旬の札幌秋景色を優先し 前回は胃が破けたお話をして
自作紹介がすっかり遅くなりました。
私の場合 作品を完成させてしまうと 急にその作品への興味が薄れてしまう事もあって
自作を語るのもつい億劫になってしまいます。
常に関心があるのは 出来上がった絵ではなく 次に作る作品群の事ばかりなものですから。
とは言いながら 今回は久し振りに版画草子らしいお話をいたします。
まず最新作「羽衣伝説 天女2013」です。
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2013年制作 SIZE 540×443mm ED 70部 26色31刷 赤貝箔・虹彩箔使用
「羽衣伝説」はご存知の方も多いと思いますが
1200年前の 滋賀県長浜市の余呉湖を舞台した伝説が最も古いようです。
その話が日本各地に伝播して 最近話題の三保の松原にも似た様な物語が伝えられています。
ざぁっと解説しますと
「白鳥の化身の天女が 羽衣を脱いで水辺で水浴する様子を男が見ていて
あまりの美しさに羽衣を隠し 天に帰れず困っている天女を妻にしてしまう。
子までもうけた天女は しかしその後漸く羽衣を見つけて天に帰ってゆく」
(諸説・変形話が各地域に存在するようです)
言ってみれば 覗き見 下着ドロ 拉致・略奪結婚 というとんでもないお話なんですね。
現代ならば当然犯罪として扱われますが
昔話のおおらかさというか いい加減さというか
夢と憧れを身勝手に詰め込んだところが 私は気に入りました。
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版画の持つ大きな特質・魅力として「軽み」と云うのがあります。
荘厳なOPERAではなく 砕けた可笑しみや艶もあるOPERETTAの世界
あるいは 俳句に対する川柳表現 の様なものでしょうか。
今回の作品はこの軽みに重点を置いて制作してみました。
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羽衣を取られた天女は「ちっ」と舌打ちしながら
有頂天になっている男に 指鉄砲を向けていますが
その天女もあの羽衣では 天に帰れそうにない程 太ってしまっています。
思わずニヤッと笑って この絵を楽しんでいただければ 私の思惑は大成功です。
つづく
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