さて、ホミエルの仕事はまだこれからでした。ホミエルは雲の原に戻ると、百合の木と銀の階段はそのままにしておいて、星を抱えながらもう一つの入り口をこしらえ、その入り口をくぐって飛んで行きました。するとそこには、暗い宇宙空間がありました。遠くに白く小さく太陽が見え、近くには、虎目石と蛋白石と赤や青の瑪瑙を混ぜ合わせて丸く磨いたような木星が、大きく見えました。ホミエルは、薄紅色の翼をはためかせ、一ふしの歌を口笛で歌いました。するとすぐに、目当ての星は見つかりました。それは、木星の軌道上を回る、人間はまだ誰も知らない、小さな氷の衛星でした。氷の衛星は、木星軌道上を回りながら、まるで胸が破れそうな悲しそうな声で、歌を歌っていました。ホミエルはそれを見て、眉を寄せ、思わず息を飲み、悲哀を癒す呪文を星に投げてやりました。星があまりにも苦しそうに、今にも割れそうな声で、痛い、痛い、痛い、と叫んでいたからです。
ホミエルは、悲哀する氷の星に近づくと、そっと星に何かをささやきました。そして、新しく連れてきた灰色の星と、その星を、さっと取り替えました。灰色の星は、木星の軌道に乗ったとたん、歌を歌い始め、くるくる回り始めました。悲哀の星は、ホミエルの手の中で、赤子のように震え、泣いていました。ホミエルは星を抱いてやさしく慰めました。