アサーティブ(assertive)という動詞は自己表現をするとか意見表明をするなどと訳され、教育心理学や、人間発達関係の専門書には良く登場する。アサーティブネスは名詞で、自己の考え方を大切にし、コミュニケーションの重要な技法とされている。アサーティブネスとは、人とのコミュニケーションでの類型を示すと、自分と他人との境界をどのように扱うかによって、4つに分けられる。攻撃的、受け身的、欺瞞的・作為的、それとアサーティブなコミュニケーションである。
では、アサーティブなコミュニケーションとは自分と相手との人権を尊重した上で、自分の意見や、気持ちをその場に適切な言い方で表現することである。自己の心の内にある考え方や見方を開示するが、他人に影響を及ぼさないようにすることともいえる。アサーションを訓練するプログラムも開発されているが、これは、自己主張に関する過誤を知り、攻撃的な自己主張や、不十分な自己主張を明らかにした上で、適切な自己主張(アサーション)について学ぶプログラムである。
今回ご紹介するのは、大学入試にこの手法を導入した大阪にある追手門学院大学である。2014年の入試から導入し、選抜型から育成型に転換することを目指している。大学入試改革の議論が進んでいることが背景にある。採り入れた入試の流れは、独自に開発したアサーティブプログラムを使って、ガイダンス→個別面接→基礎学力・議論する能力の向上プログラム→入試1次試験(グループディスカッション)→2次試験(個別面接・基礎学力適性検査)→プログラムによる入学前学習 である。これによって、知識記憶力試験一辺倒であった入試の形が変わる可能性を秘めている。
成果については今後の適用結果を見ることにしたいが、現在の大学入試に一石を投じることは確実である。中教審が昨年12月の答申で、高校・大学の接続の抜本的な改革を提起していて、既に当校のアサーティブ入試は文部科学省の大学教育再生加速プログラムに採択されている。
入試試験が全盛であった頃は、社会全体が競争社会であり、学校教育も過激な選抜が行われていたが、少子化社会となった今、大学の存続を始め、大学入試の在り方が問われ、入試の意味すら消えようとしている。学力不問の欧米型アドミッションオフィスであっても、ついていけない学生が多いといわれている。何のために大学へ行くのか等素朴な疑問も生まれている。大学の在り方が変わることはもちろんであるが、学校教育とは何であるのかの命題の解決が求められていることも確かなことである。
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