夜更けに、長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢 が、供の侍を従えて戻ろうとしたところへ、出島の内通詞:忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 殺しの疑いが晴れた 伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉 が現れる。
昨夜まで牢に居た者です。伊嶋壮多と言います。
ほぉ~、主が。いやいや話は聞いておる。殺しの疑いが晴れて良かったのぉ。
是非一度会うてみたいと思っておったが、探す手間が省けた。
そう言って、周田が護衛の侍に合図を送る。
侍たちが壮多の両肩を抑え、地面に跪かせる。
俺はただ、父を探しにやってきただけです。
なのに長崎は父の死を俺に隠し、人殺しの罪を被せ、
それを晴らせば命まで奪おうとする。
若造、おまえ知っとぉや。
こん町におる侍は皆他所もんたい。
江戸・薩摩・佐賀・福岡んぁぁ、刀ばぶら下げとる他所もんに勝手ばさせんためには
じげもんはじげもんでな、戦道具ば握らんばならん。
戦道具?
交易の金(胸の前でお金の仕草をする周田)
異国の内情。
それを守る為に・・・。
ぉば陥れようとするもんはな、ぉがこの手で始末ばつくっ!
そう言って、押さえつけられた壮多に向かい、周田は刀を抜く。
すると、周田の後ろにいた侍たち・壮多を押さえつけていた侍たちを蹴散らして
神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 が現れた。
神頭さん?
そろそろかと思ってな、迎えに来たぜぇ。
上段から刀を振り下ろす周田を、軽く避けた神頭。
周田の後ろに回り込み、やすやすと取り上げた刀を周田の喉元に突き付ける。
ひぇっへっへっ!
俺は今、夢ば見とっとやろかっ。
お久しぶりでぇぇぇぇす。
ただん抜け荷ん差配だと思うちょったが、オマエ一体何者かっ!
そこへ同心:滝口修二郎(たきぐち しゅうじろう)平山祐介 が取り方を引き連れてやってきた。
遅か、遅かぞ。
早うこいつらば、ひっ捕らえんかっ!
ところが、滝口から出た言葉は違っていた。
周田様、どうかご神妙に。
周田は、自分が長崎奉行:井戸対馬守覚弘(いどつしまのかみさとひろ)石黒賢 に目をつけられ、滝口が自分を見張っていたことに気づく。
そこに居るのは神頭かぁ。
滝口は、周田の後ろにいた神頭を見つける。
神頭は周田の尻を蹴って捕り方たちの前に倒し、壮多・吉次(きちじ)サンディー海 と一緒に暗闇に駆け出して行った。
(もはや、お尻を蹴りだして逃げるの術が得意技。)
逃げ去る神頭たちに向かい、捕り方に抑えられた周田が叫んだ。
神頭、おまっ殺して行けぇ~っ!
暗闇に紛れ、沖に停泊する唐船に近づく
船上にいる見張りの目を盗んで、吉次と神頭が船に乗り込む。
あっという間に、刀を抜いた見張りを倒す二人。
それを縄梯子から見ていた壮多が、船に上がってくる。
長崎の町には半鐘の音が鳴り響き
柳屋でその音に不安を搔き立てられるトリ(都麗)久保田紗友 がいた。
戸の向こうで近付いてくる足音に、壮多が帰って来たかと思ったのだが
やってきたのは、女医のえま- 浦浜アリサ だった。
お産の帰りにそこで、浜ん向かう捕り方たちと行き会うて・・・。
捕り方が浜へ向かうことを知り、そこに壮多がいるかもしれないと思うトリ。
夜が明け、長崎奉行所では
対馬守の前に、オランダ語と英語の通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 と
大通詞で蘭語通詞会所の長:杉原尚蔵(すぎはら しょうぞう)矢島健一 が訪ねてきていた。
長崎奉行所の船掛:白井達之進(しらい たつのしん)宮川一朗太 が控えている。
沖の船から、神頭と名乗る男が
当地を立ち去ることと引き換えに、水と食べ物をよこせと言ってまいった。
神頭は、周田の抜け荷に加担せる者。
そのような勝手、無論呑む訳にはゆかぬ。
はっ。
交渉を申し出たところ、神頭は主(栄之助)を名指してきた。
何故神頭がそなたを名指すのかは、我らにも解らぬ。
名指ししたのは、神頭ではないかも知れませぬ。
謹んでそのお役、お引き受けいたします。
船の中を歩き回る壮多
板張りの部屋に書かれた、聖書の英文を見つける壮多。
In the beginning ・・・
In the beginning was the word
神頭が後ろからその言葉を読み上げる。
どういう意味ですか?
どういう意味だと思う。
簡素なベッドに転がる神頭。
ずぅ~っと考えてきた。
この船で何度も何度も口にしながら、ずぅ~っと。
(壮多に)海の上出んのは、初めてかい?
沖まで出るのは。
海はすげぇぞぉ~、思ってもみなかった自分が
腹の底から掘り出すときがある。(神頭起き上がる)
荒れた海に舳先が乗りあがると、天に船が突き刺さる。
危ねぇ、やられるっ。
でも怯えとは裏腹に(胸を叩く)ここは何度でも叫ぶんだぁ
よぉ~し来いっ、上等だぁ(ベッドの上で立ち上がり、両手でかかって来いの仕草をする。)
高く、もっと高く超えてやるっ。
嬉しそうな顔をする神頭に、壮多も微笑み
船に乗ってたんですね。
と言うが、徐々に神頭の表情が曇り始める。
昔のことだ。(ベッドの上に座り込む)
ある朝、船出して嵐に遭った。
何日も流された、でも生きたかった。
生きて帰りたかった。
神頭は、捕鯨船から日本にただ一人やってきて帰国まで長崎に置かれ、森山栄之助らに英語を教えたアメリカ人:ラナルド・マクドナルド(木村昴) や 漂着したアメリカ船ラゴダ号の、乗組員のひとり:カイ(カリマ剛ケアリイオカラニ) と同じ 漂流した日本人だったのだ。
辿り着いた異国の浜から、いくつも海を渡った。
寒かった・暑かった、鉄砲に怯え・病に臥し
ようやく、ようやく日本に連れてってくれるアメリカの商船に乗り込むことができた。
同じように異国に流れ着いた日本人も一緒だった。(日本が近づき光る海の向こうに陸地が見える。)
五年ぶりに島影が見えたときは、震えたねぇ。
皆でひとつひとつ指さしながら、知ってる景色の名前を言い合った。
あの岬、あの山、あの浜、向かってくる。
もうすぐあの港が俺たちを・・・。(神頭、梁からつるされた網を叩く。)
向けられたのは大砲(おおづつ)だった。
対馬守に願い出る栄之助
ただひとつ、お願いがございます。
白井が、栄之助に対して発言を控えるよう注意する。
だが、それを許す対馬守。
もし交渉が立ち行かず、万が一船が長崎に対し狼藉に及ぼうと致しましたら、容赦なく峻厳なご裁断をくだされませ。
その言葉に驚く対馬守だった。
故郷に大砲で追われた神頭
打つな、同じ国の人間が乗ってるんだ。
俺たちは日本のモンだ、俺たちを撃つなぁぁぁ。
姿を消す前、「信じるというのは、厄介なものだ。」と壮多に言った神頭。
「それが壊れたとき、自分(の信条)を根こそぎ持って行かれる。」
彼はこのとき、自分の生きて帰りたいという気持ちを、信じていた母国に砕かれてしまったのであった。
言葉を続ける栄之助
交渉とは、通詞にとっての「立ち合い」でございます。
これが成らねば通詞の名折れ、あまつさえ長崎はならず者に屈したと罵られ
誇りば失いましょう。
どうか、ご遠慮のう。
栄之助の覚悟に、自分の言葉を詰まらされる白井。
勝手なことを申すな。
そう言って、栄之助の言葉を押し留めようとするのが精いっぱいだ。
信じるものを奪われた神頭
砕かれた、全て。
あのとき。
悲しい顔をする壮多を見て
語りすぎた。
そう言って、話を止めるのだった。
いいえ、いいえ。
首を振る壮多。
栄之助の申し出に
杉原尚蔵までもが栄之助の意見に同調し、困った顔の白井。(←おまいう)
対馬守は、全てを栄之助に任せると許しを出した。
本日は、ここまで
じげもん、出ましたね。
地元のモノ(物・者)を表す言葉です。
そして、この第4話結構忙しいです。
えぇ、ワカメ干してて忙しかったんで(コラコラ
ちょっと自転車操業的になっております。
日付変わって、当日ですが間に合って良かったわ。