10月1日夜、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京大名誉教授が、記者会見で受賞の喜びを語ったなかで、
自身の研究に対する姿勢を問われた際、以下のように語りました。
「私自身はやはり自分に何か知りたいという好奇心があること、それからもう一つは簡単に信じないこと。よくマスコミの人は「『Nature』『Science』に出ているから」という話をされるが、「Nature」「Science」の9割は嘘で、10年経ったら残って1割だと言っているし、大体そうだと思っている。まず論文などに書いてあることを信じない。自分の目で確信できるまでやる。それが僕のサイエンスに対する基本的な姿勢だ。自分の頭で考えて納得できるまでやるということ。」
科学と科学主義のちがいを鮮明に語って下さいました。私自身も、今度出す本を、同じ姿勢で書いたつもりです。
もっとも、この発言がマスコミ各紙等でセンセーショナルに報道されていること自体、
査読付きで発表された科学論文の主張が、あたかも絶対的真理のごとくに受け取られ、流通してきている科学主義的な風潮を
雄弁に物語っていると言わざるを得ません。
マスコミとそれを妄信する少なくない人々、そして科学を語る知識人、さらには何と科学者自身すらもが、往々にしてそんな風潮にのみこまれています。
科学主義という、科学の名を冠したほとんど宗教的な風潮です。
科学的真理とは、つねにある条件の下での条件つきの真理であり、
異なる条件の下での批判にたえず開かれ、批判によってより高められていく、相対的な真理であることを忘れてはなりません。
実はそれ以前にもすでに、
Nature誌の2013年8月1日号に,「医学生物学論文の70%以上が再現できない!」という報告がなされていました[Wademan 2013]。
NatureやScienceといった一流雑誌に限らず、査読付きで発表された多くの医学生物学論文が、
実際に、その後他の研究によって再現されていないのです。
<文 献>
Wadman, M ., 2013 NIH mulls rules for validating key results, in Nature, vol.500(7460), pp. 14-16.