みすゞの詩に、こういうのがあります。
蓮と鶏
泥の中から
蓮が咲く。
それをするのは
蓮じゃない。
卵のなかから
鶏(とり)が出る。
それをするのは
鶏じゃない。
それに私は
気がついた。
それも私の
せいじゃない。
かわいらしい詩ですが、実はこれには間違いがふくまれています。蓮の花が泥から咲くのは、実際に蓮の花がやっています。鶏が卵から生まれるのは、ちょっと違いますが。蓮の花は、すべて自分で、自己活動をやっているのです。もちろん、「気づいた」のも、ほかのだれでもないみすゞ自身です。
みすゞはすばらしい感性の持ち主で、真実を見抜く目に優れていましたが、いかんせん、まだ若すぎました。だから、花などのもっと深い真実までは、わからなかったのです。
「星とたんぽぽ」などはすばらしいですが、中にはこんな間違いもあるので、気をつけてください。でもそれは、みすゞのせいではありません。彼女も、もっと長生きできていたら、もっと深いことに気づくことができたでしょう。それを邪魔したのは、女性を低く見る当時の社会です。大変愚かな過ちです。人類は絶対にそれを改めねばなりません。
それはそれとして、ここで言いたいのは、有名だからと言って、それがすべて正しいとは限らないということです。人間はまだ未熟な存在ですから、どんな人でも時々間違いをやります。ですから、人は、いろいろと勉強して、真実を見ぬく目を、自分でも育てていかなければなりません。でなければ、時々とんでもない道に迷ってしまいます。
だれかの言う通りにしていれば、楽に生きられるなんて考えちゃいけない。自分の勉強を怠らず、自分の頭で考え、こつこつと大事に自分の人生を生きていきましょう。そうすれば、あなたは、みすゞが生きることができなかった豊かな人生を生きることができるかもしれません。
最後に一つ。蓮の自己活動というのは、実にすばらしいんですよ。あなたがたもいつか真実を知ることができれば、それはそれは驚くことでしょう。