アルマン・ポワン
原題「マダム・ベルトロの素描」
これは詐欺である。すばらしく優雅な形に髪を結い、美女の容をしているが、目を見れば、こういう高い段階の暮らしができる霊魂ではないことがわかる。
この魂は、もっと下賤な世界に生まれるべき魂なのだ。そういう環境で忍耐や共同作業の基本的修行をせねばならない。しかしそれがいやなばかりに、霊的技術を弄して自分以外の人間になり、無理矢理よい家庭に生まれてきたものと思われる。
あからさまに他人を敵視しているような目だ。実質内面では嫉妬の炎を抑えることもせず、他人への憎悪を営々と育てているのであろう。どういう経歴の女性であるかは不明だが、周囲に害を及ぼさない人間ではあるまい。
こういうのを、妖淫という。馬鹿が高貴な身分に生まれてくると、よくこういうものになる。なんでも自分の願いが叶うと思い込み、あらゆる害を吹きだす、おそろしくいやな存在になるのである。
このような人格に神秘を感じてひっかかる男も多い。しかし引っかかると大変な目に合わされる。
存在自体が詐欺だという女性である。