人は、考える葦である。天は自ら助けるものを助ける。

戦後の混乱から立ち上がり、文化的平和な国に成長した日本が、近頃反対の方向を向き始めた。偉人の言葉を考え直して見たい。

人は考える葦である 第6章  あれが安達太良山

2019-12-04 22:04:28 | 随筆
 「あれが安達太良山、あの光るのが阿武隈川」これは、高村光太郎氏が、心を病んだ妻千恵子と一緒に散歩した時に言った言葉とされる有名な一節です。この頃、この二つの福島の名所は、人々の心を癒し、豊かな資源を与えるよい財産だったと思われます。私も、亘理に季節毎のほっき飯、しゃこ飯、はらこ飯を食べに行くと阿武隈川の河口がある景色を海と共に眺めてきたものでした。

 その阿武隈川が、沢山の山々から雨水を集めて超大型台風19号による洪水や土砂崩れを各地にもたらしてしまいました。こんなにも多くの家々が浸水したり、急激な土砂崩れによって人の命を奪ったりしたことはあったでしょうか。被災された方々のコメントによると、時々浸水はあったけれど、こんなに急激な異変と損害は初めてだとおっしゃっています。やはり予報は出されていたものの、今までの経験で憶測していた方々は、逃げれる間もなく2階に避難されたりして命の危険もあったということです。

 新聞の報道を見ると、この規模の大きさは東日本震災の時と同じ今までと違う予想外の記録的な被害になったことがわかります。ここしばらくは、九州や山陰地方に大雨の被害が多く、東北は東日本大震災の記録的被害に、防災は主に地震、津波の備えに重点がおかれてきたように思います。この度の災害で、如何に治水が弱かったか、記録に忠実でなかったか、又堤防の耐水が不十分だったかに気付かされたのではないでしょうか。(ハザードマップが出来ていても、徹底しなかったようです)

 人の力は自然には敵いません。一見、便利や贅沢を満喫する良い時代にどっぷり浸かっているようで、肝心の自然災害に対処できる大切な部分が遅れていたのかも知れません。「水を制する者が国を制することができる」と昔から言われて来ました。地球の大きな変動に気付くことが遅れたとしか言えません。私たちはもっともっと自然の摂理に謙虚に当たるべきではないでしょうか。只、人知の及ばないことも考えられますし、科学者がいう人の環境破壊、地球温暖化などの影響も見逃せないことは明らかです。

 宮城県では、復興に840億円の予算を必要とすると発表しました。台風15号を含むすべての県の復興費はどのようになるでしょうか。今年は天皇の譲位を機会に膨大な費用が賄われましたが、天皇のおっしゃる国民に寄り添うということの実現のためには、被害を受けた方々に十分に予算をつぎ込むべきと思います。あろうことに、原発で移転を余儀なくされて新築した方が、再び被災されたという話を聞くと、復興には手抜きのない対処をお願いしたいと誰でもが考えるのではないでしょうか。

 東日本大震災で原発の大事故が起きた時は、無限の絶望感を感じ、被災された方々の果てないご苦労も思いやられました。そして最近多くなった自然災害。街は今まさにクリスマス景気に沸いています。これでもかこれでもかと思うほど電飾技術が進んでいます。しかし、被災された方が心からその景気にのることはできるでしょうか。光太郎氏がゆっくりと自然を愛でたように、誰でもがその安寧の日々が欲しい筈です。何年もかかる長期戦で復興をしなければならないのです。喫緊には、お正月を控えています。少しでも笑顔の多い新年を迎えられることを祈ります。

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