石造美術紀行

石造美術の探訪記

伊賀の石仏拓本展に行ってきました

2013-09-26 00:12:32 | うんちく・小ネタ

伊賀の石仏拓本展に行ってきました
伊賀の石仏拓本展に行ってきました。
中ノ瀬磨崖仏、清岸寺阿弥陀石仏龕、新堂寺如来石仏、長隆寺阿弥陀石仏、新大仏寺石造須弥壇、日神石仏群、蓮福寺双仏石、蓮花寺十三仏、北山応安地蔵、寺田毘沙門寺文亀箱仏、射手神社裏山明応散蓮地蔵、咸天狗社磨崖鬼子母神…等々、01_3総高4m近い見上げるような磨崖仏から小さな箱仏まで、伊賀の石仏の代表選手ともいうべき有名どころをはじめ知る人ぞ知る隠れた名品も含め、市田進一氏が採拓された大小の貴重な拓本三十数点を間近に見ることが出来ました。
写真では伝わりにくい、実物を現場でしげしげと眺めても気づきにくい特長も、拓本になってはじめて見えてくることも少なくありません。02_5特に石仏は、造形が単純な石塔類に比べ、表情や雰囲気といった伝わりにくい特長があって、実測図でもそこはなかなか及ばない。拓本ならではの表現力というものに改めて感心させられました。さらに、会場では市田さんご本人から興味深いお話を直接うかがうこともできました。
会場は伊賀上野城の大天守閣一階で10月20日まで、おすすめです。
 伊賀上野城は、大和から転封された筒井高次が築き、筒井家改易の後、津藩領に組み込まれ、藤堂高虎が大幅に改築してほぼ現在の姿になったとされています。30mの高石垣は大阪城と1・2を争う高さを誇り、昭和の復興天守閣が威容を見せています。平地に囲まれた小高い台地を利用した平山城で、天守は早くに失われ再建されることはなかったようです。現在の復興天守は三層の所謂模擬天守で、五層の層塔型であったと推測される藤堂高虎築城当時の姿を正しく伝えるものではありませんが、白亜の城壁は「お城」の雰囲気を盛り上げるのに一役買っていることは確かです。また、松尾芭蕉の遺徳を偲び城跡の一角に建てられた「俳聖殿」は、屋根の曲線が独特の檜皮葺の重層建築で、日本建築史の泰斗、かの伊東忠太博士の設計になる建築です。なお、筒井氏の拠点が置かれる以前、この付近に平楽寺という中世寺院があったとも言われています。そのせいか城跡には石塔の残欠が散在し、小型の五輪塔や宝篋印塔の笠石などが集められている箇所もあります。中には室町時代の紀年銘も確認されているそうです。


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4 コメント

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「伊賀の石仏拓本展」を拝観しました。 (河合 哲雄)
2013-09-28 13:21:11
「伊賀の石仏拓本展」を拝観しました。
拓本展は、拓本のひとつひとつが立派な作品になっており、特に中之瀬磨崖仏の中尊が素晴らしく、交通量の多い国道そばの現地で、拓本を取ろうと考えた市田氏の冒険心や遊び心に敬意を表したいと思います。
また、竹や伊賀焼の花入れに、自宅で育てられた蓮(はす)を三茎蓮・四茎蓮の近江文様に模して活けたり、散蓮華を飾り展示の理解に役立たせる細やかな配慮がなされていました。
市田氏がご自分で発見された石造物や拓本取りの苦労話や自慢話が面白く、知識も豊富で、少年のような目で語られる氏に魅せられすっかりファンになりました。
現在展示は、拓本の高さの関係もあり展示場の関係で、今後、簡単に見れないと思いますので未見の方にはお勧めしたいと思います。
最後に昨年、氏が「伊賀の拓本集」というかなり豪華な本を300部刊行され、すべて寄贈されたとのことでした。これが「鉄道本」のように関心のある層が厚ければ、また違った展開になったと残念に思います。
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河合様 (猪野六郎)
2013-09-30 21:57:23
河合様
コメントを頂戴しありがとうございます。
市田さんは蓮(ハス、ロータスですね)についても造詣が深い方で、ご自宅にいっぱい蓮を育てておられ、自作の品種もあるそうです。仏像や石造物につきものと言って過言でない蓮華の荘厳も、実際の花や葉をよく観察することが大切で、そのことによって単なるデザインとしてだけでない違った見方や味わい方ができるとのお話でした。丹念に歩いておられるので、「近江式装飾文様」が伊賀に入っていることも教わりました。拓本の表具に吊り下げてあった車輪石や鍬形石の吊錘もご自作だそうで、イモガイやゴホウラ貝の実物を一緒に吊り下げておられるあたりは流石でした。
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ボクも先週行ってきました。市田さんには直々に説... (竹田)
2013-10-06 22:09:20
ボクも先週行ってきました。市田さんには直々に説明していただきました。
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 私もこの拓本展を拝見し、市田さんともだいぶお... (﨑本 友治)
2013-10-09 21:47:01
 私もこの拓本展を拝見し、市田さんともだいぶお話をさせてもらいました。
 深く彫り込んだ石仏や巨大な石仏を採拓されるときのご苦労話を伺い、また、手作りの諸作品についても教えていただき、ほとほと感心しました。
 そのときの印象で、60代前半の方かと思いましたが、なんと・・・・なんですね。すごくお若く見えました。何かに燃えるということはすばらしいことだと思いました。でも、脚立に乗ってのお仕事、くれぐれも安全に気をつけていただきたいと思っています。
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