね。
娘はそうはいかなかったけど(*≧艸≦)
うんうん、私もね、これからも
色んな事に挑戦したい!って思うんだよー。
え?還暦過ぎてんのに?って、言わな――い。爆
こらこら、何に挑戦するか、はよ決めなさい。笑
うんにゃ。あたしみたいな母親を持って
本当にウチの子たちは大変だったと思うし
あたしにしては上出来だったかもだけど
とてもどこに出しても恥ずかしくない・・・なんてことは
ありまへん(ToT)
うふふ。無責任な身勝手のあの野郎ね、
息子が結婚した直後、みんなで会ったんだけど
「こんなにいい子たちに育ててくれてありがとう。
オレは、この家族を捨てたことを、一生後悔する」って
言ってたからね。それでもう許す!!笑
だろうね~。おかっぱさん、もごもご言う所しか
想像できないもんね~(*≧艸≦)
でもその気持ちが、すんげぇ嬉しいダス。
本当に、ありがと。
返信する
まぐろさん♪ (ポンまま)
2020-02-24 00:56:46
仕事を始めてみたら、
覚えることも沢山あって、残業もありましたから
実際問題、勉強するような余裕はなさそうでしたよ。
それでもやる人はやるんでしょうけど
どうやらそこまでの根性は無かったようでした(^-^ )
そうですね~。決算までやれる経理の人材は
引く手あまたなので、就職先に困ることも無く
やはり会計事務所での経験が、
とても大きかったのではないかと思います。
返信する
チロルママさん♪ (ポンまま)
2020-02-24 01:13:05
あはは~!
そうですか~?伸びるのかなぁ、私の子育て。
かな~り偏った人間ですからねぇ、
子供たちは苦労したと思いますよー。
でも、親業に関しては、子供の頃から
両親を見て「私が親になったら、こういうことは
子供に絶対言わない」とかね
色々考える、可愛げのない子供でした、私。
子供心に、理想の親像みたいなのが
あったんですよね、ずっと。
チロルママさんも、そうでしたかー。
同じ方向を向いてくれる人、いてくれると良いですよね。
それ、すごく分かります。
息子の場合、さんすう1でしたからねー。爆
将来のこと、本当に真剣に考えて、求められたら
アドバイスしてやらなきゃ・・・って思ってました。
今はもう、何も口出しをする必要がありませんので
凄く楽になりました。
元々はね、きっと冷たい人間なんだと思うんですよ。
親子と言えども、余り接触したくないっていうか
そういうところがあるんです。人嫌い?
自分でも欠落してんなーって時々思います。
だからこんな私を母に持ったら
ホント、たーーーいへんっ!(ё_ё)
きっとね、ママさんの予想通り
「しゃべりすぎ!!」ってめっちゃ怒ると思う~(*≧艸≦)
あ、うちの息子はね、
「お前、その話にオチはあるんだろうね?」って
いつも私に言われて、ビクついてましたよ。チーーン!笑
返信する
ちゃしろんさん♪ (ポンまま)
2020-02-24 01:24:59
いえいえ~。全然立派だなんてことはありませんよー。
彼はホントに素直なだけが取り柄の子だったので
言われたことをそのまま、真面目にやっただけですよ。
いや~何でしょ。
やっぱりね、さんすう1だった小学1年生の
あの衝撃が忘れられなくて
そんな風に生んでしまったのは私ですしね。
将来のことは、求められたらアドバイスしなきゃ
って、ずっと思ってました。
あはは~!いえいえそんなことは決して!
でも前々回の話もご覧くださったでしょ?
あたし、あーゆー人間です。
とても母として相応しいと言えるような
人間ではありません。
息子が今、私のことをどう思ってくれているかは
正直、どちらでもいいんですよね。
これ、多分究極の我儘だと思いますけど
自分がやりたいこと、出来ることを
精一杯やれたかどうか・・・だけが気になります。
その点では、後悔はない・・・かな。
こういうところが、私が母親に向かない
一番の特徴かもしれませんね~(ToT)
いえいえ、こちらこそ~。ご丁寧に
ありがとうございました(^-^ )
返信する
小春母さん♪ (ポンまま)
2020-02-24 01:34:58
いや~、そんな風に言って頂くと
身が縮む思いです~。
まぁそうですよね。確かにお金があっても
本人にやる気がなければ、何も始まりませんよね。
専門学校時代に、勉強の楽しさを
知ってくれただけで、私は結構満足してたんです。
でも、いざ就職という段になって
彼に意見を求められて、当然経験値が高い訳ですから
色んな事、知ってるでしょ?
それを教えた・・・っていうだけなんですよね。
でも自分に都合の悪いことは
言ってあげられなかったしf(^^;)
「諦めないこと」は、私、大人になってから
尊敬する先輩に教えて貰ったことなんですよ。
そうですか~。小春母さん、この話を読んでくださって
学ぶことがある・・・って思ってくださいましたかー。
それはとても嬉しいことです。
いくつになっても、素直な心は
人を成長させてくれるものですよね。
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