出島の農具置き場に戻る壮多
主にヤンセンの用を務める内通詞。清十郎ら若い通詞に加えて、トリ、未章らとも親しい:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 が殺され、現場に残っていた柳屋の提灯から、殺害を疑われる伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉。
トリの友人、オランダ人を父に持つ青年:未章(みしょう)トラウデン都仁 の手配で、奉行所の手が及ばない出島の小屋に隠れていた。
オランダ商館の勝手方:ヤンセン - 村雨辰剛 の部屋に忍び込み、手掛かりを探してみたが 忠弥が抜け荷に関係していたということだけがヤンセンたちの会話から分かり、一緒にいた芸妓見習いの少女:トリ(都麗)久保田紗友 と別れて小屋に戻った壮多だが・・・。
中に入ると、何者かに襲われる。
揉み合っているうちに、それが森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平の私塾で一緒に英語を学んでいる通詞の見習生:大田清十郎(おおた せいじゅうろう)浅香航大 だと分かり、驚く壮多。
通詞部屋に用があるちゅうて入れてもろぉた。
てっきり疑われていると思っていた壮多だが、清十郎の
わいが忠弥ば殺すはずなか。
わいはあいつから聞きたかことばあった、そん口ば塞ぐわけなか。
という言葉に、驚く壮多。
ばってん、周りばそう思うちょらん。
みなわいば疑ごうとる、なんかおかしか。
俺を邪魔だと思ってる奴がいる。
それとは別に、忠弥さんの裏側を探られたくない連中がいる。
裏側・・・。
抜け荷の手引きをしていたんだ、忠弥さん。
なんば言いよっとかぁ~。(清十郎、壮多の胸ぐらを掴む。)
それを知られたくない誰かが、自分たちのしたことを俺に擦りつけて、できるだけ早くことを終わらせようとしている。
長崎奉行所
江戸から赴任している長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 が長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢から、出島に関わる殺人について下手人の目星がついたとの報告を受けている。後ろには、大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が控えている。
周田:恐れながら、お奉行様が気に掛ける程の一軒ではござらぬかと。
対馬守:亡くなった者は、出島の通詞と聞いておる。その者の身辺に、何か他に怪しきフシなどはない・・・
杉原:ございません。(杉原、言葉を遮る。)
対馬守は少々訝し気な顔をしていた。
奉行の部屋から離れ、周田の部屋で話す周田と杉原。
周田:解せぬ、お奉行は何故あの一件を気になさるのか。
杉原:なにせよ、伊嶋壮多が捕らえられ処罰されればカタはつきます。
周田:その男、まことに下手人なのであろうか。そなた達通詞たちは寄ってたかってそう言いたててはおるが・・・。
杉原:言いたてるなどと・・・。周田様こそ、何故この一件、深く触らず手早く落着なされようと?
周田:ま、そこはお互い触れぬということで。
どうやら、お互いが都合のいい結論を引っ張り合いしているようだった。
蘭語通詞会所
奉行所から足早に杉原が戻って来る。
栄之助、稽古通詞で杉原の息子:敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 が帰りを待っていた。
壮多がまだ見つかっていないことを、杉原に伝える栄之助。
奥の部屋へ進みながら、これでいっきに邪魔者の壮多が片付くと思っていたのに、もどかしいと言う杉原。
ばってん、伊嶋が下手人と決まったわけでは・・・。
あいつがやった。(それでいい。)そういうことばい。
そう言って杉原が障子を開けると、そこには大通詞で清十郎の父:大田崇善(おおた そうぜん)本田博太郎が杉原を待っていた。通詞の名門に生まれ、幼い頃からオランダ通詞会所に出入りしてきた男:野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 が崇善の相手をしていたのだ。
確かめたいことがあって、来た。
めずらしく声のトーンが低い崇善。
杉原:なんね。
大田:忠弥から聞いた話ばい。
杉原:忠弥から、いつ?
大田:亡くなる前、忠弥から訪ねて来よった。
杉原:わいを。
障子を叩く壮多。後ろには清十郎がいる。蘭語通詞会所に壮多がやって来たのだ。
驚く他の通詞。
伊嶋壮多です、ご無礼を。
驚く他の見習い通詞たちを清十郎が蹴散らすと、その騒ぎを聞きつけて
やぐらしか。(うるさい)と栄之助がやってくる。
そして、その後ろから崇善が現れる。
名乗れ
伊嶋壮多です。
何の用だ?
父のことを尋ねに、父の名は周吾です。
大通詞の杉原さまにお目にかかりたい。
やはりよか発音たいぃぃぃ~っ。帰るっ!(ぇ
杉原様にお尋ねになりたいことがあるのでは?
済んだ。おいが聴きたきことは、こん男が聴くっ!
通詞会所の所長部屋には、杉原の他に野田立之助と栄之助がいる。
その前に手をついてお辞儀をする壮多。
杉原たい、聞きたかこととは何ね。
長崎に来て父のことを探しました。
でも、誰もが父のことなど知らないと言う。
それは父が、周吾という通詞が何か禁を犯したからですか?
例えば、シーボルト先生を手伝うような。
そいは違う。
森山っ。
父上は優れた通詞やった。
容易く禁を犯すような人ではなか。
やはりご存じだったのですね、私の父を。
目を伏せる栄之助。
通詞の家業は世襲たい、周吾は家名に胡坐ばかいて精進もせん息子たちの面倒ば、よう見てくれて
森山やここにおる野田も、みな周吾には世話になった。
では・・・。
壮多は、長崎から姿を消した男:神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏の言葉を思い出していた。
お前の父親は通詞の仲間を売った。
禁を犯して、長崎の通詞たちをお上に注進した。
仲間を売り、そうして父は長崎から追放された。
何も言えない栄之助と野田。
そうと知ったらどがんすっと。
嘘です。
父が裏切り者なら、人はもっと私を罵る筈だ。
でも、誰も何も言わなかった。
この町は黙って、ただ私から父のことを隠し続けた。
何故です。
まだあるからだ、知られたくないことが・・・。
それまで薄笑いをしていた杉原の表情が厳しくなり、野田は沈黙が辛い顔をする。
俺はそれが知りたい。
そのとき、会所の通詞が奉行所に報告をし、町方が踏み込んできた。
同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介 が壮多を連れて、捕り方と一緒に会所から出て行く。
壮多っ!
先生はずっと、私を見張ってたんですね。
壮多は背を向けたまま、栄之助に話しかける。
違う、おいはそがんつもりで・・・。
だったら次はアンタが言ってくれ、今度こそ本当のことを。
その言葉を残して、壮多は連れていかれる。
他の咎人のいる牢に、一緒に入れられる壮多。
まことば話すべきです、隠せばアイツは益々暴こうとします。
何よりも、アイツに隠し事ばしたくなか。
ならんっ!
私事で言うとるやなか。
オランダとの交易は冷え込んどる。
そがんとき、我々長崎の通詞が江戸に隙ば見せる訳にはいかんばい。
そう言って、栄之助の肩を叩いて部屋を出て行く杉原。
森山、おいも森山も周吾さんには世話になった。
育ててもろうた。
あの時、栄之助の兄弟子だった少年は野田立之助だった。
おいは、これが道やと思うとった。
こん20年必死やった。
誰よりも立派な通詞にならんかいけん。
誰より学ばんばいけん。
シーボルト先生のことは、よぉ覚えとぉ。
強くはない酒をあおり、酒屋を後にする栄之助。
外では爆竹が鳴らされ、大人も子供もそれを眺めている。(お盆?)
野田:(シーボルト)先生の周りに大勢、学者やら通詞がおったことも・・・。
フラフラと歩く栄之助、男と肩がぶつかり倒れ込んだところをいいようにされて
転がされていた。
本日は、ここまで
己の言葉を捨てよ。という周吾の教えが、違う意味で栄之助にのしかかってきますね。
お酒に逃げてしまった栄之助。
このまま真実を壮多に伝えずにいられるのでしょうか。
それにしても、検索してもヒットし辛い長崎弁をぶつけてくるNHK。(今回はそこまでなかったけど)
朝ドラとか、方言指導が入っていてもそこはかとなく標準語寄りでしたよね。
どうしたんだ、NHK。
己の言葉(標準語)を捨てにきとるんかいっ!