神経科学者たちが明かす、「脳」の健康を維持するためにやるべき5つのこと
Life Insider より 230725 Erin Heger
定期的な運動や十分な睡眠など、脳の健康を維持する方法を神経科学者たちがInsiderに教えてくれた。
脳の健康維持は、アルツハイマー病といった神経変性疾患の発生を遅らせるためにも重要だ。
友達付き合いを続けることや、新しいものに挑戦することも脳の健康維持に役立つと神経科学者たちはアドバイスしている。
朝は携帯電話を使わない、ポジティブなことを考える、加工食品を避ける —— この3つを自分の脳を守るために心がけていると語った神経科学を学ぶ博士課程の学生エミリー・マクドナルドさんのTikTok動画が1000万回以上視聴され、話題になっている。
マクドナルドさんのアドバイスは悪くないと、2人の神経科学者はInsiderに語った。ただ、脳の健康を維持するためにできることはまだまだあるという。
ユタ大学の神経生物学の准教授ジェイソン・シェパード(Jason Shepherd)氏とノースウェスタン大学の神経科学の助教タリア・ラーナー(Talia Lerner)氏は、自分たちが脳の健康を維持するためにやっていることをInsiderに教えてくれた。
1. 睡眠を取る
良い睡眠衛生を実践し、毎晩6~8時間の睡眠を取ることは、脳の健康のためにできる最善策の1つだとシェパード氏はInsiderに語った。自身は毎晩約6~7時間は眠るように心がけているという。
睡眠は脳が新しい情報を処理し、記憶を形成し、新しい概念や考えを強化し、アルツハイマー病患者の脳にしばしば蓄積する「アミロイド斑」という有害なタンパク質の除去を助ける。
睡眠は脳の可塑性(新しい状況や経験に適応する脳の能力)を高めるのにも役立つ。そして、脳が新しい課題に適応できればできるほど、年齢を重ねても認知機能を向上、維持できることが研究で示唆されている。
2. 心拍数を上げる
シェパード氏は脳の健康を維持するために、毎日運動もしているという。定期的な運動は脳への血流を増加させ、丈夫な心臓は脳に十分な血液を送り込んで、脳の最適なパフォーマンスを維持するのに役立つからだ。
定期的に運動している人はアルツハイマー病の発症リスクが低いという研究結果もあり、運動は加齢による認知機能の低下を遅らせる可能性もある。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は週に150分の適度な運動を推奨しているが、どんな形であれ、できる時に体を動かす方が何もしないよりいいとシェパード氏は話している。
同氏の場合、1日に1~2回、犬の散歩を3~5キロほどして、週末にラグビーの試合の審判をすることが多いという。
3. 友人とランチに出かける
孤独はわたしたちのメンタルヘルス、精神的安定、脳の健康に害を及ぼす可能性があるため、他人とのつながりを維持することが大切だとラーナー氏は話している。
「一般的に、強力な社会的ネットワークを持つ人は長生きする傾向があります」とラーナー氏は言う。
「他者と時間をともに過ごすことは生活の感情的側面にとって良いことで、それは脳の健康にとっても良いことです」
社会的つながりが強いと、うつ病や不安症のリスクが下がり、困難にも対処しやすくなるとの研究結果もある。
ただ、他者とのつながりを維持するのは、特に年齢を重ねるにつれて難しくなるとラーナー氏は話している。同氏の場合、友人が各地に散らばっているため、ソーシャルメディアやメッセージアプリを使って連絡を取り合っているという。
また、ラーナー氏は地域の他の親たちに会う手段として、子どもの学校で定期的にボランティアをしている。
「子どもがいなくても、ボランティア活動はやりがいがありますし、自分のためになります」とラーナー氏は語った。
4. 新しいことに挑戦する
新しい人、場所、挑戦に自分をさらすことは、頭をシャープに保ち、脳の可塑性を高め、脳を強化することにつながるとシェパード氏は話している。
同氏もこれを行ったことのない場所を旅し、異文化を体験することで実践している。写真を撮ったり、クラシック音楽を聴くといった研究者や准教授としての仕事以外の趣味も楽しんでいるという。
ただ、新しいことに挑戦するためには必ずしも旅行にお金をかけたり、新しい趣味を始める必要はない。
やったことのない難しいクロスワードパズルに挑戦したり、知らない人となじむことを脳が学べる新しい環境に身を置くといったシンプルなことでもいい。
「ルーティンや習慣を身につけて、毎日ずっと同じことを繰り返している人は多いと思いますが、新しい何かを学習することは脳の可塑性を助けますし、自分の脳をさまざまな方法で使い続けることができれば、年齢を重ねても精神的に良い結果を得ることができるでしょう」とシェパード氏は話している。
5. バランスの良い、健康的な食事を取る
マクドナルドさんが自身のTikTok動画で指摘しているように、加工食品は認知機能の低下や認知症リスクの上昇に関係している。
パッケージ商品やフライドポテトといった高度に加工された食品は、わたしたちの全般的な健康に悪影響を及ぼしたり、糖尿病、高コレステロール、高血圧といった健康状態のリスクを高める恐れがあると多くの研究が示唆している。
こうした疾患はさまざまな臓器にさまざまな影響を与えるが、一般的に脳を含む身体全体に害を及ぼす可能性がある。
「例えば高血圧の人の場合、脳卒中や血管性認知症といった脳に関わる疾患のリスクが高まる可能性があります。高度に加工された食品が身体に悪い理由はたくさんあるんです」とラーナー氏は話している。
脳と身体の健康を維持するには、加工食品を制限し、果物、野菜、赤身肉、全粒穀物をバランス良く食べるよう努めることだ。
「わたしたちの脳は身体から完全に切り離されているわけではないので、身体に良いことは脳にも良いことなのです」とラーナー氏はアドバイスしている。