1980年代に活躍した作家森瑤子。
37歳でデビー、52歳で亡くなるまで100冊の本を世に出した。
おとなの女性の恋模様を、都会的なおしゃれな舞台設定で書き綴った。
私はほとんどの作品を読んでいる。
ご主人がイギリス人で、3人の御嬢さんがいた。
そのご主人は、日本に定住しても、最後まで日本語を覚えようとしなかったそうだ。
名声も、豪華な邸宅も、海外の別荘も筆一本で手に入れ52歳で逝ってしまった。
当時、ファンの一人として、生意気にも『この人は孤独だろうなー』と思った。
グラビアを飾る華やかな装いもコメントも、どこかちぐはぐに感じていた。
不器用な、シャイで、ひたむきな少女の面影が私には垣間見えた。
実際に死後、実の父と実の娘が「森瑤子」の実像をそれぞれ本にしている。
お嬢さんの本を読んだが痛ましかった、色々・・・。
「流行作家」の苦悩などと、ひと言では言えない日々が綴られていた。
もう20年以上前の話だが、私は益々、森瑤子ファンになった。
「小さな貝殻・母森瑤子と私」 新潮文庫
今日夕方、ラッセルスクエアで信号を待ちながら突然、森瑤子を思った。
1900年に作られた「ホテル・ラッセル」の厳かな建物の前だった。
確か、そのホテルも小説の舞台となっていた記憶が・・・、
森瑤子の名前を、若い世代は知らない、知らなくていい、
私は忘れない。