アネリア・パブロバ
原題不明
オーストラリアの画家らしい。実に美しいというか、かわいらしいが風である。女流でもこういう表現をあきらかに前に出し、芸術家として活動した例は少ないだろう。
デフォルメされた個性的な天使の姿はまるで透き通るようだ。愛の夢を歌う歌が聞こえてきそうだ。
天使といえば、人間はこういう世界を想像するものだろうというものである。
20世紀の芸術は、美を破壊し分解することに労を尽くした。破壊してしまいたいほど、自分がつらかったからだ。だから醜いものや奇妙なものを描き続け、それが芸術だということにしてきたのである。
そこを突き抜けて、こういうものが出てきたというのがおもしろい。ただただ甘く美しい世界だ。だが人間はこのような絵に、甘露の水を見出すのである。
そして、美しさというものに飢えていた自分の心を見出すのだ。
シュルレアリスムやダダの芸術を見ながら、人間の心は実は傷付き続けていたのである。所詮人間は馬鹿な者なのだと、芸術が叫び続けていたからだ。
だがこの絵には、まだはるかに遠い声でありながら、もう人間は愛してもいいのだという、神の声が聞こえるのである。