「まえがき」より
よい入門書は「私たちが知らないこと」から出発して、「専門家が言いそうもないこと」を
拾い集めながら進むという不思議な行程をたどります。知性探求は 「私は何を知らないか」を
起点に開始されます。入門書は専門書よりも「根源的な問い」に出会う確率が高い。
知性がみずからに課すいちばん大切な仕事は、 「重要な問いの下にアンダーラインを
引くこと」なのです。
構造主義という思想がどれほど難解とはいえ、それを構築した思想家たちだって
「人間はどういうふうにものを考え、感じ、行動するのか」という問いに答えようとしていることに
変わりはありません。彼らがその卓越した知性を駆使して解明せんとしているのは、
他ならぬ「私たち凡人」の日々の営みの本質的なあり 方なのですから。