心身社会研究所 自然堂のブログ

からだ・こころ・社会をめぐる日々の雑感・随想

当事者が主体!? 当事者を主体!? 

2014-04-20 13:14:00 | 福祉・教育

「当事者」という言葉がずいぶん定着し、あちこちで使われるようになってきましたね。とくに、「ショウガイシャ」という言葉を使わずにすむ格好の便利な言葉として、人気急上昇中のようです。
 それとともに、「当事者主体」という言葉も、よく用いられるようになってきました。「当事者」だけでなく「当事者主体」です。ますますパワーアップする言葉ではありませんか。
 先日ある福祉系団体のところに出かけて行ったときも、「当事者主体」がすっかり話題の中心でした。なんでも、先方は「当事者主体」であることがモットーらしく、そのことをさかんに誇っておられるのです。たしかに誇らしいといえば誇らしいことです。

 「うちは何でもすべて、当事者主体でやっていますので・・・!」
 「ほお、そうなんですね。それは結構なことですね。」
 「ええ、そうなんです。これはうちの一番のウリなんですが、ひとつ他の団体にもうちのやり方を広めていければ、と最近では考えているんです!」
 「ああ、そうなんですねえ。他の団体はまだそういう感じじゃないんですか。」
 「残念ながらね。まだそれがこの辺りの現状です。だからうちのやり方を広めていくのは、地域の意識を底上げしていく上でも、意義深いんではないかと私どもは考えている次第なのです。ぜひ進めていきたい。」
 「なるほど。で、1つよくわからないので教えて頂きたいのですが、『当事者主体』という場合、その『当事者』というのは、『当事者主体』ということなんでしょうか? それとも『当事者主体』ということなんでしょうか?」
 「えっ!? な、何ですって? 『当事者主体』か『当事者主体』かですかあ? えっ、あの!! それはですねえ・・・それどういうことですかあ?」
 「いやだから、『当事者主体』か『当事者主体』かってことなんですけど・・・」
 「え、あー、そうですよね。今ひとつ意味がわかりかねますけど・・・そうですねえ、『当事者主体』か『当事者主体』か・・・う~ん、どうでしょう・・・そうですねえ、どうなんだろう・・・両方ですかねえ・・・」
 「両方!? ・・・両方って、当事者が当事者を主体にするってことですか?」
 「そういうことになりますかねえ」
 「当事者が当事者を主体にするっていうと、そのとき、援助者はどうなるんですか? こちらの援助者の方々は何をするわけですか?」
 「えっ? 何だか話がよくわからないんですけど・・・援助者は援助をします。はい。」
 「そうですよね。で、その援助っていうのは、どんなことをするんですか?」
 「いろんなことをしますよ、もちろん。必要と思われることは何でも。でも何をするのも、つねに『当事者主体』にやっているのです。これがうちのモットーです!」
 「ああ、『当事者主体』になんですね。『当事者主体』に、援助者がいろいろ何でもやるんですね。『当事者主体』で、それを援助するのが援助者というんではなくて。。。何をやるのか、決めるのは援助者なんですね。」
 「そうです。援助者当事者のために決めて、当事者のことを思って、『当事者主体』に何でもやるのです。これがうちのモットーです! 愛なしにはやれないことなんです!」
 「ああ、なるほど、なるほど。そういうことなんですねえ。よくわかりました。今日はいろいろ教えて下さって、どうもありがとうございました。」

もちろんこれは、実話です。団体を特定できないように、内容の一部を改変することもしておりません。なぜならこれは、特定するまでもなく、すでにあちこちに転がっている話だからです。


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