とたんに、雲の原の上に、ひょこりと白い百合の花が顔を出しました。ホミエルはそれを確かめると、いそいで百合のそばから飛びのきました。白い百合は一息の風に揺れると、どんどん丈を伸ばし、枝別れして、その枝はどんどん太く長くなり、二本が綱のように抱き合い互いに巻きつきながら、空に向かって太く大きく伸びてゆきました。やがてそこに、大きな白い百合のつるでできた、塔のように高い緑の木が現れました。天高く伸びた百合のつる木には、所々に伸びた薄緑色の枝に白い百合の花が咲き乱れ、その香りが辺りの空気を涼しく清めて、つややかな緑の葉はうれしそうに風にゆれて喜びをまきました。百合は何かの予感を感じて、きれいな銀の露をひとつほとりとホミエルの額に落としました。
ホミエルは百合のつるの大木を見あげて、満足の微笑みをすると、今度は歌の魔法をしました。澄んだ美しい声で一節の歌を歌うと、百合のつるにはいつかしら、糸のように細い銀の針金をレースのように編んでできた、銀の細い螺旋階段が巻きついていたのです。螺旋階段の欄干には、星や月や花の模様が、銀の針金でそれは細やかに美しく編みあげてありました。
ホミエルはうれしそうに笑うと、螺旋階段の前に立ち、神に丁寧にお辞儀をしてから、その螺旋階段を上ってゆきました。