近頃は洋風の生活スタイルが一般的になり、ソファーを使うことが多くなりました。
座布団の出番は昔と比べるとかなり少なくなったと思いますが、私にとっては無くては不便を感じるものの一つです。
10枚揃った普段用の座布団の内、使用頻度の高かった2枚の座布団の側生地が擦り切れ、中の綿が現れ、もう処分の時かと思いましたが、40数年も前から共に過ごしてきたものを捨てるのに少し抵抗がありました。
中に詰まっている綿を見るとまだ使えそうなので、布団やさんで側生地を買ってきて作り直そうと思いました。
と思ったものの、近頃は布団やさんが次第に店を閉め少なくなっています。
心当たりがなく、ネットで同じ区内にある店を検索し、僅かに3軒あった内の1件を訪ねてみました。店構えから見て、昔からの古い店のようでした。
「いいものは無いけれど、あることはあります。この綿はまだ使えますよ」と、店主である高齢のお爺さんが言います。
「近頃は布団やさんがどんどんやめていってしまう」とも。
少ない在庫の側生地の中から、昔から伝統的な柄である、細かい麻の葉模様の生地を選び、生地を買って自分で作ろうと思っていたら、ついでに仕立て直してくださるとのこと。
捨てて新しいものを買うことは簡単ですが、貴重な木綿の綿をもう少し使いたいと思いました。
木綿の綿は化繊綿では得られない心地よさがあります。
40数年前にこれを揃えてくれた母の真心の籠った座布団を前にして、何だか一仕事、務めを終えたような気持ちになりました。