Curious George シリーズの英語絵本電子書籍版を読み継いでいる。このタイトルの付け方は今までとは少し違う。この絵本は裏表紙に出版元などについての情報を記載している点も、従来の絵本の体裁とは異なる。意識的にスタイルを変えたのだろうか。
2008年のコピーライトで、HOUGHTON MIFFLIN HARCOURT PUBLISHING COMPANY が所有権者である。続く説明も従来とは異なる。この絵本では、
Curious George and related characters, created Margret and H.A.Rey,
are copyrighted. の一文が続く。
ジョージと関連キャラクターは、Margret and H.A.Rey が創作したということが著作権として明記されている。しかし、イラストについては、従来の表記法とは違う形になっている。表紙と本のイラストは、Mary O'Keefe Young の作画と明記され、H.A.Rey 風を継承してという従来の表記が変更されている。この点、著作権の移転並びに原作者たちが逝去して歳月が経ったことによる時代の変化を示すのだろうか。
この絵本の本文は、N.T.Raymond と Kelly Loughman の共著と記されている。
子供たち用の絵本を、英語学習のリハビリという視点で読んでいるので、大人の視点で著作権を眺めているところから、こんなことについ目が行く次第。
さて、絵本の内容に入ろう。この絵本、「ハロウィーン」をテーマにしていて、その日のジョージを描いていく。従来の絵本との違いは、その構成が7章立てになっている点である。
PUMPKIN PATCH / DECORATIONS / COSTUME FUN / A GAME OF BOO
TRICK OR TREAT / COSTUME PARTY / GOOD NIGHT,GEORGE
子供たちが、たぶん楽しみにしている「ハロウィーン」。その一日のプロセスがこの絵本で楽しみながら追体験できるという趣向のように感じた。
この絵本と手許の複数の辞書(a,bと略記)から学ぶことがけっこう多かった。
日本でのハロウィーンは、なぜかコスチュームを楽しむお祭りのような側面が大きくクローズアップされて、楽しまれているようだが、Halloween を辞書(a)で引くと、冒頭に
[All Hallow's Even(諸聖人の祝日の前夜)の短縮形語]と説明されている。さらに解説がある。「万聖節(All Saints' Day) の前夜祭;10月31日の夜;イングランドではあまり行われないが、米国では盛んで、魔女(witch)などの仮装やカボチャの中身をくりぬき、Jack-O'-lantern を作ったり、”Trick or treat”(お菓子をくれないといたずらするぞ)と言って子供たちは近所の家からお菓子をもらう」と。
この説明を読んで、先に語句を辞書で引いていた2つがカバーされていることを再認識した。Jack-O'-lantern と Trick or treat だ。後者は、上記の一つの章名にもなっている。
辞書(b)を引くと、同主旨の説明があり、さらに「英国では Guy Fawkers Night (11月5日)の方が盛ん」と記されている。私はガイ=フォークス祭(英国の火薬隠謀事件記念日;11月5日)というのを初めて知った。辞書(a)を引くと、相互補完されて一層理解が深まった。
patch という単語の意味は知っているつもりだったが、PUMPKIN PATCH を見て、何?
と冒頭からガツン。辞書を引くと、「(耕作した)一区画;ひと畑(の作物)」(a)という語義があった。「a patch of potatoes = potato patch じゃがいも畑」の文例が載っている。つまり、ここはカボチャ畑ということ。
PUMPKIN PATCH の章は、ハロウィーンで重要なカボチャを子供たちが採り入れる場面になっている。興味深い点に、ここは韻を踏んだ文で記されている。絵本を読む子供たちは、自然に韻を踏んだ文体に馴染んで行くのだろう。「ロンドン橋落ちた」の歌のように、韻文が身近なものになるきっかけが絵本にもあるのだ。冒頭の文は次の通り。
Pumpkins round
Cover ground.
Vines twirl.
Children whirl.
twirl と whirl という語を知らなかったので辞書をひけば、どちらもくるくる回るという意味だった。<丸いカボチャが畑(地面)にいっぱい。カボチャのつたはくるくると。子供たちもくるくる回る> 子供たちの楽しげな様子を描く。勿論、ジョージも子供たちと一緒にくるくる回る。韻を踏んだ文章を読むことがないので、この章の本文をけっこう楽しめる。
DECORATIONS では、カボチャの中身を刳り抜いて、上記した Jack-O'-lantern (カボチャちょうちん)を作る場面と、ジョージがドアに cobwebs(蜘蛛の巣)を張る絵が描かれている。Cobwebs over every door. Surely tricks and treats in store. の文とともに。cobweb という語もこの絵本で知った。in store も確認のために辞書を引いた。「準備して」(a) という意味である。
だけど、なぜ蜘蛛の巣なのか? 課題が残った。
COSTUME FUN では、ジョージがどんな仮装をしようかとアレコレ思案している楽しさを描く。その仮装には一案として黄色の帽子も含まれる。
ここでは gobble という語を学んだ。「がつがつ食う」(a) という意味のようだ。
Or he(=George) could be a monster / Who gobbles every treat. という文。
ここの treat は上記の Trick or treat に出てくる「お菓子」を意味する。
A GAME OF BOO は、ジョージが仮装して、BOO! ブーッと叫ぶ場面が描かれている。辞書によれば、boo は「(おどかし、軽蔑、不賛成などを表して)ブー」という意味。このハロウィーンでは、さしずめ、脅かしのブーのことだろう。
TRICK OR TREAT は、仮装した子供たちが近所の家の玄関口に訪れ、TRICK OR TREAT と問いかける場面が描かれる。ジョージは、お菓子を子供たちに配る役割で描かれている。
Trick or treat! Costumes galore. この文から始まる。galore という語も初めて知った。この語は名詞の後に置いて、沢山の、豊富なという意味を表すとか。両辞書が同じ文例を挙げている。Bargains galore! お買い得品山積み(a) 、お買い得品豊富(b) である。お菓子をくれないといたずらするぞ! 仮装(した子供たち)が一杯。というところか。
COSTUME PARTY は仮装した子供たちの楽しい場面。このページを見て、子供たちは自分がまとった仮装のことを思い出して楽しむことだろう。
ジョージはリンゴが浮かぶ大きな盥の中に入っていて、仮装した子供たちが盥を囲んでいる。その下に記された一文が、Let's bob for apples. この bob って何? 「[吊したり浮かべたりしたさくらんぼなどの果物を]口にくわえようとする」(a)ことだとか。この語の意味から運動会のパン食い競争を連想した。ここも一種のゲームなのだろう。
GOOD NIGHT,GEORGE はベッドで眠りにつくジョージを描く。Time for bed, George!
である。ここに次の文が記されている。
The goblins and princesses
Are now counting sheep.
The ghosts and the witches
Have all gone to sleep.
2つの文の主語は、ハロウィーンで仮装した子供たちを意味する。気づいたのは、
count sheep が使われていること。聞いたことがあるが、やはりそうか・・・という思い。 羊を数える。「眠れない時は羊の群を想像し、1匹、2匹,......と思い浮かべる」(a)
辞書(b)では、イディオム扱いで載せてある。「(柵を跳び越える)ヒツジの数を数える。<眠れない夜のまじない>」と。
これが絵本で使われているということは、眠れなければ羊を数えなさいというのは、子供たちが親から日常生活の中で自然と教えられるからなのだろう。
絵本って、学べることがいろいろあっておもしろい。リハビリ英語学習に役立っている。
ご一読ありがとうございます。
参照辞書
a:『新英和中辞典 第5版』 研究社 1986年
b:『ジーニアス英和辞典 第5版』 大修館書店 2015年
補遺
万聖節 :「コトバンク」
諸聖人の日 :ウィキペディア
ハロウィン-万聖節・万霊節の先駆け :「こよみの学校」
ハロウィン :ウィキペディア
ハロウィーンと蜘蛛の巣の関係はあるのか? :「Yojoの英語ソウル」
ガイ・フォークス・ナイト :ウィキペディア
ガイフォークス・デーとハリー・ポッター :「ポッターマニア」
ロンドン橋落ちた 歌詞の意味・和訳 :「世界の民謡・童謡」
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こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『Curious You On your way!』 ILLUSTRATED BY H. A. REY
HOUGHTON MIFFLIN COMPANY
「遊心逍遙記」に掲載した英語絵本シリーズの読後印象記一覧 最終版
2022年12月現在 20冊
2008年のコピーライトで、HOUGHTON MIFFLIN HARCOURT PUBLISHING COMPANY が所有権者である。続く説明も従来とは異なる。この絵本では、
Curious George and related characters, created Margret and H.A.Rey,
are copyrighted. の一文が続く。
ジョージと関連キャラクターは、Margret and H.A.Rey が創作したということが著作権として明記されている。しかし、イラストについては、従来の表記法とは違う形になっている。表紙と本のイラストは、Mary O'Keefe Young の作画と明記され、H.A.Rey 風を継承してという従来の表記が変更されている。この点、著作権の移転並びに原作者たちが逝去して歳月が経ったことによる時代の変化を示すのだろうか。
この絵本の本文は、N.T.Raymond と Kelly Loughman の共著と記されている。
子供たち用の絵本を、英語学習のリハビリという視点で読んでいるので、大人の視点で著作権を眺めているところから、こんなことについ目が行く次第。
さて、絵本の内容に入ろう。この絵本、「ハロウィーン」をテーマにしていて、その日のジョージを描いていく。従来の絵本との違いは、その構成が7章立てになっている点である。
PUMPKIN PATCH / DECORATIONS / COSTUME FUN / A GAME OF BOO
TRICK OR TREAT / COSTUME PARTY / GOOD NIGHT,GEORGE
子供たちが、たぶん楽しみにしている「ハロウィーン」。その一日のプロセスがこの絵本で楽しみながら追体験できるという趣向のように感じた。
この絵本と手許の複数の辞書(a,bと略記)から学ぶことがけっこう多かった。
日本でのハロウィーンは、なぜかコスチュームを楽しむお祭りのような側面が大きくクローズアップされて、楽しまれているようだが、Halloween を辞書(a)で引くと、冒頭に
[All Hallow's Even(諸聖人の祝日の前夜)の短縮形語]と説明されている。さらに解説がある。「万聖節(All Saints' Day) の前夜祭;10月31日の夜;イングランドではあまり行われないが、米国では盛んで、魔女(witch)などの仮装やカボチャの中身をくりぬき、Jack-O'-lantern を作ったり、”Trick or treat”(お菓子をくれないといたずらするぞ)と言って子供たちは近所の家からお菓子をもらう」と。
この説明を読んで、先に語句を辞書で引いていた2つがカバーされていることを再認識した。Jack-O'-lantern と Trick or treat だ。後者は、上記の一つの章名にもなっている。
辞書(b)を引くと、同主旨の説明があり、さらに「英国では Guy Fawkers Night (11月5日)の方が盛ん」と記されている。私はガイ=フォークス祭(英国の火薬隠謀事件記念日;11月5日)というのを初めて知った。辞書(a)を引くと、相互補完されて一層理解が深まった。
patch という単語の意味は知っているつもりだったが、PUMPKIN PATCH を見て、何?
と冒頭からガツン。辞書を引くと、「(耕作した)一区画;ひと畑(の作物)」(a)という語義があった。「a patch of potatoes = potato patch じゃがいも畑」の文例が載っている。つまり、ここはカボチャ畑ということ。
PUMPKIN PATCH の章は、ハロウィーンで重要なカボチャを子供たちが採り入れる場面になっている。興味深い点に、ここは韻を踏んだ文で記されている。絵本を読む子供たちは、自然に韻を踏んだ文体に馴染んで行くのだろう。「ロンドン橋落ちた」の歌のように、韻文が身近なものになるきっかけが絵本にもあるのだ。冒頭の文は次の通り。
Pumpkins round
Cover ground.
Vines twirl.
Children whirl.
twirl と whirl という語を知らなかったので辞書をひけば、どちらもくるくる回るという意味だった。<丸いカボチャが畑(地面)にいっぱい。カボチャのつたはくるくると。子供たちもくるくる回る> 子供たちの楽しげな様子を描く。勿論、ジョージも子供たちと一緒にくるくる回る。韻を踏んだ文章を読むことがないので、この章の本文をけっこう楽しめる。
DECORATIONS では、カボチャの中身を刳り抜いて、上記した Jack-O'-lantern (カボチャちょうちん)を作る場面と、ジョージがドアに cobwebs(蜘蛛の巣)を張る絵が描かれている。Cobwebs over every door. Surely tricks and treats in store. の文とともに。cobweb という語もこの絵本で知った。in store も確認のために辞書を引いた。「準備して」(a) という意味である。
だけど、なぜ蜘蛛の巣なのか? 課題が残った。
COSTUME FUN では、ジョージがどんな仮装をしようかとアレコレ思案している楽しさを描く。その仮装には一案として黄色の帽子も含まれる。
ここでは gobble という語を学んだ。「がつがつ食う」(a) という意味のようだ。
Or he(=George) could be a monster / Who gobbles every treat. という文。
ここの treat は上記の Trick or treat に出てくる「お菓子」を意味する。
A GAME OF BOO は、ジョージが仮装して、BOO! ブーッと叫ぶ場面が描かれている。辞書によれば、boo は「(おどかし、軽蔑、不賛成などを表して)ブー」という意味。このハロウィーンでは、さしずめ、脅かしのブーのことだろう。
TRICK OR TREAT は、仮装した子供たちが近所の家の玄関口に訪れ、TRICK OR TREAT と問いかける場面が描かれる。ジョージは、お菓子を子供たちに配る役割で描かれている。
Trick or treat! Costumes galore. この文から始まる。galore という語も初めて知った。この語は名詞の後に置いて、沢山の、豊富なという意味を表すとか。両辞書が同じ文例を挙げている。Bargains galore! お買い得品山積み(a) 、お買い得品豊富(b) である。お菓子をくれないといたずらするぞ! 仮装(した子供たち)が一杯。というところか。
COSTUME PARTY は仮装した子供たちの楽しい場面。このページを見て、子供たちは自分がまとった仮装のことを思い出して楽しむことだろう。
ジョージはリンゴが浮かぶ大きな盥の中に入っていて、仮装した子供たちが盥を囲んでいる。その下に記された一文が、Let's bob for apples. この bob って何? 「[吊したり浮かべたりしたさくらんぼなどの果物を]口にくわえようとする」(a)ことだとか。この語の意味から運動会のパン食い競争を連想した。ここも一種のゲームなのだろう。
GOOD NIGHT,GEORGE はベッドで眠りにつくジョージを描く。Time for bed, George!
である。ここに次の文が記されている。
The goblins and princesses
Are now counting sheep.
The ghosts and the witches
Have all gone to sleep.
2つの文の主語は、ハロウィーンで仮装した子供たちを意味する。気づいたのは、
count sheep が使われていること。聞いたことがあるが、やはりそうか・・・という思い。 羊を数える。「眠れない時は羊の群を想像し、1匹、2匹,......と思い浮かべる」(a)
辞書(b)では、イディオム扱いで載せてある。「(柵を跳び越える)ヒツジの数を数える。<眠れない夜のまじない>」と。
これが絵本で使われているということは、眠れなければ羊を数えなさいというのは、子供たちが親から日常生活の中で自然と教えられるからなのだろう。
絵本って、学べることがいろいろあっておもしろい。リハビリ英語学習に役立っている。
ご一読ありがとうございます。
参照辞書
a:『新英和中辞典 第5版』 研究社 1986年
b:『ジーニアス英和辞典 第5版』 大修館書店 2015年
補遺
万聖節 :「コトバンク」
諸聖人の日 :ウィキペディア
ハロウィン-万聖節・万霊節の先駆け :「こよみの学校」
ハロウィン :ウィキペディア
ハロウィーンと蜘蛛の巣の関係はあるのか? :「Yojoの英語ソウル」
ガイ・フォークス・ナイト :ウィキペディア
ガイフォークス・デーとハリー・ポッター :「ポッターマニア」
ロンドン橋落ちた 歌詞の意味・和訳 :「世界の民謡・童謡」
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
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こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『Curious You On your way!』 ILLUSTRATED BY H. A. REY
HOUGHTON MIFFLIN COMPANY
「遊心逍遙記」に掲載した英語絵本シリーズの読後印象記一覧 最終版
2022年12月現在 20冊