石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

防衛省の概算要求アプローチをどう見るか ー 禁じ手?それとも英断?

2010-08-14 22:18:32 | 活動レポート
今日の朝日新聞の記事『削れぬ思いやり予算もあえて政策コンテストに 防衛省』を読んで、「やはりそう来たか~」と思った方はなかなかの政策通です。一方、何で防衛省はそんなことするんだろうと思った方、ちょっと一緒にポイントを考えてみましょう。

先日からお知らせしている通り、平成23年度予算に向けた概算要求の基本フレームは、歳出の大枠を71兆円、国債発行の上限を44兆円とし、社会保障費とその自然増分の合計27.5兆円などを除いた上で、各省庁の概算要求枠を前年比で1割減で算出して、その1割削減分については各省庁がそれぞれ「元気な日本復活特別枠」に要望を出すことができるというものです。各省庁からの要望に対して、約1~2兆円の規模の特別枠をどう配分するかについては、「政策コンテスト(この名称の評判はあまり良くないようですが・・・)」でオープンな形で決定されることになります。

さて、各省庁が今、最も悩んでいるのが、(1)1割削減で何をどう削るか、(2)特別枠に何を要望するか、ということなのです。

まず、1割削減については、「予算項目のすべてで一律1割ずつ削れば簡単だ」と考えそうなものですが、これでは以前の自民党時代のシーリングと全く同じ予算編成になってしまいます。今回の予算編成の基本姿勢は、国民生活第一の政治の実現や、新成長戦略の推進をめざして「予算配分を省庁を超えて大胆に組み替えること」。それが、フタを開けてみたら前年度予算の1割減での焼き直しだった、などということになっては全く意味がないわけです。その意味では、まず各省庁で、(a)もはや役目を終えた事業を打ち切る、(b)不急の事業を凍結するか大胆に予算削減することで、(c)必要・緊急の事業に積極的に予算配分する、ことが求められている訳ですね。

そして、特別枠への要求については、マニフェストの実現や、新成長戦略の推進、強い雇用の創出に向けて必要な事業への新規もしくは増分の要望を出していく、というのが本筋になるでしょう。特別枠への要望は、それが必ず予算付けされるとは限らないわけです。つまり、リスクの高いギャンブルのようなもの。だからこそ、本当に必要な事業は概算要求枠の中で要求するのが筋で、この部分に「緊急性」の高いものや「絶対にはずせない予算」を出してくるのは、言わば禁じ手なのです。

ところが防衛省は、まさにその禁じ手を使ってきたわけです!

朝日新聞の記事にもある通り、防衛省が概算要求枠から一部削って、特別枠に要望することを決めた(a)在日米軍駐留経費負担(思いやり予算=2010年度は約1,900億円)、(b)艦船や航空機などを購入する際の契約で毎年の支払いが決まっている「歳出化経費」(同約1兆8,600億円)、(c)航空燃料などの「油購入費」(同約800億円)などは、いずれも「実際に削減するのは困難」と思われている「義務的経費」ばかりなのです。つまり、本来なら優先的に概算要求枠に残すべき予算項目を敢えてはずして特別枠に要望することで、総枠としての防衛省予算を前年度並みに確保することを狙ったわけです。政府としても、それははずせないと考えるでしょうからね。

単純に考えれば、これは明らかに禁じ手です。というか、今回の概算要求の基本フレームを敢えて無視した行動、と思われても仕方ないと思います。同じ事をすべての省庁がやったら、今回の組み替え基準など全く絵に描いた餅になってしまいますからね。ということで、これは防衛省がそうしたいと言っても、内閣が(財務省が)それを許さないという態度で臨まないと、予算編成全体がおかしなことになってしまうでしょう。

ただ、今回の基本フレームを逆手に取った(つもりの)防衛省のこのアプローチを、さらに政治主導でこちら側が逆手に取る、というのも一つのアプローチかも知れないと思ったりもしています。

どういうことかと言うと、防衛省は「予算が付くかどうか分からない」特別枠に上記の項目を出すわけですから、当然その「リスク」は理解しているはずです。客観的にみても、これらの項目は特別枠には馴染まないし、新成長戦略から判断しても重要事項ではないわけですから、予算付けをしない理由も十分にあります。だから、政治主導で、本当に切ってしまえばいいのです。その結果、国内的にも批判の多い「思いやり予算」が、この防衛省の英断(?)によって大幅に削減されて、その分、国民の生活のための予算に振り分けられるとしたら・・・皆さん、どうでしょう?

予算編成の基本方針を考えれば、防衛省にそういうアプローチは許さない、もし敢えて防衛省がそれを実行するならば、政治主導で切ってしまうことも厭わない ----- 国民のための予算をつくるんだという決意の下に、それだけの強い姿勢を示せるかどうかが今、政府与党に問われていると思います。

民主党政策調査会の厚生労働部門会議での論議模様

2010-08-14 01:19:33 | 活動レポート
木曜日の午後、民主党・政策調査会の第三回厚生労働部門会議が開催されたので、参加してきました。議題は、平成23年度予算の概算要求に関して、特に労働・雇用関連分野の項目に関わる検討です。

先週開催された第1回の厚生労働部門会議では、平成23年度予算の概算要求についての全体的な考え方(10%の削減や特別枠について)が提示されただけでしたが、今回は、平成22年度予算における厚生労働省関連予算の詳細な検討と、それに基づいて、平成23年度予算にどういうアプローチで臨むかという点について突っ込んだ議論を行いました。

特に、今日の議論のために厚生労働省から提出された資料がとても有効でしたね。これは、前日行われた第2回の会合で、参加した議員側から要請されたものが多かったようですが、自民党時代に作られた平成21年度予算と政権交代後に作られた平成22年度予算の比較、平成21年度予算の執行率の一覧、平成22年度予算の項目のうちどれが削減対象になるのか、など、これからの議論に必要な情報が提供されたことは評価されるべきです。

今日の議論の焦点は雇用・労働に関わる事項だったわけですが、私からは主に、下記の3点について質問・提案しました:

(1)第3のセーフティーネットとしての求職者支援策(失業給付の切れた失業者に、職業訓練を受けることを条件に生活給を支給する制度)に関して、ポイントはいかに職業訓練を受けた失業者の就職率と定着率を上げること(現在は約60%とのこと)。そのためには、職業訓練の途中からハローワークの担当者と連携して職を斡旋していくことも必要(これは山井政務官から教えてもらった)だが、そもそも職業訓練の内容(つまり労働者が身につけるスキル)を現実の労働市場のスキルニーズにマッチさせる努力と、さらには雇用そのものを積極的に創造していくことが必要。前者については、中央・地方で企業と連携することが欠かせないので、もしまだそういうスキームがないようであれば、そういう枠組みを作って欲しい。後者については、特に介護分野など、雇用が逼迫している分野を中心に、労働条件の改善を政策的に実現して、労働者が積極的に入って行きやすい条件を整備して欲しい。

(2)平成22年度予算の雇用・労働関連施策は、緊急雇用対策が中心で、どちらかと言えばこれまであった雇用を維持する(例えば雇用調整助成金など)施策が中心になっている。これを平成23年度予算でも続けるのか、もしくは大企業を中心とした企業業績の回復を踏まえて、今後は成長分野でのより積極的な雇用創出策に転換していくのか、大きな方針を示して欲しい。これまでのサプライ(供給)サイド中心の雇用政策(職業訓練など)から、より積極的に需要をつくり上げる(もしくはその需要をより魅力的にする)雇用政策(例えば、介護分野での待遇改善による雇用増など)に切り替えていく方が良いのではないか。

(3)その関連で、環境や情報通信(ICTS)などのこれからさらなる雇用創出が見込める分野では、概算要求段階から他省庁と連携することが重要ではないか。それによって、重複する部分の予算削減が可能だし、例えばICTSを積極的に活用した効率化による予算削減も可能なのではないか(この点、江端衆議院議員からも、他省庁と連携して特別枠に要求を出すべきとの意見が)。

これらの点に対する回答を政府側からいただいて、少しずつ今後の議論のポイントが見えてきたような気がしました。

次の会合は、概算要求の骨格が見えてきた段階だと思いますが、景気回復のためには「雇用が大事!」と主張した菅直人首相の言葉をしっかりと方向付けていくためにも、引き続き部門会議での議論に参加していくつもりです。