タンザニアのゴンベ・ストリーム国立公園の中心的な研究地域であるカサケラで生活するチンパンジーの群れは、食物が豊富な雨季になると、集団で採餌行動をとり、盛んにグルーミングをし合います。一方、エサが少なくなる乾季になると、小集団か単独生活の時間が多くなり、多数との交流は少なくなります。
そこで米デューク大学の研究チームが、成体チンパンジー40頭を2000-08年にわたって追跡調査し、季節ごとに変化するチンパンジーの食生活や活動パターンと、個々のチンパンジーから採取された腸内細菌叢のDNAとの関連性を調べてみたところ――
毎年食べ物が豊富な雨季には、チンパンジーの腸内細菌の種類(多様性)は、乾季と比べて20~25%ほど増えていました。チンパンジーの主食となるフルーツ、昆虫、葉などの食物が多様になるためでもありましょう。しかし、そのように食物だけからみるのでは、季節ごとの腸内フローラの構成には一貫性がなく、むしろ季節ごとに変容する他個体との交流が関与していることが明らかになってきたのです。
その際とくに興味深いのは、非血縁個体間の腸内フローラの構成が、親子のものと同じほど似通っていたことです。赤ん坊の腸内細菌なら、母から子へと垂直的に受け継がれますが、それだけでなくここでは、腸内細菌が次第に群れの他個体からも水平的に共有されることを示唆しています。雨季には、集団で採餌行動をすることが多いので、グルーミング、生殖行為、そして多数の排泄物に触れる機会などが増加するからとみられています。
<原著文献>
Moeller, A.H., Foerster, S., Wilson, M.L.,Pusey, A.E., Hahn, B.H. & Ochman, H., 2016 Social behavior shapes the chimpanzee pan-microbiome, in Science Advances, vol 2, issue 1,pp.1-6.