私の起業のきっかけは、娘の学校の同級生のお母さん達だ。
何の特技もなく、資格もない私は「何かできる人」がうらやましくて仕方がなかった。
例えば、手作りの洋服やバッグを子供に着せたり持たせたり、
役員の仕事で、パソコンの操作に秀でていたり、
デザイン性のある冊子づくりに個性を発揮したり、
「何々ちゃんのお母さん」以外の顔を知り、私は溜息まじりに言ったものだ。
「それ、仕事にしないの勿体ないわよ」
皆の答えはいつも決まって寂しいものだった。
「仕事なんてないわよ」
本当だろうか?洋裁学校やデザインの勉強を、時間とお金を使ってきたわけでしょ・・・、
何だか不思議な高揚感にとらわれた私は、
「それなら私が仕事作って見せるわ」と言ってしまった。
そそっかしく、危なっかしく、全く無防備な私だったが、
大好きな布とかかわることがうれしくて、次々試作を作り
「商品」作りに精を出した。
さて、その商品をどこで売るのかが大問題だった。
まともに物を売る仕事などした事の無い私は、出だしで立ち止る羽目に。
もう引き下がれなかった。門前払いを覚悟で鎌倉の小売店を回ることにした。
反応は悪かった。世の中はブランド志向、特にヨーロッパの伝統ある、
洗練された商品が席巻していた。
和を基調にした「鎌倉今村」の商品は見向きもされなかった。トホホのスタートでした。