2ケ月かかって有吉佐和子著4作の小説を読み終わった。
「恍惚の人」
「針女(しんみょう」
「不信のとき」
「華岡青洲の妻」
内、2作は若い頃読んでいたのだが、細部はほとんど忘れてしまっており、改めて読み直してみた。
年譜では「恍惚の人」は1972年の出版。
認知症の老人とその介護を扱っているが、平成の現代社会と様相は同じでまったく古くないテーマだ。
「不信のとき」は緻密に計算されたプロットで文庫本(上・下)2冊、浮気をする愚かな男性の
心理描写は読んでいてグイグイ引き込まれてしまった。
「華岡青洲の妻」は医者、青洲が麻酔を「犬」「猫」に替わり、人体実験を最初に青洲の母親が申し出る。
青洲の妻も自分から先にやってくれと譲らす、争いになる。
表面的には仲が良い嫁、姑と誰もが思っていたが、実は息子を巡って日常生活にも
陰湿な戦いが繰り広げられていて、嫁・加恵の心の動きが手に取るように表現されている。
加恵は人体実験の結果、麻酔薬のせいで視力を失うが、廻りの人々に敬われ、その後は
幸せで穏やかな生活を送る。
医学の進歩の陰には努力と、名もない人たちによって支えられ多くのドラマがあることを知る。
有吉佐和子の作品はテレビドラマや映画、舞台など映像化されたものも多いが、
読書の醍醐味はやはり文字や行間から伝わってくる余韻ある文章を味わえることだ。
残念ながら53歳の若さで亡くなっているが、驚くほど多くの作品を残しており、やはり「才女」と
呼ばれるに相応しい作家であり、出来るだけ多く彼女の作品を読み進めたい。