「重要伝統的建造物群保存地区」とは、昭和50年の文化財保護法の改正によって伝統的建造物群の制度が発足し、城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになったものです。 市町村が都市計画または条例により「伝統的建造物群保存地区」を定め、文部科学大臣が市町村の申し出に基づき「選定」を行うこととされています。
奈良県には、五條市の「五條新町」・宇陀市の「松山地区」・橿原市の「今井町」の三か所が「重要伝統的建造物群保存地区」として選定されています。
前回は、五條市の「五條新町」と宇陀市の「松山地区」を紹介しました。
今回は、橿原市今井町の「重要伝統的建造物群保存地区」を紹介したいと思います。
明日香村から車で約25分位の所にある「今井町」は、現在も江戸時代そのままのたたずまいと情緒を残す町です。
江戸時代のまま残され、時代劇の撮影などにも使われる町並みは、世界的に貴重な財産であり、平成5年には「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を受けています。東西約600m、南北約310m、面積にして17.4haの地区内には、全建物数約1500棟弱のうち、約500棟の伝統的建造物があり、全国で最も多い地区となっています。
また、国の重要文化財が9件、県指定文化財が3件、市指定文化財が5件あります。地元の材料を使い、近隣の職人によって暮らす人に便利なように工夫された一軒一軒の家は、土地の風土や自然、歴史をはっきり反映しており、民家建築の貴重な財産でもあります。
これらの家々が並ぶ町の様子にも、商業が繁栄し、外部からの侵入者を拒絶、独立した自治都市を築いた歴史が表されているほか、町並み保存のための住民の努力と誇りも、そこかしこに漂っています。
歴史の重みを感じながらの「今井町」の歴史散策は、時間を遡ったような錯覚にとらわれる素敵な町並みです!