出島で働く内通詞の忠弥(ちゅうや)蟷螂襲 を殺した疑いをかけられ、牢に入れられた伊嶋壮多(いじま そうた)永瀬廉
牢の中で、オランダ語と英語の通詞:森山栄之助(もりやま えいのすけ)小池徹平 から、通詞だった父親の失踪の真実を聞かされた壮多は、「長崎が父を殺した」と絶望する。
栄之助が蘭語通詞会所に戻ると、謎の船が長崎港の沖に停泊しており至急来て欲しいと言われる。
船内にある板張りの部屋にびっしり書き込まれた英語を見て、驚く栄之助。
その頃、長崎から姿を消したはずの神頭有右生(こうず ゆうせい)髙嶋政宏 が壮多のいる牢の床板を外して姿を現し、壮多を驚かせる。
誰も居なかった船内で
はじめに・・・あった・・・”ことば”・・・
栄之助は、その壁に書かれた英語を読み上げていた。
壮多のいる牢では
神頭が血の付いた太い針のようなものを放り投げる。
ここに居たら殺されるぜぇ。
俺が?
口封じだ、おめぇは狙われてる。
それは、壮多が移される前に、牢に入って来た男が隠し持っていたものだったのだ。
その針にべっとりと付いた血に、壮多はぎょっとする。
来るかい?
神頭は、自分があけた床板から、壮多に逃げないかと声をかけてきた。
オープニング
夜の浜辺を歩く神頭と壮多。
小屋で神頭を待っていた男が、彼に頭を下げる。
お前っ。
うわぁはははっ、吉次。壮多がおめえに見覚えがあるってよ。
それは、逃げ出したカイ(カリマ剛ケアリイオカラニ)とすり替わって、アメリカ軍艦プレグル号に乗り込んだ筈の謎の男:吉次(きちじ)サンディー海だった。
お前、日本を出た筈じゃ・・・。
戻って来たんだよ、俺を迎えにな。
神頭が脱いだマントを、吉次が受け取る。
謎の船の中で
後からやって来た野田立之助(のだりゅうのすけ)浜田信也 杉原敬生(すぎはらけいしょう)重岡漠 たちが、栄之助のいる場所までやってくる。
野田さん、こいです。
栄之助が、板壁に書かれた英語を見せる。
何年か前に、マカオにおったという水夫に聞いたことがある。
聖書を和解しとる日本人が、かの地におったげな。
日本人?
浜辺の小屋で
小屋の中で、火にあたる神頭と壮多。
何故助けてくれたんです。
誘いに来たんだよ。
どうだい、長崎を出ねぇか?
(苦笑いをする壮多)
俺を置き去りにしましたよね。
それをきいて噴き出し、大笑いをする神頭。
違う違う、何言ってんだよ、あんときとは違う。
そう言って壮多の肩に腕を回し、彼をなだめる仕草をする神頭。
お前は、痛みを知った。
この町から裏切られ、行き場を失くしてる。
神頭はそう言って壮多の肩を叩くが、その顔は嬉しそうにしか見えない。
だが、壮多は冷ややかな目で神頭を見つめる。
俺の父は生きている、そうも言っていた。
すると、壮多の肩に回していた腕を戻し、両手を広げて┐(´д`)┌ヤレヤレ
そうポーズをとって見せる。
生きてただろ、この町じゃ。
認められない限り、誰も死んだことにはならない。
自分の言い訳に、妙に納得というか感心する神頭。
一緒に来ねぇか。このままここに居ては危ねぇ。
今度は本当に、仲間が欲しいようだ。
何をするんです、ここを出て。
あの針についた血のりを見たあとでは、喜ぶ気にもなれない。
小屋の引き戸を開け、海を眺める神頭。
海の上から、この国を揺らす。
ふっ、そんなこと・・・。
できるさ。
今この国の周りを、多くの異国の船が窺ってる。
連中が知りたがってることを、教えてやんだよ。
どうやって・・・。
おめえはもう知ってる筈だ。
吉次を見てればな。
小屋の中では、アメリカ軍艦に乗っていた筈の吉次が、今ここに居る。
吉次だけじゃねぇ、放たれた者どもが今この時もこの国の内情を探ってる。
いずれ日本も気づくだろぉ。
海から数多(あまた)の大砲(おおづつ)が、自らの国を狙ってるってことを・・・。
その言葉に驚愕する壮多。
この国を亡ぼすつもりですか。
いやいやいやいや、俺たちがやらなくったって、いずれそうなるさ。
来いよ、一緒に。
認めさせんだよ、自分たちがしてきたことをこの町の人間に。
でないと消されるぜ、オマエの父親のように・・・。
壮多の脳裏には、これまで父が死んでいたことを知っていたのに
その存在を消し、そのうえに暮らしを立てている長崎の通詞たちを思い出していた。
このままじゃいけない。
俺は、俺を消そうとする奴の顔をまだ知らない。
傷つけられたまま、ここを去るのは嫌です。
そう言って、神頭を見つめ返す壮多。
根負けしたのか、それとも呆れたのか
なるほど・・・。
そう言って、壮多の前に白い布で包んだものを投げ出した。
壮多が包みを広げると、そこには何か書面のような物があった。
この町が生き延びるため、周田(長崎で代々の長崎奉行に仕える家老:周田親政(すだ ちかまさ)武田鉄矢)は、抜け荷を決断した。
周田親政は、長崎奉行付きのご家老だ。
周田は忠弥を通じて、ヤンセン (オランダ商館の勝手方) 村雨辰剛 を引きずり込み、出島から運ばれた荷を俺や他の差配人に捌(さば)かせた。
流れ込んだ金で、江戸から赴任する奉行たちを巧みにあしらい、周田は長崎の利(り)を守り続けた。
長崎のすべては、周田の手に握られた。
これは・・・。
壮多が書面を広げてみると、そこには「売渡依頼之~」と書かれた書面に品名と日付、ヤンセンから忠弥を通じて神頭に荷捌きを依頼したことを表す内容が書かれていた。
抜け荷の・・・。
そいつがあれば、オマエの殺しの疑いは晴れる。
確かめて来な、好きなだけ。
ただ、その言い方は壮多を励ますというより
また何か壮多を試しているような、そんな口ぶりだった。
本日は、ここまで
野田立之助の「げな」は、現在でも使われています。
つか、オラ普通に家で使ってます。
「げな」というのは、伝え聞いたことを表します。
「らしいよ」という意味です。(断定していない状態)
長崎特有の方言という訳ではありません。