心身社会研究所 自然堂のブログ

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科学論文の9割はウソ⁉ ~科学と科学主義の別れ道~

2018-10-16 12:15:48 | 哲学・思想

10月1日夜、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京大名誉教授が、記者会見で受賞の喜びを語ったなかで、

自身の研究に対する姿勢を問われた際、以下のように語りました。

 

「私自身はやはり自分に何か知りたいという好奇心があること、それからもう一つは簡単に信じないこと。よくマスコミの人は「『Nature』『Science』に出ているから」という話をされるが、「Nature」「Science」の9割は嘘で、10年経ったら残って1割だと言っているし、大体そうだと思っている。まず論文などに書いてあることを信じない。自分の目で確信できるまでやる。それが僕のサイエンスに対する基本的な姿勢だ。自分の頭で考えて納得できるまでやるということ。」

 

科学と科学主義のちがいを鮮明に語って下さいました。私自身も、今度出す本を、同じ姿勢で書いたつもりです。

 

もっとも、この発言がマスコミ各紙等でセンセーショナルに報道されていること自体、

査読付きで発表された科学論文の主張が、あたかも絶対的真理のごとくに受け取られ、流通してきている科学主義的な風潮を

雄弁に物語っていると言わざるを得ません。

マスコミとそれを妄信する少なくない人々、そして科学を語る知識人、さらには何と科学者自身すらもが、往々にしてそんな風潮にのみこまれています。

科学主義という、科学の名を冠したほとんど宗教的な風潮です。

 

科学的真理とは、つねにある条件の下での条件つきの真理であり、

異なる条件の下での批判にたえず開かれ、批判によってより高められていく、相対的な真理であることを忘れてはなりません。

 

実はそれ以前にもすでに、

Nature誌の2013年8月1日号に,「医学生物学論文の70%以上が再現できない!」という報告がなされていました[Wademan 2013]。

NatureやScienceといった一流雑誌に限らず、査読付きで発表された多くの医学生物学論文が、

実際に、その後他の研究によって再現されていないのです。

 

 

<文 献>

Wadman, M ., 2013  NIH mulls rules for validating key results, in Nature, vol.500(7460), pp. 14-16.

 

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1 コメント

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マルテンサイト変態千年グローバル (鉄鋼材料エンジニア)
2024-11-02 16:30:28
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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