灯台下暗し(ひとりごとです)
日頃から有益な情報をもらったり助言をしてくれる知人と話していて、そうそう、そうだよねぇって話しが合って首肯することがありました。いろいろな地域の石造物を見て歩いているとだんだんと理解されてくることとして、石造物には地域地域の特色が割合強く出るんだなぁということ。確かにそうです。例えば種別。宝塔の割合が多い近江、阿弥陀の石仏が多い京都、五輪塔や層塔が多い大和などというように地域性が比較的ハッキリ出ます。それから使用されている石材。流紋岩や溶結凝灰岩が多い地域、花崗岩が多い地域、たいていは地元産の石材を使うことが多いのですが、搬入品と思しきものが混ざったりする地域もあります。さらに格狭間や蓮華座などといった細部の意匠表現にしても地域によって違いが出ます。もちろん例外もあれば、同じ地域内にも濃淡があったり、微妙に傾向が異なることもあります。同じ地域であっても、経年変化というか、傾向や嗜好が変化しながら石造物の属性となって重層的に重なり合うように、現にそこに表れている。一事が万事でこの地域はこうだと一概に言えないところが奥深いところであり、また面白いところでもあるわけです。それから、こうした地域の特性というものは、その地域ばかり見ていると気付きにくいということ。そこにいたらあたり前過ぎて気付かない、つまり灯台下暗しというやつです。なるほどそのとおりだと思います。さらにこれは、それぞれの地域に残された石造物の種別、意匠表現、構造形式、石材などの個々の属性だけのことにとどまらず、石造物の有る無しという最も根源的な部分も含めていえることだと思います。中世に遡るであろう石塔の残欠や箱仏が集落内の辻やお堂の脇などいたるところにゴロゴロしているような地域では、案外に省みられることがない。それがいかにすごいことなのか正しく理解されていないように思います。逆にそのような古い石造物が稀な地域では、例え一残欠であっても価値が認められているというようなこともあります。まずはこういうことに気付くことが第一歩だと思います。それからさらに進んで、石造物の地域性を理解していくうえで、フィールドとする地域だけでなく、いろんな地域を見ておく必要があると思います。少なくとも自分の守備範囲と考えるフィールドに隣接する地域はなるべく見ておくと何らかの気付きがあると思います。地域外に通じる街道に峠があれば、峠の一方だけでなく両側を見ておくときっと面白いと思います。それから、さまざまな種別の石造物を作るのはどれも石工だということを考えるとき、石造物の種別にかかわらず、そこにある通有の特性というものを理解することが大切だというような趣旨のことを川勝政太郎博士は説かれています。だから、あまり扱う石造物の種別を限定し過ぎない幅広い視野を持つことが大事だと思います。これからも、こうしたことに気をつけて虚心坦懐に、時に渇いたクールな眼で、時に祖先の心に思いを致す余裕のある視点で石造物を見つめ直していければと改めて感じた次第です。
どうも最近ひとりごとが多いですね。すいませんです、ハイ。