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時代に迎合? 阪急電鉄「有料座席車両」導入は本当に成功するのか   202208

2022-08-30 00:22:00 | 🚃 鉄道

時代に迎合? 阪急電鉄「有料座席車両」導入は本当に成功するのか
 Melkmal より 220830 岸田法眼(レイルウェイ・ライター)


⚫︎阪急電鉄では“別格”の京都本線
    阪急電鉄が京都本線等で運行している観光特急「京とれいん」
 阪急阪神ホールディングスは5月20日、「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン-2040年に向けて-」と中期経営計画の策定を発表した。
 これには2024年をメドに有料座席サービスの導入を盛り込んでおり、京都新聞などでは「阪急電鉄京都本線の導入」を有力視している。

 阪急電鉄は

・神戸本線大阪梅田~三宮間32.3km
・宝塚本線大阪梅田~宝塚間24.5km
・京都本線十三(じゅうそう)~京都河原町間45.3km(大阪梅田~十三間は宝塚本線の線路を走行。大阪梅田~十三~京都河原町間は計47.7km)

が主軸で、距離については京都本線が群を抜いている。

 加えて、京都本線の特急は特急料金不要ながら、専用車両が導入されている。
特に昭和時代は停車駅を十三、大宮、烏丸(からすま)に絞ったほか、2ドアのクロスシート車にして座席数を最大限確保した。当初、クロスシートはボックスシートだったが、1964(昭和39)年に登場した2800系から快適性が高い転換クロスシートに変わり、現在に至る。

 21世紀に入ると、停車駅が十三、淡路、茨木市、高槻市、長岡天神、桂(かつら)、烏丸に増加。車両も3ドア車ながら、京都本線特急の伝統を受け継ぐ9300系が務めている。

⚫︎関西でも有料座席サービスの導入が進む
   京阪電気鉄道の特急形車両「8000系エレガント・サルーン」
 阪急電鉄が有料座席サービスの導入を決めた背景として考えられるのは、

・着席サービスに対する意見、要望などが多く寄せられていたこと
・関西でも有料座席サービスの導入が相次いだこと

に刺激を受けたものと思われる。

 関西では、京阪電気鉄道が利用客の要望に応えるべく、8000系エレガント・サルーンの6号車を有料座席のプレミアムカー(指定席)に改造し、2017年8月20日のダイヤ改正より営業運転を開始。リクライニングシートによる快適性の向上のほか、コンセントつきにより携帯電話の充電が容易にできる。

 このほか、大型荷物置き場の設置、アテンダントによる暖かい“お・も・て・な・し”もあり、通勤時間帯は満席になるほどの好評を博す。料金も乗車距離によって400~500円(大人、子ども同額)と安い。

 2021年1月31日から2代目3000系コンフォート・サルーンにも拡大され、プレミアムカーは“待たずに乗れる”ようになった。併せてホームでもプレミアムカー券が購入できるようにするなど、買いやすい環境も整備した。

 JR西日本も2019年3月16日のダイヤ改正より、新快速の一部列車にて有料座席Aシートを9号車に連結した。当初は自由席制で、着席後、専任の車掌から降車駅を伝えたうえで乗車整理券500円(大人、子ども同額)を払う仕組みだった。
 2020年12月1日から12席に限り指定席化を開始し、指定席料金は840円、JR西日本インターネット予約のe5489で購入した人に限り600円に割り引く。当初は2021年2月28日までの期間限定だったが、3月以降も継続され、2022年3月12日のダイヤ改正から全席指定席化した。

⚫︎阪急電鉄の有料座席サービスが成功するには
「時代の流れに合わせた」ともいえる阪急電鉄の有料座席サービスの導入。現在も京都本線特急の需要が高いので、有料座席車の成功に期待が持てる。

 まず、日中は待たずに乗れる10分間隔で運転されている。大阪梅田駅の発車時刻も00分、10分、20分、30分、40分、50分とわかりやすい。

 次に大阪梅田~京都河原町間の大人運賃は400円(JR西日本の大阪~京都間は570円)と安いこともさることながら、大阪と京都の中心部をダイレクトで結ぶこと。
 京都本線と並行するJR西日本東海道本線の新快速は、最大12両編成による輸送力の確保(京都本線特急は8両編成)、最高速度130km/h(京都本線特急は115 km/h)で、快適性と速達性を両立しているが、京都で京都市営地下鉄烏丸線に乗り換えなければならず、手間(時間と交通費)がかかる。

 利便性がよい半面、先代特急車6300系の座席定員は440人(全体の定員は1180人)に対し、9300系の座席定員は368人(全体の定員は1020人)に減少しており、ほぼ全区間にわたり満席が続く。かといって、京阪電気鉄道やJR西日本のように、編成中の1両を有料座席車に置き換えるには無理がある。

 幸い、神戸本線、宝塚本線、京都本線とも、ラッシュ時の一部列車は、大阪梅田寄りに2両増結した10両編成で運転されている。京都本線の特急に有料座席車を導入する場合、9300系+有料座席車2両もしくは、9300系+自由席車1両+有料座席車1両を連結した終日10両編成化することで、ラッシュ時以外でも輸送力の増強が図れる。この手法なら、神戸本線の特急、宝塚本線の急行等でも有料座席サービスの導入が可能だ。

 ただ、阪急電鉄にはすでに“贅(ぜい)を尽くした車両”が存在する。6300系と7000系をジョイフルトレイン化改造した6両編成の「京とれいん」だ(7000系は「京とれいん 雅楽」と名乗る)。
 京都の情緒あふれる和を強調したインテリアデザインは、乗車券のみで利用できる。土休の大阪梅田~京都河原町間の快速特急(6300系列車は快速特急A)で運転され、大阪府内でも“京都の雰囲気”を味わえるのがウリだ。

 有料座席車を導入するには、「京とれいん」を超えるものでないと、利用客が納得しないはずだ。プレミアムカーやAシートに比べると、ハードルが高い。

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